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足りない召喚士の戦い方  作者: トリバード
異常個体:骨鳥

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108/135

108:追跡音

本日もよろしくお願いします。

夜は長かった。


骨鳥の襲撃は、

結局その後一度も無かった。


だが。


静かだった訳でもない。


ジャラ……


時折。


森の奥、あるいは木々の上。


微かに、金属同士が擦れ合う音だけが響く。


まるで、こちらの様子を窺っているかのように。


その度に、空気が張り詰めた。


だが。


骨鳥は姿を現さない。


夜が深まるにつれ、

逆にその不気味さだけが増していった。



そして。


やがて空が白み始める。


木々の隙間から、

薄い朝日が差し込んだ。


レオンは小さく息を吐く。


夜が終わる。


それだけで、

張り詰めていた感覚が少し緩んだ。


その時。


「さて」


ヴァイスが立ち上がった。

白衣へ付着した土を払いながら、

淡々と口を開く。


「そろそろ撤退しましょう」


ゼインが眉を寄せる。


「……追わねぇのか?」


低い声。


「今なら向こうも消耗してる可能性があるが......」


ヴァイスは首を横へ振った。


「今回はあくまで調査です」


即答だった。


「骨鳥の現状は十分確認出来ました」


「戦闘能力。異形化傾向。再生構造。知性反応」


指折り数える。


「加えて」


ヴァイスが、

横へ置かれた布袋を見る。


その中には、

昨夜戦闘時に回収した骨片や羽根が入っていた。


黒く変質した羽。


異様に硬い骨。


「サンプルも確保済みです」


魔眼が細まる。


「確かに今あれを仕留められるのであれば良いですが、戦力的に足りないと思いますねぇ」


「それに、これ以上の接触は、得られる成果に対して危険が大き過ぎます」


シエラが小さく肩を竦めた。


「まぁ、私は賛成。正直あれと森の中で追いかけっこしたくないし」


マークも頷く。


「骨鳥は強敵です。今の状態での深追いは危険でしょう」


ドルガも短く口を開いた。


「マークと同意見だ」


だが。


ゼインだけは、

少し納得していない顔だった。


「……チッ」


小さく舌打ちする。


脳裏へ浮かぶのは、

骨鳥の翼へ埋め込まれていた剣。


食われたCランク冒険者。

そこまで親しかった訳ではない。


しかし、それでも、あの異形をこのまま放置するのは、不愉快だった。


だが。


数秒後。


ゼインは小さく息を吐いた。


「……まぁ、仕方ねぇか」


戦斧を背負い直す。


「今回は調査だったな」


ヴァイスが満足そうに頷いた。


「理解が早くて助かります」


「お前が言うと妙に腹が立つな」


ゼインがぼそりと返す。


その後。


一行は撤退準備を始めた。


簡易結界を解除し荷物をまとめる。


痕跡を出来る限り消しながら、

慎重に森を進む。


朝の森は、

夜より幾分静かだった。


鳥の鳴き声。


風の音。


昨夜の異様な空気が、

嘘みたいに感じる。


だが。


レオンだけは、

妙な違和感を覚えていた。


何かが、ずっとこちらを見ている気がする。


「……レオン?」


カイルが小声で聞く。


「どうした」


「……いえ」


言葉を濁す。


嫌な感覚だが消えない。


だが、根拠もない。


その時だった。


ジャラ……


全員の足が止まる。


背後。

まだ、遠い。


だが、確かに聞こえた。


金属音。


森の奥。


誰も動かない。


シエラが、

静かに双剣へ手を掛ける。


ドルガが後方警戒へ回る。


ゼインの目が細まった。


再び。


ジャラ……


今度は、少し近い。


まるで。


一定距離を保ちながら、

付いて来ているようだった。


レオンの背筋へ、

冷たいものが走る。


ヴァイスが目を細め、静かに後方を見つめている。


その顔から、笑みが消えていた。


そして。


珍しく。


額へ薄く汗が浮かんでいる。


「……これは」


低い声。


「......まずい、ですねぇ」


その呟きだけが、

静かな森へ落ちた。

ここまで読んでいただき、ありがとうございます。

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