5話
男の名は路渋谷というらしい。車に乗り込んでからは旧防衛省基地でのルールやルーティーンを説明して貰っている。
「……以上が旧防衛省基地のルールだ。何か他に質問は?」
「あの、路渋谷さんもリベラトルの隊員ってことで合っていますか?」
「ああ、俺も隊員だ。ただ、ゲートに赴く事は殆ど無いがな。」
「え?」
「これでも癒し枠でやらせて貰っている。」
え?その顔で?
「これでも回復術師の筆頭だからな。」
ああ、そっちか。と勝手に頷き改めて驚く。
「筆頭って……路渋谷さん、ランクはいくつなんですか……?」
リベラトルは階級制度が取り入れられており、銅、銀、金、白銀、金剛、管理人の六つのランクがある。
ちなみに俺は金。強さでいくと銅~銀がビギナーやある程度の経験者、金は銅~銀よりは強い…みたいな位置付けだ。白銀や金剛クラスになってくると戦いの規模が異次元だったりと色々すごい。管理人は…まぁ、……。
「俺はお前の1個上の白銀ランクだ。」
「し、白銀!?」
本当にすごい人じゃないか……。ランク差は1つ違うだけで天と地程の差がある。なんだかんだ俺は金ランクだし……などと思っていたが、白銀ランクなんて1つの基地に一人もいれば十分なレベルだ。
そんなすごい人を新人出迎えの運転手に使うなんて……流石に前線基地と言われている旧防衛省なだけある。
「そろそろ着く。寮の事について少し説明しておこう。」
東京内を走る車は殆どいない。それこそリベラトルの車がたまに通るくらい。だから移動は比較的楽に短時間で済ませられる。
「横須賀基地の寮と同じじゃないんですか?」
「ああ、少し特殊な制度がいくつかある。何も知らずに行って酷い目に遭った奴を何人も見た。」
「そ、そんな酷いんですか?」
俺は後ろの座席に座っているので路渋谷さんの顔を直接見ている訳ではないが、何となく苦い顔をしている気がする。
「朝は4時起きは確実、起きたら七時の朝飯まで訓練場で金剛ランクの人間と戦わされ、朝飯も早い者勝ちで常に取り合い。」
朝飯までで大分酷いな。リベラトルは一応軍隊ではなく組織な訳だが……能力だけに頼っていては駄目ということか。
「昼は訓練場で金剛ランクと再びやりあうか、ゲートに潜ってモンスター狩りをするかのどちらか。モンスター狩りをする場合は監督官がついてタスク分まで狩らないと昼食は無し。夕食までも似たような感じだ。」
白銀ランクが昼飯を懸けて戦うとは……。
「寮については三人部屋になっている」
横須賀基地の寮は二人部屋だった。その分部屋が広いのだろうか?
「部屋には必ず金剛ランクか白銀ランクが部屋長としている。ちなみにゲートに潜る時は必ずこの三人で行かなければいけない。」
「それと……」
「それと?」
「部屋長の命令は絶対。これだけは覚えておけ。これさえ覚えておけばなんとかなる。」
「は、はあ」
いまいちよく分からないが、ここまで言うということは何か深い意味があるのだろう。ここは大人しく従っておこう。
「……着いたぞ」
「ありがとうございました。」
「せいぜい頑張れ……死なない程度にな。」
車のドアが自動で空いたので俺は出る。路渋谷さんは車と共に駐車場がある方へ行ってしまった。ここからは完全に自分一人でやらなければ。




