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足りない召喚士の戦い方  作者: トリバード
異常個体:骨鳥

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112/135

112:判断の速さ

本日もよろしくお願いします。

「……ニ、ゲ……ロ……コ......コロシ......デェ......」


掠れた声が、

森へ響いた。


誰も動かない。


いや。


動けなかった。


骨鳥の裂けた喉。


そこから漏れた人間の声。


それがあまりにも自然過ぎて、

一瞬だけ、本当に誰かが喋ったように錯覚した。


だが。


次の瞬間。


ジャラァッ!!


骨鳥が動いた。


速い。


「来るぞッ!!」


ゼインの怒声。


直後。


骨で形成された巨大な斧が振り下ろされる。


轟音。


地面が抉れた。


ドルガが盾を構える。


だが。


重い。


「ッ……!!」


骨斧が、

盾ごと押し込んでくる。


ドルガの足が地面へ沈む。


「ドルガ!!」


マークが即座に補助術式を飛ばす。


土壁。

強化。

防御補助。


だが、骨鳥は止まらない。


ジャラジャラと金属音を鳴らしながら、

無理矢理押し込んでくる。


ゼインが横から踏み込む。


戦斧。


轟ッ!!


骨の翼を叩き斬る。


だが。


切断面が蠢いた。


黒い触手。


骨を繋ぎ直す。


再形成。


速い。


「チッ……!!」


ゼインが舌打ちする。


シエラが背後へ回る。


双剣。


高速連撃。


骨鳥の脚部へ斬撃を叩き込む。


だが、浅い。


骨格そのものが硬い。


しかも。


傷が塞がっていく。


「硬っっったいわねコイツ!!」


シエラが叫ぶ。


その瞬間。


骨鳥の首が、

不自然な角度で捻れた。


シエラを見る。


黒い眼孔。


次の瞬間。


消えた。


「シエラさん!!」


レオンが叫ぶ。


だが遅い。


骨鳥が木々の間から突っ込んできた。


速過ぎる。


シエラが咄嗟に避ける。


だが、骨の翼が肩を掠めた。


鮮血。


シエラの身体が跳ね飛ばされ、そのまま後方の木へ激突した。


「ッ……!!」


レオンが息を呑む。


まずい。


回復を。


そう思った瞬間。


ジャラ――!!


今度は真上。


骨の槍が複数。


「散開!!」


ゼインが叫ぶ。


全員が動く。


レオンも反射的に妖精鳥を飛ばすのを止めた。


回復を優先するか。

回避を優先するか。


判断が間に合わない。


その間に、黒狼の牙はもう動いていた。


ドルガが受ける。

マークが妨害。

ゼインが迎撃。

シエラも血を流しながら立ち上がる。


レオンだけが、一瞬止まった。


「……ッ」


遅い。


分かっている。


そんな事。


だが、何を優先すべきか、考えてしまう。


骨鳥を見る。


位置を探す。


次の攻撃。


四羽目を出せれば。


そう思考した瞬間。


ヒュッ――!!


「危ねぇ!!」


カイルがレオンを突き飛ばした。


直後。


骨槍が地面へ突き刺さる。


ほんの数瞬前まで、

レオンが居た場所へ。


冷や汗が流れた。


「何やってんだ!!」


カイルが怒鳴る。


レオンは返せない。


自分でも分かっていた。


自分だけが、置いていかれている。


黒狼の牙は、既に骨鳥への対応を始めている。


カイルも前に出て攻撃を正面から受けないよう位置取っている。


なのに。


自分は、骨鳥を“見よう”としている。

四羽目の視覚共有を得てからは当たり前になっているその行動が、今は自分の判断力を鈍らせている。


「……クソ」


小さく漏れる。


役に立てていない。


いや。


違う。


足を引っ張っている。


その瞬間。


ゼインの身体が吹き飛んだ。


「ゼインさん!?」


骨鳥の骨翼。


横薙ぎ。


ゼインは戦斧で受けていた。


だが、威力を殺し切れていない。


地面を滑る。


血。


口元から流れていた。


「……ッ、やべぇな」


ゼインが笑う。


だが。


余裕は無い。


マークが即座に補助を飛ばす。


シエラが時間を稼ぐ。


ドルガが前へ出る。


連携。


迷いが無い。


レオンだけが、

遅れている。


その事実が、

胸へ重く刺さった。


今の自分は。


この場で、

誰よりも足りていない。


四羽目が使えない。


広域強化も難しい。


相手への弱体補助も入れられない。


戦術を組み立てる時間すら無い。


考える程、遅れる。


支援役として戦線を維持出来ていない。


繋げられていない。


「ッ……!!」


奥歯を噛み締める。


その時だった。


ジャラ――!!


骨鳥が、

再び頭上を取る。


速い。


ゼインがまだ立て直せていない。


シエラも距離がある。


狙いはマークだった。


ドルガの目が見開かれる。


「マーク!!」


低い怒声。


だが。


遠い。


間に合わない。


骨翼が振り下ろされる。


その瞬間。


マークの前へ、

黒い霧が広がった。


ヴァイスの闇魔術だ。


骨鳥の動きが、一瞬だけ鈍る。


「今ですよォ!!」


叫ぶ。


ゼインが踏み込む。


轟音。


戦斧が、

骨鳥を吹き飛ばした。


木々が砕ける。


だが。


骨鳥は空中で体勢を立て直し、

大きく距離を取るように森の奥へ跳んだ。


枝葉が揺れる。


だが。


完全には離れない。


ジャラ……


木々の向こう。


見えない場所から、

再び金属音が鳴った。


姿は無い。


だが。


まだ居る。


森の影から、

こちらを窺っている。


静寂。


誰もすぐには動かなかった。


荒い呼吸だけが響く。


レオンは、

自分の手を見ていた。


震えている。


何も出来なかった。


何度も。


助けられて。


守られて。


それでも。


まだ追いつけていない。


ヴァイスの魔眼が、

静かにレオンを見る。


だが。


今回は何も言わなかった。


その沈黙の方が、

ずっと重かった。

ここまで読んでいただき、ありがとうございます。

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