第94話 敵の出方
輸送隊の無力化から三日後、レオンたちが構築した中継地点の防御陣地に、新たな動きがあった。
「敵の偵察部隊、こちらの陣地を、探っているようです」
見張りからの報告に、レオンは、すぐに、警戒を強めた。
「本格的な反撃が、来るかもしれないな」
「どう対応する」ハーケンが、尋ねた。
「まず、陣地の強化を急ごう」レオンは言った。「それと——敵の本隊の動きも、改めて、確認する必要がある」
レオンは、少数の偵察隊を、さらに周辺へ派遣し、敵の動向を、注意深く探ることにした。数日後、戻ってきた偵察隊から、重要な情報がもたらされた。
「敵本隊、進軍を、一時停止しているようです」
「停止、というのは?」
「補給の遅れにより、これ以上の進軍が、困難になっている可能性があります」偵察隊の報告は、レオンの予測を、裏付けるものだった。
「やはり、補給線の寸断が、効いているな」レオンは、確かな手応えを感じた。
この情報は、すぐに、アレクシスのいる本隊へと伝えられた。
「敵が、足止めされている今のうちに、防衛線を、さらに固めよう」アレクシスからの返答には、そう記されていた。
レオンは、この膠着状態を、好機と捉えた。
「敵が動けない間に、こちらの防御体制を、より強固にする」レオンは、部下たちに指示を出した。「同時に、補給路の寸断を、維持し続ける必要がある」
だが、この膠着状態は、長くは続かなかった。
「敵、別ルートからの、迂回進軍を、開始した模様です」
新たな報告に、レオンは、緊張を新たにした。
「別ルート、というのは」
「南側の、より険しい山道を、通ろうとしているようです」
レオンは、すぐに、地図を確認した。
「あのルートは……確かに、通行は可能だが、相当な困難を伴うはずだ」レオンは、険しい表情で言った。「それでも、進もうとするとは」
「よほど、中央からの圧力が、強いんだろうな」ハーケンが、推測するように言った。
レオンは、この新たな動きに、改めて、対応を検討し始めた。
「南側のルート、こちらの監視が、手薄になっている」レオンは言った。「このままでは、敵の迂回を、許してしまう」
「部隊を、分散させるべきか」
「それは、危険だ」レオンは、慎重に首を振った。「少数精鋭の、今の部隊を、さらに分散させれば、各個撃破される恐れがある」
レオンは、しばらく、地図を見つめながら、考えを巡らせた。
「……本隊に、応援を、要請しよう」レオンは、ようやく、結論を出した。「南側のルートを、押さえるには、こちらの戦力だけでは、不十分だ」
この要請は、すぐに、アレクシスの本隊へと伝えられた。
「南側への、増援部隊を、編成する」アレクシスからの返答は、迅速だった。「私自身が、率いて向かう」
数日後、アレクシスが率いる増援部隊が、到着した。
「久しぶりだな、この展開」アレクシスは、到着するなり、レオンにそう言った。
「お前が来てくれて、助かる」レオンは、素直に言った。「南側のルート、地形的に、俺一人では、対応しきれない」
「お前の、兵站の分析と、私の、部隊運用——これまで通り、組み合わせよう」
二人は、すぐに、南側ルートへの対応を、具体的に検討し始めた。
「このルート、確かに険しいが、いくつかの、狭隘な区間がある」レオンは、地図を示しながら言った。「ここを押さえれば、敵の進軍を、大きく制限できるはずだ」
「兵力の配置は?」
「少数精鋭を、要所に配置し、敵の進軍速度を、徹底的に削ぐ」レオンは言った。「正面からの、大規模な衝突は、避けるべきだ」
「了解した」アレクシスは、頷いた。「部隊の指揮は、私が執る。お前は、引き続き、兵站と地形の分析を」
役割分担を明確にした、二人の連携——それは、士官学校時代から、南方戦線を経て、磨き上げられてきた、確かな信頼関係の表れだった。
南側の険しい山道に、レオンとアレクシスの部隊が、慎重に、展開していった。敵の迂回進軍を、どう食い止めるか——東方での戦い、その新たな局面が、今、始まろうとしていた。
険しい山々に囲まれた戦場で、レオンとアレクシスの、これまでの経験すべてを賭けた戦いが、静かに、しかし確実に、幕を開けていた。




