怪盗レオナルド参上
神さまが引き起こした事故によって死亡した私たちは、別の世界に転生することになった。
小さな(体格の)女の子になりたいって要望を伝えたのに、一寸法師なみに(サイズの)小さな人間に転生させられてしまった。
次々と襲いかかって来る虫や小動物を撃退し、偶然に遭遇した鬼との死闘も制した。あれ?楽しんでる?
イヤイヤイヤ、絶対に転生やり直してもらうんだから!
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レオナルドの話によると、南の地の鬼の里には、戦士はおよそ30人いるそうだ。
そのうち、北の領地に天罰という名の嫌がらせをしていたのが5人、そして20人が先程、里を出た。つまり残存戦力は5人。
こっそり忍び込んで打出の小槌を拝借する予定ではあるが、敵の人数は少ない方がいいに決まっている。
2日待って正解である。レイジの手柄だ。
夜、小梅とマサムネをキャンプに残し、レオナルドが里に侵入する。
レオナルドは本来「侵入」ではなく「帰還」なのだが、ユイの奴隷・兼・小梅の召喚獣となった今は、紛れもなく鬼の里の敵対勢力である。
レオナルドの左右の肩にはユイとレイジが乗っている。
「レオナルド、その格好で行く気なの?」
レオナルドは白いマントと白い帽子をつけている。
北の領主の屋敷から拝借きた物の中から、それっぽい物を小梅に用意してもらったらしい。
「泥棒と言えばこれだって聞いただ」
「だれがそんなことを…」
「喋る銀色の鳥に聞いただ」
ユイは盛大にため息をついて怒り、レイジは驚いたあと笑った。
ユイは寝ている間に転生の神のアバターが訪ねてきていたことをレイジから説明をうけた。
「闇に紛れて行動するのに、目立ってどうすんのよ?」
「なんだ! そっちだっただか」
「そっち?」
レオナルドは「わかってるだ」と言いながら、2人を肩から下ろして、ゴソゴソやっている。
「出来ただ」
筋骨隆々の黒鬼が全身レオタードに赤色の腰巻。
「…誰に教えてもらったの? どこにそんな物あったの?」
「銀の鳥に教えてもらっただ。これは屋敷から貰ってきた物の中にあっただ。それより予告状はどうするだ?」
ユイは「呆れてものも言いたくないので、あとよろしく」と、レイジにボディランゲージで伝えた。
レイジは笑いながら、鬼の里で1番目立たないのは鬼だと、教えた。
「おお、真理だなだ。コレは今度使うだ」
レオナルドは普段の姿になった。裸に腰巻だ。予告状についても説明されて納得した。
寝静まっている里の中を進む。
頭領の家の離れでアイリスはいつも寝ている。
レオナルドは、何度かアイリスに夜這いを仕掛けており、毎回、頭領に捕まっているが、寝室の前までは何度も行っている。
いつものように敷地の柵を乗り越えて、母屋の脇を抜けて裏庭に出る。裏庭の一角に離れがある。
静かにドアを開ける。
今回、頭領が留守のため、初めてアイリスの使ってる離れへの侵入に成功した。
ここからはレオナルドにとって未体験ゾーンである。
慎重に様子を探りながら進む。
短い廊下の突き当たりのドアを開ける。寝室だ。
アイリスは掛け布団に潜り込んで寝ている。
顔は見えない。
アイリスの室内で打出の小槌を探すのが現在のミッションなのだが、レオナルドはおかしな方向に興奮している。長年、抱きたいと思っていた相手であり、今日は邪魔もいないのだ。ハッキリ言って暴走寸前だ。
今にもアイリスのベッドに潜り込みそうだ。
(レオナルド、先に打出の小槌を探しなさい。根元3センチだけ残して竿ちょん切るよ)
(!…はい)
ユイの言葉で少し冷静になったようだ。
気を取り直して、打出の小槌を探す。
暗い中で物を探すのは根気のいる作業だ。
簡単には見つからないと思っていたが、あっさりと、レイジがアイリスの枕元にそれらしいものを発見した。
(レオナルド、あれじゃないか?)
(おお、あれで間違いないだ)
アイリスのベットは壁際に寄せて配置されており、打出の小槌は枕元の壁際側にある。
必然、レイジが打出の小槌を手に取るには、ベッドの反対側から、アイリスに覆い被さる姿勢になる。
レオナルドは、アイリスを起こさないように、最大限に気をつけて、打出の小槌を手にした。
レオナルドの真下には掛け布団1枚を隔ててアイリスがいる。
レオナルドの心拍数がどんどん上がっていく。
(辛抱堪らんですだ)
(ダメだよ。帰るよ)
ユイの制止を聞いて、レオナルドは必死に踏みとどまった。その踏み止まったレオナルドに不孝が襲った。
アイリスが寝返りを打って、掛け布団がはがれたのだ。
この偶然に抵抗するのは不可能だった。
レオナルドはアイリスの寝顔を見てしまった。
(愛しのアイリ…ス?)
レオナルドはアイリスの顔を見て、溢れる感情を抑えることが出来なかった。溢れ出るそれは恐慌だった。
打出の小槌を手にしたレオナルドは、脱兎の如くベッドから離れ、床にへたれこみ、口から洩れそうになる悲鳴を抑えた。
銀髪のアイリスはレオナルドと違い赤鬼である。赤鬼の中でもピンクに近い肌だ。レオナルドにとってその肌の色と年齢の割に少し幼いアイリスの性格がマッチしてなんともかわいらしかったのである。
しかしそこにあったレオナルドが長年惚れていたはずのアイリスの顔は、深い皺が何重にも何重にもに刻まれた、生気の枯れ果てた老婆の顔だった。
(アイリス? ううん? アイリス? 違う? アイリス?)
その顔は、何か所かアイリスの面影が僅かにあるものの、レオナルドの知るアイリスとは違すぎた。
レオナルドは、驚きと悲しみとが混じり合った感情に支配されて、どうにもならなくなっていた。
今にも叫び出しそうである。
レイジは小梅に通じるように、「レオナルドを送還しろ」と念じた。まだパーティーメンバーとして日の浅い小梅に通じるかどうか心配だったが、レオナルドは打出の小槌ごと送還されていった。
実は昨日、ユイたちは、「召喚獣は持っている物ごと送還される」ことを突き止めていた。
レオナルドを送還した時に背負子と荷物ごと送還され、召喚時に背負子と荷物ごと召喚されたことにレイジが気づいたのがきっかけだった。
生き物はだめだが、野菜や米も一緒に送還できた。
腐敗するかどうかは実験できていない。
ともあれ、これで打出の小槌は回収完了である。あとはユイとレイジが自力でキャンプに戻ればよい。
2人は虫の大きさだ。闇に紛れて村を脱出するのに苦はなかった。
途中何人かの鬼の姿を見た。
戦士のようだが、レオナルドより弱そうに見える。
残った者のレベルが低いのだろうか?
気づかれることなく、里を出た。
里をでてから、キャンプまでの間に数回バッタに襲われたが、いずれも撃退できた。
1時間後、キャンプに全員が揃った。
レオナルドも再召喚されている。
アイリスの化け物じみた顔が強烈にトラウマとして残っているようで、すこし挙動不審だ。
「厚化粧の女のすっぴん初めて見たの? 化粧をとったら大体あんな感じだよ」
と、出鱈目をユイが囁いたら、トラウマの対象が広がったらしく、頭を抱えて悩んでしまった。
小梅がレオナルドを慰めて抱きしめていた。
召喚獣と主人で心のつながりが出来たようで何よりである。
ユイはすぐに打出の小槌を試してみたかったが、レイジに言われて、我慢してもう少し鬼の里から離れることにした。
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