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足りない召喚士の戦い方  作者: トリバード
異常個体:骨鳥

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129/135

129:報告

本日もよろしくお願いします。

冒険者ギルド王都本部。


重厚な扉を押し開いた瞬間、ざわめきが広がった。


黒狼の牙。


それだけでも目立つ。


だが今回は違う。


荷車に積まれた異形の残骸。


巨大な骨。

焼け焦げた肉。

そして大量の遺品。


誰が見ても異常だった。


「……なんだあれ」

「魔獣か?」

「いや、見たことねぇぞ」


受付嬢の表情も固まっていた。

そして数秒後。


「ギ、ギルド長をお呼びします!」


慌ただしく奥へ消えていく。


ゼインが小さく息を吐いた。


「まぁそうだわな......」


「絶対こうなると思った」


シエラも疲れた顔で頷く。


しばらくして現れたギルド長は、荷車を見るなり顔色を変えた。


「応接室へ」


短い言葉だった。


「今すぐです」



案内されたのはギルド最上階。


普段なら高ランク冒険者でも滅多に使われない応接室だった。


全員が席へ着いて間もなく、再び扉が開く。


入ってきたのは一人の男だった。


年齢は六十を超えているはずだ。

髪には白いものが混じり、顔にも深い皺が刻まれている。


だが、レオンが最初に抱いた感想は、老人というものではなかった。


背筋は真っ直ぐだった。

歩みも力強い。

腰には剣。


片手には一本の杖。

支える為ではない。

魔術師が用いる触媒だった。


そして何よりもその目。

老人と呼ぶには、あまりにも力強い眼差し。


鋭く。

静かで。


まるで今から魔境へ放り込まれても、そのまま帰って来そうな目だった。


「……来たか」


ゼインが呟く。


「うわ」


シエラが顔を顰める。


「マジで来たのか」


カイルが苦笑した。


レオンは首を傾げる。


その時だった。


ギルド長が立ち上がる。


「エドガー卿」


その瞬間。


レオンの目が見開かれた。


エドガー・セルヴェイン。


知らない顔だった。


だが、名前だけは知っている。


『豪炎魔剣』

竜を討った英雄。

魔境単独生還者。

現王国魔境対策局顧問。


冒険者を目指した者なら、一度は耳にする伝説だった。


本物だ。


思わず背筋が伸びる。



エドガーは部屋へ入るなり、全員を見回した。


そして最初に口を開く。


「負傷者はいるか」


低く落ち着いた声だった。


「いるなら先に治療を受けろ」


その言葉にシエラが肩を竦める。


「両肩やられてるけど死にはしないわ」


「私も問題ありません」


マークが答える。

ゼイン達も頷いた。

エドガーはそれを確認してから席へ腰掛ける。


そして、視線がヴァイスへ向いた。


数秒。

沈黙。


「ヴァイス」


「はいはい」


「お前はまた前へ出たな」


即座だった。


ヴァイスが露骨に嫌そうな顔をする。


「必要でしたので」


「死ぬ可能性も理解した上でか」


「もちろんです」


即答。


エドガーが深く息を吐いた。


「まったく」


額を押さえる。


「お前のそういう所は昔から変わらんな」


ヴァイスは肩を竦める。


反省の色は無い。


だが、エドガーは続けた。


「お前の知識は王国にとって貴重だ」


部屋が静かになる。


「持ち帰る情報も、異常個体への知見も。

お前にしか分からない事がある」


視線が鋭くなる。


「だから命を軽く扱うな」


数秒の沈黙。


そして。


「......善処しますよォ」


珍しくヴァイスが素直に答えた。



次にエドガーの視線がカイルへ向く。


「カイル」


「お久しぶりです」


「久しぶりだな」


短い会話。


そしてエドガーはカイルを上から下まで見た。

まるで査定するように。


「多少は強くなったようだ」


「多少っすか」


「多少だ」


即答だった。


シエラがカイルに目を向ける。


「知り合いなの?」


「......昔、ちょっとな」


カイルは言い辛そうに答えた。


エドガーは続けた。


「もっとも」


そこで少しだけ口元が緩む。


「魔術を使わん私なら良い勝負になるかもしれん」


カイルが固まった。


部屋も静まる。


ゼインが笑う。


「高評価じゃねぇか」


「魔術込みなら話にならん」


エドガーは即座に付け加えた。


「やっぱりな!!」


カイルが叫ぶ。


部屋の空気が少しだけ和らいだ。



だが、その空気は長く続かなかった。


エドガーの視線が荷車へ向く。


骨鳥の下半身。

異形の骨格。

焼け焦げた肉。

そして無数の遺品。


先程までの柔らかさが消えた。


静かに。

鋭く。

観察する。


数秒。


誰も喋らない。


やがてエドガーが口を開いた。


「……骨鳥と言ったな」


低い声。


「この個体は、どこで確認した」


レオンは気付いた。


この人は。


ただ強いだけではない。

何かを警戒している。

そんな目だった。


ゼインもその変化に気付いたのだろう。


笑みを消す。


「王都北西の森林地帯。森の浅いところだ」


「そうか」


エドガーが短く答える。


だが。


その表情は僅かに険しくなっていた。


まるで。


その報告が、何か最悪の予感と繋がったかのように。


「さて」


エドガーが椅子へ深く腰掛ける。


「最初から聞こう」


部屋の空気が張り詰めた。


骨鳥との戦いは終わった。


だが。


骨鳥という存在についての確認は、今始まろうとしていた。

ここまで読んでいただき、ありがとうございます。

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