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足りない召喚士の戦い方  作者: トリバード
異常個体:骨鳥

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106/138

106:夜襲

「来るぞッ!!」


ゼインの怒声が響いた瞬間。


骨鳥が、

森を裂くような速度で突っ込んできた。


速い。


レオンの視界から、

一瞬で消える。


「――ッ!!」


直後。


凄まじい衝撃音。


ゼインの戦斧と、

骨鳥の嘴が激突した。


火花。


ジャラジャラ、と、

翼へ埋め込まれた金属片が鳴る。


「チッ……!」


ゼインが踏み止まる。


重い。


嘴の一撃とは思えない。


大型魔獣の突進そのものだった。


その横から。


シエラが飛び込む。


「はぁッ!!」


双剣が閃く。


骨鳥の脚へ斬撃が走った。


だが。


硬い。


骨へ直接刃が当たったような感触。


シエラが眉を寄せる。


「……ッ、硬っ……!」


その瞬間。


骨鳥の翼が広がる。


ジャラッ――!!


無数の金属片が鳴った。


「シエラ下がれ!!」


マークの声。


次の瞬間。


骨鳥の翼から、

大量の羽根が撃ち出された。


いや。


羽根じゃない。


骨だった。


細く鋭い骨片。


それが矢のように周囲へ撒き散らされる。


シエラが咄嗟に後退。


ドルガが前へ出た。


巨大盾が地面へ叩き込まれる。


ガガガガガッ!!


凄まじい音。


骨片が盾へ突き刺さる。


だが。


止まらない。


数本が盾を貫通した。


「……おいおい」


カイルが顔を引き攣らせる。


「今の、

普通に盾抜いただろ……」


ドルガの腕から血が流れていた。


深くはない。


だが。


分厚い大楯を、貫通した。


明らかに異常。


「レオン!!」


ゼインの声。


「強化寄越せ!!」


「は、はい!!」


レオンが妖精鳥を展開する。


一羽目。


赤い目が光る。


直後。


ゼインの身体能力が跳ね上がった。


地面を砕く踏み込み。


雷鉄鉱の戦斧が、

雷光を纏う。


「――オラァッ!!」


轟音。


戦斧が骨鳥の右翼を斬り裂いた。


肉が飛ぶ。


羽が散る。


確かな手応え。


だが。


次の瞬間だった。


裂けた翼。


その断面から。


黒い触手が溢れ出した。


「……ッ!?」


レオンが息を呑む。


蠢く黒。


それが、

無理矢理肉と骨を引き寄せる。


だが。


戻らない。


代わりに。


骨が増殖した。


バキ、バキバキッ――


嫌な音。


翼だったものが、

変形していく。


羽毛ではない。


密集した骨。


無数の細骨が、

無理矢理翼の形を作っていく。


「……なんだよ、

それ……」


カイルが顔を引き攣らせる。


骨鳥が吠えた。


「ギッ、ァァアアア――!!」


人の悲鳴みたいな鳴き声。


森が震える。


そして。


再び消えた。


「上!!」


シエラの叫び。


直後。


骨鳥が木々の上から急降下してきた。


速い。


夜。


森。


視界が悪い。


レオンは追い切れない。


「くっ……!」


四羽目を飛ばそうとして、

止まる。


駄目だ。


上へ出した瞬間、

狙われる。


森の中では視界共有も機能しづらい。


しかも相手は飛行型。


「レオン!!」


カイルが叫ぶ。


骨鳥が、

一直線にレオンへ向かっていた。


「ッ!!」


反応が遅れる。


見えない。


速過ぎる。


その瞬間。


レオンの前へ、

黒い闇が広がった。


ヴァイスだった。


「沈め」


低い声。


闇が、

骨鳥へ絡み付く。


瞬間。


骨鳥の動きが僅かに鈍った。


「ギィッ!?」


魔力の流れ。


それを無理矢理乱されている。


ヴァイスの魔眼が、

鋭く光った。


「なるほど……

循環系は四つ腕より未熟ですか」


観察していた。


完全に。


レオンが咄嗟に後退。


その直後。


ドルガの大盾が振り抜かれる。


轟音。


骨鳥が横へ吹き飛んだ。


だが。


木へ叩き付けられた直後。


黒い触手が、

無理矢理身体を支える。


「……再生が速過ぎる」


マークが低く呟く。


「いや」


ヴァイスが静かに言った。


魔眼が細まる。


「あれは再生ではない」


骨鳥の身体。


そこでは今も、

肉と骨が歪に増殖している。


「異形化が、

損傷を埋め合わせているだけです」


低い声。


「だから形が安定していない」


その瞬間。


骨鳥が、

再びこちらを見る。


黒い眼孔。


そこから。


掠れた声が漏れた。


「……ニ、ゲ……」


レオンの背筋が凍る。


次の瞬間。


骨鳥が、

森の奥へ飛び退いた。


「逃がすか!!」


ゼインが踏み込もうとする。


だが。


ヴァイスが片手を上げた。


「待ちなさい」


低い声。


骨鳥は木々の上。


こちらを見下ろしている。


逃げる訳ではない。


観察している。


そして。


ジャラ……と、

翼の金属片を鳴らした。


不気味な音。


その直後。


骨鳥が、

夜空へ飛び上がる。


森の闇へ消えた。


静寂。


誰も、

すぐには動けなかった。


やがて。


ゼインが舌打ちする。


「……クソが」


怒りが滲んでいた。


シエラが、

ゆっくり息を吐く。


「今の、

調査対象ってレベルだった?」


「十分調査出来たでしょう」


ヴァイスだけが、

静かに笑っていた。


魔眼が、

未だ森の奥を見ている。


「……非常に興味深い」


その声に。


レオンは、

嫌な寒気を覚えていた。

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