↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
豪商生まれのただの平民士官【帝国改革記】  作者: 橘秀斗
帝都・改革編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
96/116

第95話 狭隘の守り

 南側の山道、最も狭隘な区間に、レオンとアレクシスの部隊は、慎重に、防衛陣地を構築していった。


「この地点なら、敵の大軍も、一度に、通過することはできない」レオンは、地形を見渡しながら、確信を持って言った。


「少数での防衛が、可能な地形、ということだな」アレクシスも、同意するように頷いた。


 二人は、これまでの経験を活かし、限られた兵力で、最大の効果を発揮できる布陣を、練り上げていった。


「崖の上から、弓兵を配置する」アレクシスが、指示を出した。「狭い道を進む敵は、側面からの攻撃に、対応しづらいはずだ」


「物資の配置は、こちらで、手配する」レオンは言った。「長期戦になる可能性も、考慮して、分散した補給拠点を、構築しておく」


 二人の役割分担は、これまでの数々の戦いを経て、もはや、言葉を多く交わさずとも、互いの意図を、正確に理解し合えるほどに、洗練されていた。


 数日後、予想通り、敵の先遣部隊が、この狭隘な区間へと、姿を現した。


「来たぞ」


 アレクシスの合図と共に、崖上に配置された弓兵たちが、一斉に、矢を放った。狭い道に押し込められた敵部隊は、その奇襲に、大きく混乱した。


「退くな! 進め!」


 敵の指揮官らしき声が、遠くから聞こえてきた。だが、狭い地形の中、前進も後退も、ままならない状況に、敵部隊は、次第に、統制を失っていった。


「このまま、押し切れるか」ハーケンが、戦況を見ながら、レオンに尋ねた。


「いや」レオンは、冷静に、状況を分析していた。「敵も、ただでは退かないはずだ。一旦、こちらの損害を、最小限に抑えることを、優先しよう」


 レオンの判断通り、しばらくすると、敵部隊は、一時的な撤退を選択した。


「第一波、撃退しました」


 部下からの報告に、陣地内に、小さな歓声が上がった。だが、レオンとアレクシスは、油断なく、次の動きに備えていた。


「敵も、この狭隘な地形を、無理に突破しようとはしないだろう」アレクシスは、冷静に分析した。「別の策を、講じてくるはずだ」


「迂回、あるいは——」レオンは、地図を見ながら、考えを巡らせた。「この地形を、迂回する、さらに険しいルートを、探そうとするかもしれない」


 二人の予測は、数日後、現実のものとなった。


「敵、さらに南側の、未開拓の山域へ、部隊を、展開させ始めています」


 この報告に、レオンは、改めて、厳しい表情を浮かべた。


「本当に、あらゆる手段を、使ってくるな」


「それだけ、この戦争に、懸けているということだろう」アレクシスは、険しい声で言った。


 レオンは、この新たな動きに、改めて、対応を検討し始めた。


「未開拓の山域、ということは、敵にとっても、大きなリスクを伴うはずだ」レオンは言った。「地図にない道を、大軍で進むのは、補給の面でも、極めて困難なはずだ」


「つまり?」


「無理をすれば、敵自身が、自滅する可能性もある」レオンは、冷静に言った。「俺たちが、すべきことは、この狭隘な区間を、確実に守り抜きながら、敵の消耗を、待つことだ」


 アレクシスは、その分析に、頷いた。


「焦らず、持久戦に、持ち込む、ということだな」


「南方戦線で、学んだことだ」レオンは、小さく笑った。「無理な進軍は、必ず、綻びを生む」


 二人は、改めて、この狭隘な地形での、持久戦の構えを、固めていった。限られた物資を、効率的に配分し、兵士たちの士気を、維持し続ける——それは、これまでの、すべての経験を活かした、確かな戦い方だった。


 険しい山々に囲まれた、この狭い戦場で、レオンとアレクシスの、粘り強い抵抗が、続けられていった。


 敵の大軍を相手に、少数精鋭での、この持久戦——それが、果たして、戦争全体の行方を、どう左右していくのか。まだ、その答えは、見えていなかった。


 だが、レオンの中には、これまでの、すべての経験から培われた、確かな自信があった。


 (焦らず、着実に。それが、俺たちのやり方だ)


 東方の険しい山々の中、レオンとアレクシスの戦いは、これまでとは違う、新たな局面へと、着実に進み続けていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。