小梅という名の少女
神さまが引き起こした事故によって死亡した私たちは、別の世界に転生することになった。
小さな(体格の)女の子になりたいって要望を伝えたのに、一寸法師なみに(サイズの)小さな人間に転生させられてしまった。
次々と襲いかかって来る虫や小動物を撃退し、偶然に遭遇した鬼との死闘も制した。あれ?楽しんでる?
イヤイヤイヤ、絶対に転生やり直してもらうんだから!
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彼女の人生はこの夜、大きく変わった。
それまでの人生は控えめに言って「坂道を転がるように加速度的に不幸へ向かっていた」状態であった。
彼女の何代か前は、ここ、北の地の領主だったそうだが、その地位を金に困って分家に譲った。
勢いを増す元分家とは対照的に、彼女の家は絵に描いたように没落していった。それもそのはずで、彼女の家の没落は元分家が描いたシナリオ通りに罠に嵌っていったからだった。
彼女の父の代になるころには、日々食うに困る状態であった。東の地の領主が何かと援助をしてくれているお陰で、なんとか生活が維持されていた。
しかしそれも、彼女が7歳の時に、彼女の父が謀殺されると、もう歯止めが効かなかった。
あっという間に土地屋敷も家財道具も失い、母娘で元分家の領主の世話になった。
表向きは元本家の忘形見を世話している美談だが、実際は膨大な借金のカタとしての住込み女中だった。
その母も娘が9歳になる前に亡くなると、彼女にはこの屋敷の下女として働く以外に選択肢はなかった。
元分家の領主は、本家をほぼ完全に滅ぼしたことに気を大きくした。
そして、決して無礼を働いてはいけない所を相手に舐めたマネをした。
あろうことか、この地を治める神への御供物を誤魔化したのだ。
領主の地位を簒奪したただの成り上がりだったために、領主として必要な教育をまともに受けていなかったのだ。
本家は無能なボンクラだが、分家は常識のないチンピラだった。
そのチンピラは自分の不手際を「本家の最後の一人が残っていることが縁起が悪いんだ」と強弁して、責任を全て彼女に擦りつけた。
そして彼女を生贄にすることにして、領民と彼女を置いて、逃げてしまった。
この時点で彼女の命運は尽きたに等しい。
しかし、ここで彼女に少しの幸運が起きる。
生贄の回収を任された鬼が4日も最寄り道をしたのだ。
そしてそれが幸運の連鎖に繋がる。屋敷の敷地内にユイ、マサムネ、レイジが転生して来たのである。
こうして彼女は死の淵から救い出され、彼女の人生のベクトルは大きく向きを変える事になる。
彼女は神々しい光で命をレイジに助けられた時、心の底から感謝とレイジに対する信仰にも似た尊敬をした。
(この方は神さまだ)
姿が自分の年齢と近いことから女としてのドキドキが混じることになった。
「黒鬼を君の召喚獣にしてくれないか?」
そんな彼女だが、レイジにされたこのお願いにはいささか驚いた。
鬼と召喚獣契約を交わし、鬼の主人になれというのだ。
しかもこの提案をレイジにした銀の鷹は神さまの使いだという。
そしてレイジは神さま繋がりはあるものの、ちょっと不幸なただの人間だということも知った。
(レイジさまが人間ならば、わたしにもチャンスがある)
と、一瞬だけ考えたが、彼女はすぐにその考えを正した。
(あんな凄い魔法を使えるレイジさまがただの人間のわけがない。自分にチャンスがあるなどと畏れおおいことだ)
と忘れることにした。
彼女は言われた通りに召喚獣契約を交わし、レオナルドの主人となった。
また、レイジたちのパーティーメンバーにもなった。
「レイジさまの指示に従ってパーティーメンバーを守ってください」
と彼女はレオナルドに命令した。
「わかっただ」
「ありがとう」
レオナルドにとって、今まで主人は頭領だった。
同じ種族としての仲間意識はあるが、基本的に頭領はレオナルドには面倒ごとを命令するだけであった。
何かをお願いされ、ありがとうと言ってくる主人は初めてだった。
戦いに敗れ、強制的に押し付けられた主従関係ではあるが、レオナルドの心には、この幼い主人に対しての、温かいものが生まれたようであった。
小梅にとって最初の部下が出来た。
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レイジは、中の地の領主の都を避けて南に進み、南の地を目指すべきだと主張をしたが、レオナルドが、中の地の領主の屋敷で一泊しようと、しつこく言い張った結果
「先っぽの切り込み増やすよ? あんまり逆らうと刷毛みたいになっちゃうぞ?」
と、ユイが楽しそうに呟き、レオナルドは股間を手で隠して、大量の冷や汗を流すことになった。
レイジも股間を隠し、小梅は不思議そうにレイジを見た。
一行は都を迂回して、南へ移動した。ほぼ丸1日で北の地から南の地まで移動したことになる。
レイジは南の地にある鬼の里を見張ることができる位置にキャンプを貼ることに決めた。
そこで2日程粘ると、20人ほどの鬼の部隊が北へ出発するのを見送ることが出来た。
つまり、今、鬼の里は手薄ということになる。
レオナルドによると、部隊を率いていたのは、この里の棟梁らしい。理想的な展開である。
一行は今夜、鬼の里に忍び込んで打出の小槌を拝借することにした。
盗むわけじゃない。ちょっと借りて、用事が済んだら返すだけ。
とユイは心の中で言い訳した。
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