117:脅威と認識
本日もよろしくお願いします。
全員が戦闘体勢を整え、その場で構える。
誰も動かない。
ジャラ……
森の奥から金属音だけが鳴る。
近い。
確実に近い。
だが、骨鳥は現れない。
ゼインが眉を顰めた。
「来ねぇな」
戦斧を構えたまま、森の奥を睨む。
ジャラ……
また鳴る。
位置が変わる。
右。
いや。
左か。
木々の間を移動している。
だが、飛び込んでは来ない。
シエラが肩を押さえながら呟く。
「……なんなのよ」
低い声。
「さっきまであんなに積極的だったじゃない」
ドルガも盾を構えたまま周囲を見る。
「警戒しているな」
マークが静かに頷いた。
「恐らく」
「警戒?」
カイルが眉を寄せる。
「あの骨鳥がか?」
異常個体。
長期間生存型。
散々こちらを翻弄していた相手だ。
それが、今になって様子見をしている。
得体の知れない違和感がある。
ジャラ……
また音が鳴る。
今度は正面。
だが、やはり姿は見えない。
ヴァイスの魔眼が細まった。
静かに、何かを観察するように。
「……なるほど」
小さな呟き。
ゼインが振り返る。
「何か分かったのか」
ヴァイスは少しだけ考えるように黙る。
その後。
「警戒していますねぇ」
「だから何をだ」
即座に返すゼイン。
ヴァイスは答えなかった。
代わりに。
ゆっくり視線を動かす。
レオンへ。
その瞬間だった。
ジャラ……
森の奥。
音が止まった。
全員の空気が変わる。
静寂。
風だけが木々を揺らす。
そして。
レオンは感じた。
視線。
森の奥。
暗い木々の隙間。
そこに居る、なのに見えない。
だが、居る。
黒い眼孔。
その視線が。
真っ直ぐこちらを見ている。
いや、違う。
レオンだけを見ていた。
背筋へ冷たいものが走る。
「……レオン?」
カイルが小さく呟く。
レオンも気付いていた。
骨鳥は。
ゼインを見ていない。
ドルガでもない。
シエラでもない。
自分を見ている。
昨夜から続いていた狩り。
その中で、骨鳥は学習している。
そして、先程、翼を切断した強力な一撃。
何が原因だったのか。
理解したのだ。
ジャラ……
再び音が鳴る。
だが、今度は違った。
まるで。
距離を測るように。
こちらを観察するように。
慎重な音だった。
ヴァイスが静かに笑う。
「どうやら」
魔眼が細くなる。
「ようやく認識されたようですねぇ」
レオンの喉が鳴る。
嫌な予感しかしなかった。
その瞬間。
森の奥、木々の向こうで。
二つの黒い眼孔が、
僅かに光った気がした。
そして。
ジャラァ――
今までで一番大きな金属音が、
森へ響いた。
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