アイリス
神さまが引き起こした事故によって死亡した私たちは、別の世界に転生することになった。
小さな(体格の)女の子になりたいって要望を伝えたのに、一寸法師なみに(サイズの)小さな人間に転生させられてしまった。
次々と襲いかかって来る虫や小動物を撃退し、偶然に遭遇した鬼との死闘も制した。
それらの苦労の末に手にした打出の小槌は、呪いと引き換えに一時的に願いが叶うという、質の悪いレプリカだった。
鬼の集団20人との戦いに勝利し、鬼の里の真のリーダー「アイリス」と対峙する。
イヤイヤイヤ、冒険したくないよ!絶対に転生やり直してもらうんだから!
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鬼の頭領の危機を察知して、鬼の里のリーダー「アイリス」が駆けつけた。
10人あまりの部下を引き連れている。
昨夜、無断で打出の小槌を拝借した時に寝姿と対面しているが、その姿は皺の深い老婆であるが、強者であることが一目でわかる。
女性でありながら歴戦の古豪という雰囲気である。
改めて全ての鬼を比べて見ると、レオナルドだけがアイリスを含む他の鬼とでは見た目の印象が違う。
アイリスは赤鬼の中でもピンクがかった肌をしており、
体毛は銀色で毛量が多い
他の鬼も赤、青、黒、緑といるがどれも明度が高く、体毛は全員が銀色で毛深く、毛量が多い。
だがレオナルドにはそうしたアイリスの面影がない。
闇では見えなくなるほどの漆黒の肌で、毛は金色で全体的に毛量が少ない。
よほど父親に遺伝子が強いか、アイリスの血を継いでいないかのどちらかだが、ユイには後者の印象が強い。
さて、ユイたちは生贄の「小梅」を渡すつもりがない。
対して、アイリスたちは一刻も早く、神さまに生贄を届けなければならない。
だから、回収に行ったレオナルドが遅いとなれば、頭領が部下を引き連れて駆けつけたし、その頭領が危機だとなれば里のトップであるアイリスが自ら駆けつけたのである。
そのアイリスであるが、彼女の目にはこの状況がどう映ったのか。
頭領と19人の部下はそのことごとくが縛り上げられて、足を折られている。
頭領と副官はコッチを見て助かったという顔をしている。
そして、生贄を回収に行ったはずのレオナルド。
何かあったかと思われたが、健在であり生贄と思われる少女と一緒にいる。
そして頭領たちから少し離れた位置で、生贄を守るように立っている。
(敵は何処だ?)
そう、この状況、彼女の目にはレオナルドが犯人には見えないのである。
レオナルドは「何者か」に襲われ、生贄を守りつつ奮戦して遅れた。
頭領たちはレオナルド達を守ろうと、その「何者か」に戦いを挑み敗北した。
「何者か」は見えないが、この20人が負けた相手である。
この状況でやるべきことは、全員を無事に里に帰す撤退戦だとアイリスは判断した。
「速やかに里まで撤退する」
アイリスはそう宣言した。
「歩けない者もいるが、全員で帰る。歩ける者が協力して移動を開始しろ。私が殿を務める。ランスロット、
お前が先頭に立て。出来るな?」
「はいですだ」
頭領が返事をした。
(頭領、ランスロットって名前だったの?)
ユイたちは驚いたが、そんなこと知らないアイリスは続けて指示を飛ばす。
「レオナルド、生贄に何かあってはいかん。お前は生贄を連れて全速力で逃げろ。なに、私が殿なのだ。後ろは気にしなくていい。行け!」
一瞬、この場に元々いた者たちはポカンとしたが、いち早くこの誤解を理解したレイジが、レオナルドに走るように指示をだした。
レオナルドは小梅を脇に抱えて、背負子を拾って、走り始めた。
次にフリーズから復帰したのは頭領と副官。
事態を把握出来ていないが、間違いが起きていることだけはわかった2人はアイリスに訴える。
「ダメですだ!アイリスさま」
「よい、お前らはよくやった。殿は私に任せて、早く撤退しろ」
アイリスは頭領と副官が責任感から殿を申し出ていると受け取ってしまって、いい部下を持ったと、ちょっと気分良くなってしまって、聞く耳がなくなってしまった。
存在しない「何者か」の追撃を警戒しながら、撤退を始めた。
何事もなく30分余り経った時、アイリスは負傷している鬼に聞いた。
「お前らを負かした相手はどんな姿をしておった?」
負傷した鬼は顔も心も蒼白となった。
そう、レオナルドが敵だと今更言えば、アイリスの怒りをかう。
本来これは頭領の役回りだ。だが運悪く1番後ろにいた自分に回って来てしまった。
しかし答えないわけにもいかないので、ブルブル震えながら応え始めた
「は、はい、…おいたちが負けたのは…」
アイリスはその必死な姿を見て、
(心を折られるほどの強敵に負けたのか、それでも私に報告しようとする忠誠心、素晴らしい部下を持った)
と、またしても斜めに解釈して
「よい。すまなかった」
と言い、またしても真実を知る機会を失ってしまった。
その間、ユイ一行はどんどん逃げていた。
もう、追いつくことは出来ないだろう。
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レオナルドは全力で走っていた。
レイジがホイホイ体力を回復させるので、ずっと全力で走っていてえらい移動距離になっている。
里に向かうように見せかけて、途中で方向を変えて、東の地の領地に向かっていた。
「打出の小槌を返すタイミングなくしちゃったね」
ユイが言った。
レイジが「そうだな」と答えつつレオナルドに聞いた。
「レオナルド、お前はアイリスの子孫じゃないだろ?」
「そうですだ。それに、アイリスがあんな年寄りってことも、子供がいることも知りませんでしただ」
「やっぱりな」
「なにが?」
「あそこにいた30人の鬼たちは、アイリスの容姿に驚いてなかったんだよ。つまり、」
「元々知っていた?」
「そう。でもアイリスの子孫じゃないレオナルドはそのことを知らず、騙されて惚れてた」
「里の鬼全員で騙してたってこと? 何のために?」
「まあ、種馬だな」
「ほんとですだか? その話」
「証拠はないけどね。でもさ、お前だけアイリスが婆だと知らなかった。里にいる全員がアイリスの子孫だとお前だけ知らなかった。お前だけがアイリスの子孫じゃない。お前だけアイリスに惚れてた…」
「「ああ…」」
「じゃあこの打出の小槌って」
「それ使って、歴代の種馬を騙してきたんじゃないかな」
「「うわぁ」」
気持ち悪い物を想像してしまった一行は、時折、道の端に嫌悪感を吐いて、東の地に進んだ。
一行は東の地の都に到着し、目立つレオナルドを送還し、見かけ上は小梅1人で街に入った。
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