第6章 最後の扉(核心)
――あの日の本当の結末
黒い影が僕の身体を飲み込み、視界が完全に暗転した。
次に目を開けたとき、僕は“あの日の夜”に立っていた。
雨の音。
濡れたアスファルト。
街灯の滲む光。
そして―― 彼女がいた。
泣きながら、僕を見ていた。
「どうして……?」 彼女の口が動く。 声は聞こえない。 音が消えている。
僕は息を呑む。
「……ここは……」
「あなたの記憶の“最後の部屋”だよ」
背後から、“影の彼女”が囁いた。
真相①:僕は彼女を振り払った――それだけじゃない
目の前の“過去の僕”が、彼女の腕を強く振り払う。
彼女は倒れ、アスファルトに手をつく。
僕は知っている。
ここまでは思い出した。
だが―― ここから先が、僕の記憶にはない。
影の彼女が囁く。
「あなたはね…… 振り払ったあと、逃げたんだよ」
「……逃げた……?」
「うん。怖くて、混乱して、“彼女がどうなったか”を見るのが怖くて」
目の前の“過去の僕”が、後ずさりし、そのまま走り去った。
僕は息を呑む。
「……俺は……彼女を置いて……?」
「置いていったんだよ。倒れたままの私を」
胸が締め付けられる。
真相②:彼女は死んでいなかった
倒れた彼女が、ゆっくりと顔を上げた。
泣きながら、震えながら、僕の名前を呼んでいた。
『……たすけて……』
僕の胸が痛む。
「……生きてた……?」
影の彼女が頷く。
「うん。あのとき私は、まだ生きてた。あなたが戻ってきてくれたら…… 助かったかもしれない」
僕は膝から崩れ落ちた。
「……俺は……」
「あなたは戻らなかった。怖かったから。罪悪感が怖かったから」
雨の中、彼女は必死に僕を呼び続けていた。
でも、僕は戻らなかった。
真相③:彼女が“影”になった理由
影の彼女が僕の耳元で囁く。
「ねえ……分かる?」
「……何が……」
「私はね…… あなたに殺されたんじゃない」
僕は息を呑む。
「……じゃあ……」
「あなたに“見捨てられて”死んだの」
胸の奥が凍りつく。
「あなたが戻らなかったから、私はひとりで、雨の中で、ゆっくりと……」
影の彼女の声が震える。
「……消えていった」
僕は叫んだ。
「やめろ……やめてくれ……!」
「やめないよ」
影の彼女は微笑む。
「だって、これが“本当の結末”だから」
真相④:彼女が戻ってきた理由
影の彼女が僕の胸に手を当てる。
「私はね……あなたに復讐したかったわけじゃない」
「……じゃあ……」
「あなたに“続きを生きてほしかった”の」
「続き……?」
「うん。あの日、あなたが逃げなかったら、私たちはどうなってたんだろうって。その“続き”を、あなたの中で生きたかった」
影が僕の胸に入り込む。
「あなたの心臓が私の鼓動を受け入れたとき、私は思ったんだよ」
影の彼女は微笑む。
「ああ……これで“続き”が生きられるって」
真相⑤:主人公が選ばなければならない結末
影が僕の身体を包み込む。
影の彼女が囁く。
「ねえ……選んで」
「……何を……」
「あなたの中で、私と“続き”を生きるのか」
影が僕の胸に深く入り込む。
「それとも――私をここで終わらせるのか」
白い部屋の扉が、 ゆっくりと閉じ始める。
影の彼女が僕の手を取る。
「どっちでもいいよ。あなたが選んだほうが“本当の結末”になるから」
僕は震える声で言った。
「……俺は……」
影の彼女は微笑む。
「さあ、選んで。あなたと私の“続き”を」
白い部屋が崩れ始める。
影が僕の心臓を包み込む。
世界が暗転する。




