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最終話 低劣内気ないじめられっ子魔法使いの成り上がり

「ソフィちゃん、改めて聞いておくんだけどね」

「はい?」

「・・・えっとね・・・。あたしとソフィちゃんて、友達ってことでいいんだよ・・・ね?」


 思いがけない質問にソフィリアは仰天する。そんなたどたどしい様子で、そんな恥ずかしいことをさらっと言える彼女には感服の意すら表したいくらいだ。

 風になびかれて耳まで真っ赤な彼女に、ソフィリアは思わず吹き出してしまった。


「え?! な、なに?!」

「す、すみません・・・。あまりに、おかしくって」

「もう・・・。こっちは真剣なんだから・・・!」


 ニーナは怒りつつも自分で自分の言っていることの不思議度をおかしく思ったのか、口端を上げて小さく笑う。


 友達、友達の定義なんてものがあるのなら、何をもってしてニーナと友達と呼べるのか。


 いや、定義なんてどうでもよかった。

 彼女はやっと気づけた。彼女の隣にいるべき人間とか、クレドとか。自分が他人を傷つけてしまう可能性があることに怖気づいていただけだ。それらを言い訳にして、利用して逃げていただけだったことに。


 今なら言える。はっきりと。


「私はニーナさんの事、友達だと思ってます。少なくとも私は、ニーナさんのことが大好きですから」

「・・・ありがとう、あたしもソフィちゃんの事すごく好き。だけど、あなたのこと何も知らないから、貴女の事をもっと教えてほしい」

「私の事ですか?」



 ニーナは大きく顔をうなづかせる。

 これがニーナの言いたかったことだ。彼女はソフィリアの事を何も知らない。知らないからこそ彼女が懸念していたことにも理解できずにいた。彼女の性格からくる低劣で内気な考えを受け止めることができなかったのだ。


「そう、あなたが何に喜んで、何に怒って、何に感動するのか。何を思って行動して、何がしたいのか。それが知りたいな」

「な、なるほど・・・」

「・・・ダメ?」

「いえ、そんなことは・・・ただ」


 ソフィリアは気まずそうに言葉をそこで切った。視点を下に向けてうずくまり、ニーナはそれを見て首をかしげる。


「ただ、ちょっとストーカー気質と、言いますか・・・。重いと言いますか」

「へ・・・?! お、重い・・・? あたしが、重い・・・? そんなに?!」

「いえ?! お、重くないです! そんなには! し、失言でした・・・!」

「そんなに重くないってことは多少重いってことじゃない! そんなに重かったあたし・・・?! えええ?!」





「あちゃー。これはリックの助言がある意味、悪い方向にいってるなぁ」

「俺のせいかこれ?! あそこからはもう自己責任の域だろ?!」


 こっそり扉の隙間から二人を見守るB寮。フィリックとイオルノがそう呟き、それにエレニアが反応する。


「先輩何か言ったんですか? あの子結構他人の言葉鵜呑みにしちゃう傾向つよいんでやめてもらっていいですか・・・?」

「いやエレニアさんにこそ言われたくないけどなぁ・・・。もう少しわかりやすく伝えるようにしたほうがいいのか・・・?」


 エレニアの言葉にフィリックは否定の言葉をはさむが、それ以外の人間は全員ダメだこれという落胆の顔をする。


「それでも副寮長? 僕のほうがいい働きするんじゃない?」

「クルルは料理があるから駄目だろ? てことは俺の本領を発揮するときが—」


「ジーン? そんなこと私が認めるわけないでしょう??」

「すんません」


 ジルバレンのやる気に満ちた発言をイオルノが一瞬で粉々に消し飛ばしてしまった。


 まだ入学して一か月のソフィリアだったが、彼女の中で大きく何かが変わり始めていた。

 それは周りの環境のことでもあり、彼女の心境の変化でもあり、そしてそれと同時に世界情勢の変化についてもだ。


 ここから先、彼女の魔法を極める道のりが一本の道筋として確立される。

 だがこの一か月はその道の一歩目に過ぎない。


 彼女のハープネスでの学園生活は、始まったばかりだ。

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