4話
「それで……その突如現れた魔大狼を君が単独で討伐したと言うことかね?」
「はい、そうです」
「わ、私もしっかりこの目で確認しました。あれは確実に魔大狼です!」
近藤さんが助け船を入れてくれる。確かに疑われても仕方がない。
「いや、私は何も君達を疑っている訳じゃないさ。ただ、前例が無いからね……確認が必要なんだ。分かってくれるかい?」
「はい、小鷹支部長」
小鷹支部長、俺達三人が所属していたリベラトル神奈川県横須賀港支部の支部長。
「近藤君は討伐の瞬間を見た訳じゃないんだね?」
「……はい。ですが!」
「分かっているさ、魔大狼のドロップアイテムがある時点で嘘ではないだろうからね……。」
なら、何のために俺達を呼んだんだ……?
「それで古矢君、君には旧防衛省に行ってもらう」
「……え?」
今、なんて……?
「古矢君。正直に言おう……私は君に可能性を感じている。」
「で、でも旧防衛省って、」
「ああ、だから私は君を我が支部の選抜員として推薦する。」
旧防衛省……リベラトル中央病院の次にゲートに近く、有事の際にいち速く鎮圧等を行うために最精鋭の舞台が集められている。
ゲートの新階層探索の際に指揮を取っているのは大抵ここの人間だ。
「……了解です。最善を尽くします。」
「うむ、期待しているよ。」
恐らく断る事はできなかっただろうし、断る方が不自然だ。だが、やはり旧防衛省となると俺の能力が露見する可能性が高まる。
……今まで以上にうまくやらないとだな
「や、やったじゃないか!」
支部長室を出た瞬間近藤さんにそう言われ、少し驚く。
「ええ、はい。そうですね……。」
「どうしたんだい?旧防衛省への選抜員に選ばれたんだよ?」
近藤さんがこんなに興奮しているのも無理ない。旧防衛省は先ほど言った通り、最精鋭が集まっている。それは戦力に限らず、装備や技術も最精鋭だ。
俺達みたいな家族や知り合いをゲートで失った奴からすれば、常に戦いの最前線でゲートの真相に近づけるこれと無いチャンス。
「いえ、少しびっくりしすぎて……」
「ああ、それはすまない。まぁ、元気でね。あそこは相当ハードらしいから。」
「らしいですね……」
俺は寮で近藤さんと別れ、自分の部屋に戻る。
「ここも寂しくなるな……」
どんな時でも暑苦しく騒がしかった轍は、傷は完治したのに目を覚まさない"眠り姫"と化している。
俺は俺で明日にはここを立って旧防衛省行きだし、荷造りをして時間を潰そうにも俺の荷物は先程全て運び出されてしまった。
「近藤さんの部屋行くか……」
近藤さんの部屋は俺達の2個隣の部屋で一番奥にある角部屋だ。
特に何か用があった訳でもなく、何となくだ。何となく、向かった。
「グっ、……くそッ…」
近藤さんの部屋の扉が少しだけ開いており、その僅かな隙間から声が聞こえてきた。
「こ、近藤さ……」
声を掛けようと思って止める。近藤さんはどんな時でも笑顔だった。だからこそ、今俺があの人の前に出れば、あの人は泣くのを止めて笑うだろう。
……無理はさせたくない
寮棟から出て、看護室へ歩を進める。轍に会いに行くためだ。
既に完治していて外傷は無いので轍はここの看護室に移された。なぜ起きないのかは未だに分からないし、分かったところで俺にはどうにもできないだろう。
「……よう、轍。元気…そうではないよな。」
一人でそんなことを言って笑うが、当然返事は無い。
「近藤さん、心配してたぞ……さっさと起きろよ。」
そう言い残し、看護室を出た。
「お前が古矢だな?」
看護室を出た瞬間話しかけられて驚く。話し方や身なりから俺より上の人間だと気付き、急いで返事する。
「は、はい。俺が古矢です。」
全身黒のスーツを着たその男に俺は連れられて車に乗った。黒塗りスモーク張りのセダンだ。




