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捕まった酔っ払い

神さまが引き起こした事故によって死亡した私たちは、別の世界に転生することになった。

小さな(体格の)女の子になりたいって要望を伝えたのに、一寸法師なみに(サイズの)小さな人間に転生させられてしまった。

次々と襲いかかって来る虫や小動物を撃退し、鬼も撃退し、苦労の末に手にした打出の小槌は、呪いと引き換えに一時的に願いが叶うという、質の悪いレプリカだった。ぴえん。

現在、繁華街のバーのカウンターの1番奥で、マスターと意気投合してウィスキーを楽しんでいます。


ウィスキーはうまいけど、絶対に転生やり直してもらうんだから!


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


中の領地の都の繁華街にあるバーで、ユイは氷の彫刻をしてマスターにウィスキーを奢ってもらった。

意気投合した2人はカウンターの端っこ、店の1番奥で呑んでいる。


真面目に何年も下働きをしていた不器用な若いバーテンダーは、この不思議な小さくて迷惑な訪問者によって、突然力量を試される機会に恵まれた。


いつも以上に服装を綺麗に整え、くすんだように鈍く光るブラウンの髪を丁寧に後ろに流すようにまとめて、カウンターの真ん中に立った。


(チャンスはチャンスだ)


キッカケはあの妙な小人だが、任せてもいいかもしれないと思ってくれているから、任せられたんだ。

ラモンはそう自分を鼓舞していた。


カランカランとドアベルが鳴り、反射で「いっらしゃいませ」と言うが、ラモンの声はいつもより少し声が上ずっていた。


今日最初のお客は、幸か不幸か彼の声のうわずりに気づいてしまう人物だった。


「なんでカウンターの真ん中にいるの?」


彼と近い年齢のあかね色のショートカットヘアの女性は、そう言いながら、若いバーテンダーの位置に合わせて、カウンターのど真ん中に席に座った。


「いっらしゃい。ちょっと…任された。いつもの?」


お絞りを出しながら彼女に答え、注文も尋ねた。


「うん、いつもの。へー。とうとう任せてももらえる日が来たんだ。それでちょっと緊張しているわけね」


と、メイリンは悪戯っぽく笑った。

ラモンと幼馴染みの彼女は、仕事上がりにここに寄って、ラモンの顔を見て一杯飲んで家に帰るのが習慣になっていた。

いつもはカウンターの1番奥の席に座る。そこでラモンが作ったジンライムを飲む。

もちろんマスターのジンライムの方が美味いが、最近はだいぶマスターのジンライムに迫って来ている。

初めの頃はひどかったが、ひどい頃から指名して作ってもらっている。

ラモンに作って欲しい。あるいはラモンでもいいという客はまだ少ない。

だから店でお酒を作る機会を与えてくれる彼女のことをラモンもマスターもありがたいと思っている。


ひとしきり、幼馴染の晴れ姿を鑑賞したメイリンは、ほかの客が座りやすいように、奥のカウンターへ移動した。

一番奥の席は、今日はなぜかフルーツで埋まっているので、奥から二番目に座った。


カランカラン、カランカラン、カランカラン、三人続けて入ってきた。

常連の男たちだ。

メイリン同様に、ラモンをいじり、いつもの酒を注文する。

ラモンは緊張しながら丁寧に酒を作る。

マスターには及ばねぇがと前置きしつつ、ラモンの作った酒を褒める。


一連の流れを心配そうにみていたメイリンが安堵して、目線でラモンに「good job」を送り、グラスを掲げてお代わりを注文する。

そして、何気なく見た一番奥の席で、驚くべき光景を目にした。


カランカラン、カランカラン


今夜も店は賑わって来た。

お客さんが次々と入ってきて、見習いアルバイトの子たちも走って出勤してきた。

「あれ〜ラモンさん、メインすか?」「ぬお」

などと言いながら、すぐに準備してホールに出ていった。


実は今、開店時間だったりする。

オープンまで待てない呑み助たちは、カウンター限定でおつまみ無しというルールで先乗りしているのだ。

見習いたちが、2人以上の客をテーブル席へ誘導していく。


カランカラン、カランカラン、少し身なりのいい2人組が入って来た。

生憎、テーブルが一杯だった。


「カウンターでよろしいでしょうか?」


見習い店員の案内に不満そうな2人。


「カウンターでおしのぎ頂いて、テーブル席が空いたらご案内いたしましょうか?」


と見習い店員が提案すると、2人は納得してカウンターの席に腰掛けた。

案内した見習い店員は、もう1人の見習い店員にこのことを連絡した。


メイリンの席から一つ空けた隣に座った2人は、おしぼりで顔を拭き、ボソボソと内緒話をしながら、酒を注文した。

まもなく出て来た酒はなかなかのものだった。


「いい店だと聞いて来たが、」

「うむ、美味いな」


メイリンはその言葉を聞いて「ニッ」と笑った。

マスターの噂を聞いて初めて来た客から、この言葉を引き出して満足させられたなら、ラモンは頑張っている。


メイリンは2人組とは反対側を見た。

さっきから変な光景がそこにはある。

マスターが親指くらいの女の子と丸氷を競って作っている。

どっちが作った方が丸いかを比べて、ウィスキーを呑み交わしている。そしてウィスキーの水割りを互いに作って、どっちの水割りが美味いか比べている。


メイリンは自分が狂ったのかマスターが狂ったのか、1分ほど悩んだあと、もう一度見て現実だと認識した。

あのマスターが店をほったらかしている理由を理解した。


(こんな面白いこと他にないわ)


メイリンが面白くて眺めていると、女の子と同じくらいの大きさの猫が現れた。

猫は女の子に自分の体を擦り擦りしている。

メイリンは猫の頭になんか載ってるのを発見した。

そして、その更に小さな人が、女の子に文句を言っている。

なぜかそれが聞き取れてしまった。

どうやら女の子は、約束ほったらかして呑んでたみたいだ。

思わずメイリンとマスターは笑ってしまった。


良い身なりの2人組は、テーブルが空いたという案内を受けたが、カウンターのままでいいと言って、ラモンに話しかけながら、楽しそうに飲んでいる。

2人の声のボリュームが段々大きくなり、メイリンにも内容が聞き取れるようになってしまった。


「…というわけで、俺は事前に全部知ってて、鬼の頭領と会った訳で、」


「うんうん、それで」


「こっちが何にも知らないと思って、出鱈目を言ってきたから、言ってやったんだよ。『生贄を回収に行った鬼が裏切ったんだろ』って」


「言ってやったぁ! イェーイ!」


男たちが気分良く大声でノリノリで話していることに怪訝な顔をする客も出て来た。

今、入って来た客も驚いていた。


「それでそれで?」


「『いや、そんなことは』って狼狽えながら否定するからさ、『黒鬼のレオナルドが頭領殴り倒して、生贄を連れて逃げちゃったんだろ』って言ってやったんだ」


「おおお。強烈!そんで」


「『俺は自分の情報網で、ヤツらが今どこにいるかも知ってる。ヤツらの潜伏場所と、お前ら鬼が如何に使えないかを手紙に書いて、貢物と一緒に届けといた』って言ったらさぁ」


「言ったらぁ?」


「ガタガタ震えて、帰ったよ」


「ひゃああ! いいねいいね。ヤツらを匿ってる東と、失敗鬼の南が空けば、俺ら兄弟でそれぞれ治めさせてもらおうぜ」


「だな! かぁあ、酒が美味え」


「美味え!」


「「乾杯!」」


2人にさっき入って来た客が話しかけた。


「ご機嫌だな。一杯奢らせてくれ」


そう言って2人の肩を抱いた。2人が振り返ると、3人の鬼がいた。左右に頭領と副官、真ん中に女の鬼。


「酒を奢るからさ、ちょっと、話を詳しく聞かせて貰えるかな?」


副官がラモンに言って、2人のお会計をしてしまった。


「さ、行こうか」


2人を拘束してアイリスは言った。


「な、なんだよ」


2人は抵抗する。抵抗は成功には程遠いが、口先は抵抗している。


「お前らが出した手紙をお読みになって、連れて来いって仰ってるんだよ。皆まで言わすな」


騒ぎの内容をレイジから聞いたユイは、マスターの頬にキスして、ゆっくりと


「また来るね」


と言ってアイリスたちを追いかけた。

読んでいただいてありがとうございます。

新しいお話を追加するとグッとアクセスが上がっておりまして、結構読んでもらえてるんだぁ。と、ニヤニヤしとります。

次話もよろしくお願いいたします。

よければ、公開ブックマーク登録と評価をよろしくお願いいたします。

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