131:遺されたもの
本日もよろしくお願いします。
骨鳥の報告は、一日では終わらなかった。
二日。
三日。
そして四日目。
レオンはようやく解放された。
「疲れた……」
思わず漏れた本音だった。
ギルド本部の会議室。
何度も同じ説明をした気がする。
どこで発見したのか。
どんな行動を取ったのか。
どう戦ったのか。
骨鳥を見た第一印象は。
恐怖は感じたか。
異形化を見て何を思ったか。
なぜあの場面で強化対象をゼインへ変えたのか。
そして。
最後の変化について。
妖精鳥との繋がり。
魔力の流れ。
身体感覚。
覚えている限り全てを聞かれた。
エドガーも何度か同席していた。
質問の内容は細かかった。
だが、不思議と嫌な感じはしなかった。
何か手掛かりを探ろうとしている。
そんな印象だった。
⸻
「やっと終わったな」
会議室の外でゼインが肩を回す。
「終わったのは報告だけだ」
マークが苦笑した。
荷車へ視線を向ける。
そこには回収した遺品が並べられていた。
冒険者証。
武器。
装飾品。
防具の破片。
全て骨鳥が取り込んでいたものだ。
「次はこっちですね」
マークが言う。
ゼインも頷く。
「先に危険物の確認だな」
そして二人は同時に振り返った。
視線の先には。
「おや」
ヴァイスだった。
嫌な予感しかしない。
「その顔は失礼ですよォ」
⸻
結局、遺品は一度ヴァイスへ預けられる事になった。
異形化した組織。
呪い。
魔力汚染。
何が付着しているか分からない。
その確認が必要だった。
「安心してください」
ヴァイスは真顔で言った。
「ちゃんと目録を作成しましたからねェ」
「当たり前だろ」
ゼインが即座に返した。
「いやぁ、それが当たり前ではないんですよォ」
どこか遠い目だった。
誰も深く聞かなかった。
聞きたくなかった。
⸻
そこからさらに数日、レオンも遺品整理を手伝った。
名前の分かる冒険者証。
ギルド記録との照合。
持ち主の確認。
返却先の確認。
地味な作業だった。
だが、不思議と嫌ではない。
骨鳥との戦いは終わった。
これは、骨鳥と戦った誰かの痕跡だった。
「これで最後ですね」
マークが帳簿を閉じる。
夕暮れだった。
「助かりました」
「いえ」
レオンは首を振る。
「僕も関わった事ですから」
マークは少しだけ笑った。
「そういう所は良い所だと思いますよ」
レオンは少し照れ臭くなった。
⸻
そして数日後。
レオンは一人で王都中央区を歩いていた。
目的地は決まっている。
石造りの建物。
王都魔術研究院。
その一角。
ヴァイスの研究室だった。
骨鳥との戦いの後、ヴァイスは言った。
――君の変化について仮説がある。
――後日、時間を頂けませんか。
その言葉がずっと引っ掛かっていた。
妖精鳥との繋がり。
あの強化。
今も残る違和感。
知らなければならない。
そんな気がしていた。
レオンは研究棟の扉を見上げる。
そして深く息を吸った。
「……よし」
覚悟を決める。
そのまま扉を押し開いた。
後に、レオンの常識を大きく変える事になる話が、ここから始まる。
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