119:標的
本日もよろしくお願いします。
轟ッ!!
骨鳥が空を裂いた。
一直線。
迷いは無い。
狙いは最初から決まっていた。
レオンだった。
「来るぞ!!」
ゼインの怒声。
だが。
その声が響くよりも早く。
ドルガが動いていた。
重い鎧に巨大な盾。
その全てを抱えたまま、一歩前へ出る。
轟音。
骨鳥の嘴が盾へ突き刺さった。
ガギィィィィィンッ!!
火花。
衝撃。
ドルガの身体が地面を滑る。
だが、止まった。
骨鳥の突進が。
「ッ……!!」
レオンが息を呑む。
昨夜から散々翻弄され続けた。
速過ぎて見えない。
避け切れない。
そう思っていた。
だから、ドルガは受けた。
真正面から。
骨鳥の眼孔が細まる。
理解出来ない。
そんな風にも見えた。
「言っただろう」
ドルガが低く言う。
盾越し。
骨鳥を見上げながら。
「狙いが、分かっているなら...!!」
力が込められる。
盾が持ち上がる。
「受けるのも、容易いと...!!!」
その瞬間。
ゼインが飛んだ。
轟ッ!!
戦斧の重い一撃が横から叩き込まれる。
骨鳥が翼を広げる。
骨。
肉。
黒い触手。
異形の翼が斧を受け止める。
だが。
完全には止め切れず、骨片が弾け飛ぶ。
ジャラァッ!!
無数の遺品が散る。
骨鳥が後退した。
ほんの僅か。
それだけだった。
だが。
今まででは考えられない事だった。
「押したぞ!!」
カイルが叫ぶ。
槍を構えたまま走る。
骨鳥の死角。
側面。
そこへ突き込む。
鋭い刺突が骨鳥の脇腹へ吸い込まれる。
ガギィッ!!
止まった。
半ばまでは入った。
だが、それ以上進まない。
咄嗟に引き抜こうとするも、何かに掴まれているように動かない。
骨のその奥。
何かが槍先を絡め取っていた。
「んだこれっっ!!」
カイルが舌打ちする。
その瞬間、骨鳥の首が捻れた。
黒い眼孔がカイルを見据える。
だが、そこから骨鳥が動き出すまでの僅かな隙にシエラが動く。
木を蹴る。
高速移動。
残った右腕だけで双剣を振るう。
銀閃。
カイルの槍が刺さった場所の近くをなぞるように切りつける。
骨鳥が反射的に後退した。
完全には通らない。
浅い。
だが。
狙いはそれで十分だった。
その瞬間、槍の拘束が解け、カイルが距離を取る。
「助かった!!」
「借り一つね!!」
シエラが叫ぶ。
その直後、骨鳥が翼を広げ、木々の上へ舞い上がる。
ガチガチと遺品が激しくぶつかり合うような音が響く。
嫌な予感。
「来る!!」
マークの声。
次の瞬間。
無数の何かが飛んだ。
骨片に金属片、その羽に取り込んだ幾つもの勲章のようなそれらの遺品が、嵐のように放たれる。
そうしてその合間に鋭い骨の槍が幾つも形成され、射出。
木々を貫きながら降り注ぐ。
咄嗟にマークが土壁を展開。
その刹那にドルガが前へ飛び出し、
壊れかけの大盾を斜めに構える。
轟音。
三本。
四本。
五本。
仲間に当たらないよう受け流す。
だが。
全部は無理だった。
「散開!!」
ゼインが叫ぶ。
全員が飛ぶ。
レオンも動く。
だが。
今度は違った。
骨鳥を見ない。
仲間を見る。
誰が危ない。
誰へ飛ぶ。
どこが崩れる。
それだけを見る。
「右!!」
叫ぶ。
妖精鳥が飛ぶ。
赤い光。
シエラへ。
身体能力強化。
シエラが加速する。
骨槍が頬を掠める。
回避成功。
「助かる!!」
同時。
二羽目。
ドルガへ。
盾を押し支える力が増す。
三羽目。
マークへ。
魔術展開速度が上がる。
水と土を組み合わせた泥の塊を骨鳥の羽に向かって放つ。
その反撃に体勢が崩れ、金属片の嵐が止む。
繋がった。
全員が。
レオンの中で確信が生まれる。
これだ。
敵を見るな。
仲間を見ろ。
崩れる場所を支えろ。
それが、自分の戦い方だ。
ジャラ……
骨鳥が距離を取り、羽に付いた泥を剥がす。
枝の上。
木々の隙間。
黒い眼孔だけがこちらを見る。
レオンを。
そして、骨鳥は理解した。
先程よりも、さらに明確に。
この人間がいる限り、自分は狩れない。
レオンも理解した。
骨鳥はまだ余裕がある。
今のは様子見だ。
本気ではない。
だが。
こちらも同じだった。
まだ、切り札は切っていない。
森の空気が張り詰める。
ジャラ……
金属音。
再び。
骨鳥が翼を広げた。
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