127:帰路
本日もよろしくお願いします。
遺品の回収は思った以上に時間が掛かった。
骨鳥の翼へ埋め込まれていた物だけではない。
戦闘中に散乱した物。
土へ埋もれた物。
木々へ引っ掛かっている物。
探せば探すほど出てくる。
「こっちにもあるぞ」
カイルが木の根元から短剣を拾い上げる。
刃は半ばから折れていた。
だが、柄は残っている。
「袋寄越せ」
ドルガが言う。
カイルが放り投げる。
無言の連携だった。
その少し離れた場所では、シエラが片手だけで回収作業を続けていた。
「ったく……」
地面へ落ちていた指輪を拾う。
「帰ったら絶対休む」
「毎回言ってますよね」
マークが苦笑した。
その手は止まらない。
ゼインは冒険者証を優先して仕分けている。
「......チッ、知ってる名前が結構ありやがるな......」
遺品と素材を分けながら整理している。
既に回収袋はかなりの重量になっていた。
⸻
遺品の整理がひと段落ついた頃。
「素晴らしいですねぇ……」
ヴァイスは骨鳥の残骸へ張り付いていた。
完全に別世界だった。
触手を切り取る。
骨を採取する。
焼け焦げた肉片を保存容器へ入れる。
時折。
「おや?」
などと言いながら何かを書き留めている。
楽しそうだった。
実に。
レオンは少し離れた場所からその様子を眺める。
そして自分の掌を見る。
魔力の状態は戻りつつある。
だが。
骨鳥との戦いで起きた変化は消えていない。
そっと魔力を流す。
赤い妖精鳥が現れた。
やはり大きい。
戦闘前とは明らかに違う。
以前よりも輪郭が濃い。
存在感が強い。
より生き物に近付いたような感覚すらある。
「……」
レオンは黙って見つめる。
あの時、何が起きたのか。
正確には分からない。
だが一つだけ確かな事がある。
以前の自分には出来なかった。
あの強化は、骨鳥との接触がなければ辿り着けなかった。
そう思うと少し複雑だった。
「何か分かりましたか?」
マークだった。
いつの間にか隣へ来ている。
レオンは苦笑した。
「全然です」
正直な答えだった。
マークも笑う。
「でしょうね」
その反応が少しだけ可笑しい。
レオンもつられて笑った。
「でも」
マークが続ける。
「強くなった事だけは確かでしょう」
レオンは妖精鳥を見る。
そして静かに頷いた。
⸻
回収作業が終わる頃には、既に陽は傾き始めていた。
骨鳥の下半身。
大量の素材。
無数の遺品。
それら全てを荷車へ詰め込む。
ゼインが確認する。
「これで全部だな?」
「ええ」
「問題ありません」
「大丈夫だ」
「よし」
短い確認。
そして一行は森を後にした。
⸻
帰路は静かだった。
戦闘が終わり、全員が疲弊している。
興奮気味のヴァイスを除き、誰もが無理に喋らない。
ヴァイスの独り言と足音だけが響く。
それで良かった。
レオンも黙って歩いていた。
身体は重い。
だが、不思議と気分は悪くない。
何度も死にかけた。
何度も助けられた。
情けない思いもした。
だが、確かに前へ進めた気がする。
そんな感覚があった。
⸻
そして。
翌日。
王都の城壁が見えた。
高く。
大きく。
見慣れた景色。
レオンは思わず息を吐く。
ようやく実感した。
帰ってきたのだと。
「終わったな」
ゼインが呟く。
その言葉へ誰も返事をしない。
だが、誰もが同じ事を思っていた。
骨鳥との戦いは一先ず終わった。
王都の門がゆっくりと近付いてくる。
その向こうでは。
今回持ち帰った物、そして骨鳥という存在が、思わぬ波紋を広げる事になるのだが。
今の彼らはまだ知らない。
ただ、生きて帰れた事だけを噛み締めながら。
王都への道を歩いていた。
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