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足りない召喚士の戦い方  作者: トリバード
知識の探究

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101/135

101:再会と出会い

本日もよろしくお願いします。

高速馬車は夜通し走り続けた。


通常の馬車なら王都まで三日は掛かる距離。


だが、王都直属の高速馬車は違う。


魔力強化された軍馬。

衝撃軽減術式。

車輪補助魔術。


その全てによって、

信じられない速度で街道を駆け抜けていく。


そして翌朝。


レオン達は、既に王都へ到着していた。


「……速かったですね」


馬車から降りたレオンが思わずそう呟く。


カイルが肩を回した。


「身体は楽だったけどな。精神的に落ち着かねぇ乗り物だった」


王都アルセリア。

王国最大都市。


リスベルとは比較にならない人の数。


巨大な石造建築。

整備された石畳。

魔導設備。

行き交う馬車。

冒険者。

兵士。


全ての規模が違う。


レオンは思わず周囲を見回した。


「……凄いですね」


「お前、王都初めてか?」


「はい」


「まぁ最初はそんな反応になるわな」


カイルが少し笑う。


だが、二人が感心していられたのは、

最初だけだった。


案内役の王都兵が淡々と先導していく。


向かう先。


王国異常個体研究施設。

王都外縁部。


他施設からやや離れるように建てられた、巨大な施設。


分厚い石壁。

幾重もの封印術式。

無骨な鉄扉。


まるで要塞だった。


「……研究所って規模のもんじゃねぇなこれは」


カイルが眉を寄せる。

レオンも同感だった。


窓が少ない。

空気が重い。


周囲を巡回している兵士達も、

通常警備とは明らかに緊張感が違う。


「こちらです」


兵士が短く告げる。


内部へ入る。

冷たい石造通路。

壁面へ刻まれた魔術式。


通路を進む度、封印扉が開閉する。


まるで危険物保管庫だった。


そして、地下区画。


重い扉が開いた瞬間。


「おう」


聞き覚えのある声。


ゼインだった。


巨大な雷鉄鉱の戦斧を背負い、

壁へ寄り掛かっている。


その隣にはマークの姿もあった。


「お久しぶりです」


マークが穏やかに頭を下げる。


レオンも軽く会釈した。


「ゼインさん、マークさん」


カイルが少し笑う。


「そっちも無事そうだな」


「まぁな」


ゼインが鼻を鳴らす。


「お前こそ、死にかけてた割には元気そうじゃねぇか」


「丈夫さだけが取り柄だからな」


カイルが笑う。


マークが、その傷痕を見る。


「後遺症は?」


「もう全く問題ないぜ」


「なら良かった」


穏やかな声。


レオンは少しだけ空気が緩んだのを感じた。


現場を知っている相手が居る。


それだけで、

随分安心感が違う。


すると。


ゼインが、

ふと思い出したように口を開く。


「で、どうだカイル」


「うち来る気になったか?」


カイルが少し困ったように笑う。


「……まだ言うのか」


「当たり前だ」


ゼインが即答する。


「前線張れて、頭も回る槍使いなんざ貴重なんだよ」


「お前くらい動けるなら歓迎する」


カイルは少しだけ視線を逸らした。


黒狼の牙。


グランディアで共闘したからこそ、

その実力はよく分かっている。


自分では、

まだ届かないと思うくらいには。


だからこそ。


その誘いが冗談ではない事も、

理解していた。


「……ありがたい話ではあるんだけどな」


カイルが頭を掻く。


「まだ、急に全部変える踏ん切りがつかねぇよ」


ゼインは、

数秒だけ黙った後。


「まぁ、すぐ答え出せって話でもねぇか」


そう言って鼻を鳴らした。


その場へ少し笑いが漏れる。


だが。


次の瞬間だった。


「――ああ!!

やっと来ましたか!!!」


場違いなほど高い声。


研究室奥。


白衣姿の男が、

凄まじい勢いでこちらへ歩いてくる。


いや。


歩くというより、

転がる勢いで突っ込んで来るようだった。


痩せ型。

灰色混じりの黒髪。


そして。


魔眼だろうか。

右目だけ、淡い紫色に発光していた。


男は、

早口で一気に捲し立てる。


「いやぁ素晴らしい!!本当に素晴らしい!!知性持ち異常個体!!しかも既存種からの逸脱方向が極めて特殊!!複数魔力循環!!異常再生!!未だ残存活動反応あり!!ん〜!!実に興味深い!!!」


研究員達が、

静かに目を逸らした。


慣れていた。


男は完全に、

自分の世界へ入っている。


「はじめまして。王国異常個体研究所所長、ヴァイス・クローデルです!!

さぁ!!

君達が見た異常を全部聞かせて下さい!!

どこから異常だったのか!!どの段階で知性を感じたのか!!戦闘思考は!?連携性は!?通常個体との差異は――」


そこまで一気に捲し立てて。


不意に。


ヴァイスが止まった。

表情が消える。

空気が変わる。


紫色の魔眼が、鋭く細まる。


視線。


レオンへ。


さっきまでの高揚が、

嘘みたいに消えていた。


「……君」


低い声。

鋭い。


まるで、頭の中を覗かれているような目。


「後方支援の召喚士でしたね?」


研究室が静まり返る。


レオンが、僅かに息を止めた。


ヴァイスは、数秒だけ無言でレオンを見る。


そして。


「……いや、後です後です!!

まずは四つ腕ですねぇ!!!」


急に戻った。


再び、

異様な熱量。


ヴァイスは笑う。


「時間が惜しい!!私の寿命だって有限ですから!!!」

ここまで読んでいただき、ありがとうございます。

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