表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

PR
5/6

第五話 契約の延長

六ヶ月目の夜に、シュトラウスが「一つ聞いていいか」と言った。


夕食後の書庫で、リリアナは少し驚いて顔を上げた。彼が先に話しかけてくることは珍しい。


「どうぞ」


「あなたは、社交界で以前より楽になったか」


真剣な目だった。情報収集でも世間話でもなく、ただ知りたいという種類の目だ。


「楽になりました」とリリアナは正直に答えた。「以前は、毎回覚悟して出かけていました。今は、それが少し和らいでいます」


「私との婚約のせいで、制限されていることはないか」


「閣下と婚約したことで不利益を受けたことは、今のところありません」


「今のところ、と言った」


リリアナは少し笑った。「一年後に解消すれば、また変わるかもしれません。でもそれは契約通りのことですから、不満はありません」


シュトラウスはリリアナを見ていた。長い沈黙だった。


「あなたは、この契約を延長する気はないか」


リリアナは一瞬、息が止まった。


「閣下は」と彼女は慎重に言った。「延長を望まれているのですか」


「私は」と彼は言った。そこで少し止まった。彼が言葉を探すのを、リリアナは待った。「この半年で、初めて、帰宅することが苦ではなくなった。その理由があなたにあるなら、それを手放したくないと思っている」


告白、とは少し違う。でも、シュトラウスという人間にとって、これが精一杯に近いものだとリリアナにはわかった。


リナの前世の感覚が囁いた。この人は、ずっと一人で静かにいた人だ。誰かがいることに慣れていない。ただ、慣れようとしている。


「延長しましょう」とリリアナは言った。「条件の再交渉は?」


シュトラウスが、かすかに目を細めた。驚いているのか、それとも別の何かなのか。


「条件は、あなたが決めていい」


「では一つ。夕食後の書庫は、このまま続けること」


「……それだけか」


「今のところは」


今度こそ、シュトラウスの表情が、ほんのわずかに動いた。口元が、ほぼ見えない程度に、緩んだ。


「承諾する」と彼は言った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ