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47話 仲間たち

「古代遺物って、いったい何のことですか・・・?」


 ソフィリアは彼女が言っていることわからず思わず聞き返す。

 だってあれはただ拾ったものだ。それも偶然的に。何も狙って使ったわけではないし、そもそも疑似的なゲートってなんだ? そんな技術聞いたこともない。


「その名の通り古代遺物で、1,000年前からある世界7代遺物の一つだ。そしてこれはゲートの代わりを模して造られた人工的なゲート。ソフィリア、これを使ってあの時は魔法を行使できたのか?」

「魔法を行使・・・? 一体何のことか、わからないんですけど」


 ヴィアトリクスとローズは目を合わせる。


「ソフィリア、君は記憶がないのか・・・?」

「? わかりませんが、はい」

「レイブンの先で起きた出来事は憶えているか?」

「やんわりとは、でも途中途中で記憶が飛んでて自分でもあまり覚えていなくて・・・すみません」


 これは色々とまずいことになった。そんな顔をローズがする。ヴィアトリクスは眉間にしわを寄せ考えに耽る。何かまずいことを言ってしまったかと後悔するソフィリアだったが、ローズがすかさずこう提言した。


「まぁそこは別に問題じゃない。問題なのは、お前がこれを使って魔法を行使できたのか否かだ。覚えてないか?」

「私はなにも・・・ただ、何か必死でやっていたような感覚はあります・・・」

「どんな感覚だ?」

「・・・えっと、なんて言えばいいかわかりませんけど。みぞおち辺りが熱くなって、過去のことを思い出していました。走馬灯みたいに。そこからは本当に覚えてないです」

「みぞおち・・・走馬灯・・・。わかった、ありがとう」


 それだけ言うとローズはまた何かを考え込むように黙り込んでしまった。


 窓から風が吹いてきてカーテンを押し上げる。近くに海があるようで潮の香りがソフィリアの鼻をつつく。

 ヴィアトリクスはその間別の話題を振ってくれていた。


「ソフィリア、具合のほうはどうなんだ?」

「はい、おかげさまで今週には退院できるってお医者さんが言っていました」

「そうか、それはよかったな。ここは海も近くにあって心地がいいな、ここでなら色々気分転換も捗るだろうな」

「はい。息詰まった空気を入れ替えてくれるみたいですごくいい病院ですね」

「学校生活はどうだ? もう慣れてきたころか?」


 気を使ってなのか会話が弾む。コミュニケーションがとりずらいソフィリアが流ちょうになれるほどヴィアトリクスの会話の運び方はうまかった。

 クラブの話に差し掛かったときに、ローズはふとこう口をはさんできた。


「お前、フレリア・ダズリーンという名前に聞き覚えはあるか?」

「・・・! 先生それはまだ・・・!」

「必要なことだ、どうなんだ。ソフィリア」


 彼の目は真っすぐとソフィリアの視線をとらえる。まるで視線をずらすことを許さないかのように真っすぐ離さない。ヴィアトリクスは心配そうにソフィリアを見守るが、彼女はタジタジになりながらもこう答えた。


「あります、制服がその人のもので名前があったので」

「それだけか? あのブローチを拾った場所に奴のものはあったか?」

「わからないです、アリーナ大倉庫は暗かったので」


 どんどん洪水のように質問漬けにあいソフィリアは何事かと心配そうな顔を浮かべた。

 ヴィアトリクスも回復したての彼女にこれ以上負担は強いたくないようでローズに向かってこう発言した。


「先生、彼女もまだ万全ではない状態です。もう少し時間を空けて、ゆっくり学校に復帰した後に聞いてみてもよいのでは?」


 ローズは彼女にそう諭されて考える。ソフィリアにも一瞥をやって考えに更けていた。


「そう、だな。それがいいかもしれない、悪いなアズベルト。また別日に聞くとする」

「わかりました・・・。それまでにいろいろ、頭の中を整理、しておきます」

「悪いなソフィリア。ただこれは重要なことなんだ。このブローチはソフィリアに返す。だがこれのことは誰にも口外しないように。アンジェリーナだったか? 君が仲良くしている友達にもだ。わかってくれるか?」


「は、はい! それはもちろんです」


 友達という言葉がヴィアトリクスの口から飛び出たことにソフィリアはなんだか胸がほっとしていた。だって自分では友達と思っていいものかわからなかったから。今までそんな人間できたことのなかった彼女にとって、ニーナが友達と呼んでいいものか不安だったのだが。


「隠れていないで入ってきていいのだぞ」


 不意にヴィアトリクスが入り口に向かってそう言った。奥からは複数人の息遣いの声が驚きで上がり窓からみえる影がちらつく。


 外から入ってきたのは、B寮の面々だった。ニーナ、エレニア、イオルノ、ジン、ファドリック、そしてクルル。アイシャ以外の全員が病院に足を運んでいた。


「ソフィちゃん!」


 ニーナがソフィリアの姿を見るなり彼女の元へ駆け寄る。そのままベッド上のソフィリアに向かって抱き着く姿勢になり歓喜のあまり号泣を始めてしまった。


「え、ニーナさん?!」

「心配したんだから・・・!」

「え、ちょっ、ニーナさん」

「じゃあ私はこれで失礼する。また学校でな」


 ヴィアトリクスがそう言って椅子から腰を上げた。ローズも彼女の退室の合図と同時に窓枠から離れて病室を離れる。


 入れ替わるようにB寮の面々がソフィリアの周りを取り囲むようにして群がり始め、ソフィリアはその圧迫感に目を回す。

 そんな間、ヴィアトリクスが病室を立ち去る際にソフィリアの名を呼んだ。


「ソフィリア」


 ニーナとソフィリアの視線が彼女に注がれる。


「いい仲間に恵まれたな」


 優し気な笑みを浮かべてそれだけ言い残し、彼女は扉の奥へ消えていった。


 なぜかニーナの顔が赤面してしまう。


「なんでニーナ顔赤らめてるの?」

「へ?!」


 エレニアが冗談交じりにそう彼女に言葉を掛けると、ニーナは驚いたように顔を上げて声を出す。


「果物があるわ! これソフィちゃん食べるわよね?!」

「え? はい・・・。いた、だきます」

「わかったわ!」


 急いでニーナは立ち上がりヴィアトリクスが向いて行ってくれた果物を片手に用意し始める。

 なぜか周りの人間はニヤニヤとその姿を見つめていたが、それにソフィリアが気づくことはなかった。


「でも、もう体は大丈夫なの?」

「はい。おかげさまで」


 イオルノがそう尋ねてきたので心配を掛けまいとソフィリアはそう断言した。若干まだ体がだるいが痛いところもないので概ね嘘はついてないはずだ。イオルノは「よかった」と言葉を足した。


 そのあと色々聞かれたが、まだ詳しいことは言えないので彼らの質問にはほとんど答えられなかった。中でも一番紛らわすのが厳しかったのが彼女がクレドにもかかわらず魔法が扱えたこと。これはエレニアとニーナにしか明かしていなかったので、エレニアがそれを聞いたときに周りの先輩たちは驚いていた。


「てことは、君は魔法なしで襲撃者とやりあったということか?」


 ファドリックが目を見開いてそう尋ねる。襲撃者というのはあの鎧を従えていた黒コートの男だろう。フレリシア教団とヴィアトリクスが言っていたがこれも口外しないほうがいいかもしれないので、言葉を濁してそんな表現にされているようだ。


 ただこれの質問にも彼女は答えられない。


「みんな? まだソフィも混乱しているんだからそれくらいにしてあげて。今はただ無事だったことを喜びましょう」


 イオルノが助け船を出してくれたので安堵する。周りの人も確かになと同意してくれてそれ以上の詮索は厳禁となった。ただ、すぐに解散の段取りとなり、ソフィリアは少し寂しかったが、彼らの時間を奪うわけにもいかないので何も言わずに手を振る。


「ニーナ、あんたもう少しあの子といてあげなさい」

「え?! な、なんであたしだけ」

「だってあんたまだ仲直りしてないでしょ?」

「仲直りって、別にそんな・・・」


 ニーナとエレニアが病室の扉付近でそうこそこそ話す。ソフィリアは内容がきこえなかったので 見守るしかなかったが、あまりコソコソ話に慣れていないせいかそわそわする。


「それじゃあ、うまくやんなさい」

「え?! エレニアさ—」


 ぴしゃッと扉が閉められる音を残して去っていく面々。なぜかニーナだけが残ってしまいソフィリアは首をかしげる。


「どうしたんですか? ニーナさん」

「ほんとにあの子ってこういうところあるからもう・・・」

「ニーナさん?」

「へ? ああごめんなさい、えーと、座っていいかな?」

「はい。どうぞ」


 なぜか堅苦しい会話から始まって、ニーナはヴィアトリクスが座っていた椅子にゆっくり腰かける。


 そのタイミングで窓から大きな風が入ってくる。

 ニーナの赤い髪がそれに晒されて、耳まで赤くなっている彼女の様子が見て取れた。

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