ユイ、寝床を確保
神さまが引き起こした事故によって死亡した私たちは、別の世界に転生することになった。
小さな(体格の)女の子になりたいって要望を伝えたのに、一寸法師なみに(サイズの)小さな人間に転生させられてしまった。
次々と襲いかかって来る虫や小動物を撃退し、偶然に遭遇した鬼との死闘も制した。あれ?楽しんでる?
イヤイヤイヤ、絶対に転生やり直してもらうんだから!
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正直な話、ドン引きだ。
眼球を蹴っ飛ばすとかあり得ないから。
それから、ただでさえ裂けてる金玉に爪入れさせるとか、こっちの金玉がヒュッてなるわ。今は女性化してるから玉は無いけど、無くてもヒュッとなるわ。
本当、アイツの刑事志望を無視して、警護任務に就かせた人事は有能だわ。
そういえばアイツ、小学生の頃、すごい幸せそうな顔して俺に意地悪してたな。今思い出した。
なんで俺、こんなやばい奴と一緒に転生しようと思ったんだ?
見た目か? 巨乳か? 性格じゃないよな?
言っとくが、俺は変態じゃないぞ。
てかさっきも酷い目にあったからな。
からかった俺も悪かったが、だからってわざわざ鯉に食わせることはないだろう。
それにしても、鬼に勝っちゃうかね。
すげぇわ。
確かに勝てる要素はあった。
小さいユイに対して鬼は油断しすぎだったし、不器用だった。
もう少し用心深くやられたら勝ち目は無かった。
しかし、その油断につけ込み、いちいちイヤらしい攻撃を重ねて、チャンスに迷わず急所攻撃をやってのけたのが、勝因だろうか。
よくもあんなに迷い無くいけるもんだな。
俺は、びびってダメだ。結局強化魔法と回復に一回行っただけで、心臓がドキドキうるさかった。
あいつ精神タフ過ぎだ。
鬼も完全あいつに屈服したみたいだ。奴隷になるらしいけど、今んとこ口約束だからな、なんか強制力欲しいよな。
隷属魔法とか契約とかないのかな?
召喚獣契約でもいい気がするけどな。
何体いけるんだろう。
そんでもって、実は生け贄だっという小梅。小梅は魂が抜けたような顔してる。緊急事態でみんなてんぱってて忘れられたんじゃなくて、生け贄として故意に置いて行かれたという事実もショックだろうし、今、目の前で展開されてることもショックだろう。普通の反応だな。
あの事件があったからかなぁ。このぐらいの年の女の子を守りたくなっちゃうのは。どうやらユイもそうみたいだし。
さて、小梅が生贄で、それをレオナルドが鬼の頭領の所に連れて行く筈だった。頭領は恐らく「神さま」の所に納品する手筈だったんだろう。
その納品を以って、ここの領主は神さまに許される筈だった。
全員が急いでいるこの状況で、レオナルドは女遊びをしまくって、片道1日の道のりに5日もかけた。帰りも1日と考えれば、鬼の里では既に3日も遅れが出ていることになる。
鬼たちにとって、神さまがどれほどの存在のなのか想像もつかないが、大事な取引相手であることは確かだろう。そこへ3日も納品が遅れていたら、レオナルドの後詰を派遣するはずだ。
明日にでも次の鬼がここに来ちまうんじゃないか?
それに後詰は1名とは限らない。いや、レオナルドに何かあったことを考慮するなら、複数で行動させるだろう。
それにこの領地内には、神の怒りを代行して領地を荒らしている鬼が何体かいるはずだ。
ここにいるのは危険すぎる。
ユイに今後の方針のついて相談すると、面白い話が聞けた。
頭領の娘が打出の小槌を持っているらしい。
ならば、方針は決まりだ。
「私の取り調べもなかなかにでしょ」
などとぬかすので、
「あれは拷問っていうんだぞ。裁判では証拠として採用されない」
と答えたら、
「ここは日本じゃない」
と返してきた。
そうか俺の方が間違っているのか。認識を改めよう。
さて、俺の予測通りに、レオナルドの後始末に団体で動いているとしても、アイリスは集落に残っているだろう。集落に侵入して、打出の小槌を拝借してしまおう。
もし後詰の部隊が派遣されていなかったとしても、どっちにしろ打出の小槌を手に入れる為には集落に行くんだから、今から向かおう。
予想通りに後詰が派遣されていれば、集落はその分だけ手薄になる。
むしろチャンスと考えてよいかもしれない。
もちろん、小梅はおいてはいけない。
ここにいれば生け贄にされてしまう。
小梅に「急いで旅に出るで準備をするように」と、伝えた。
着物が2着だけ持っていたそうで、小梅はそれだけ持ってきた。
なんて不憫な暮らしをしていたんだ、この子は。
レオナルドの身体をある程度治して、小梅の手伝いをさせることにした。
俺がやり方を教えて、二人に米を炊かせて、おにぎりを作らせた。
小梅はお腹が空いていたようで、炊き上がったあたりから、食べたそうにしていたので、出来たばかりのおにぎりを食べるように言った。
驚いて固まっているので、
「お腹が空いているんだろう? 食べていいんだぞ」
ともう一度伝えると、顔を赤くして頷いた。
空腹でかぶりつきそうになってしまうのに、必死に行儀良く食べようとしている姿が可愛いらしかった。
金目のものは領主一家が避難の時に根こそぎ持って行ってしまったので、めぼしいも物はなかったが、着るものはかなり残っていたので、適当に持っていくように言った。
小梅は一生懸命歩きそうな子だが、それでも子供の足で旅をすると、いつ到着するかわからない。
なので、レオナルドを生かしておいて正解だった。
屋敷に背負子もあったし、レオナルドに全部背負ってもらおう。こいつユイの奴隷だしね。
まだ真夜中だが、鬼の里に向けて出発だ。
レオナルドが背負子で水と鍋と米と小梅を背負い、私たちは小梅に抱いてもらった。
気休めに二人に着物と帽子をつけさせた。
見た目には、子供と荷物を背負った男だ。近づけば鬼とわかってしまうが、まあこんなもんだろう。
通りがかりに村を見て、帰り道はあそこに寄るはずだったとレオナルドがぼやいた。
年増だがすごいいい女がいるんだそうだ。
「先っぽが2つに裂けた一物でどうするの?」
とユイが言ったら呻いてた。
「これが終わったらレイジに治させるから、今は我慢しなね」
と言ったら、何度も頷いていた。男として深く同情するが、強制力としての効果は認めざる負えない。
今のところ、痛みや血は止めたけど、形の整復まではしていない。
夜のうちに北の領地と中の領地の境界になっている河に着いた。
一瞬、橋を落とそうとも考えたが、やめておく。
橋からしばらく歩くと、レオナルドがもうすぐ中の地の領主の屋敷だと言った。
そろそろ夜が明けてきたので、鉢合わせしないように、街道から外れて進めと指示した。
「鬼は朝がたは行動しない、朝から昼まで寝るんだ」
とレオナルドが非難めいた口調で言った。
ユイが、サッとレオナルドの耳の横に移動して、
「緊急事態に朝も夜も関係ないだろ?黙ってレイジの言うこと聞いておけ。耳たぶ斬り落とすぞ」
と、しつけをした。
ユイはそのまま小梅の手に戻らずに、小太刀でレオナルドの耳の穴を掃除し始めた。
ひとしきり耳かすを取り除いたら、小梅に言いつけて、小さな濡れ雑巾を用意させた。
でもって、耳の穴を噴き上げていく。
レオナルドは耳が弱いらしく、何度も腰砕けになるが、そのたびに耳の穴の中にいるユイから、
「揺らすなって言ってんだろ。耳斬るぞ」ってしつけられてたらしい。
掃除が終わると、
「レイジ、あと、よろ」
と言って、ユイはレオナルドの耳の穴に身体を入れて、眠り始めた。
マサムネも一緒に耳の穴に入って、ユイの足の間に寝床を確保したようだ。
レオナルドに緊急事態だから寝るなって言ったくせに、ナチュラルにレオナルドの耳の穴で寝るとか…。
ユイたちが寝て、しばらくすると、銀色の鷹が舞い降りてきた。
レオナルドに腕を前に出させると、レオナルドの周りを一周廻ってから、鷹はレオナルドの腕に降りた。
《レイジさん、ユイさんが反応してくれないので、来てみたんですが、これはどういう状況です?》
昨日あったこと、わかったことを説明した。
《...えぇぇと、なんというか。そうですか》
神さまに反応に困られると、こっちとしても本当に困っちゃうよね
《鬼を制圧できちゃったんですか。レオナルドでしたっけ? この鬼、弱くはないですよ》
マサムネ一回死んでるし、ユイも一度、死にかけたからね。強いのは知ってる。
《その程度で済んでるのが不思議です。今、命令に従ってるのも驚きです》
ちょうどよかったので、鬼の隷属に強制力を持たせることができないか聞いてみた。
《隷属契約はあるらしいですが、転生の神の扱えるものではないです。主従の強制なら召喚獣契約くらいですが、マサムネさんみたいに、主人に合わせた大きさがデフォルトになっちゃいます》
そっか。うまくいかないな
《小梅って娘の召喚獣にしちゃえばいいのでは?》
それだ。レオナルドより小梅の方が信用できるし、小梅の召喚獣なら小梅を守ってもらうのに最適だ。
ユイに相談したが、眠いらしく「なんでもいいよ。まかせる」という返事だった。
小梅に聞いたら、驚いたようだが、
「レイジさまの言う通りにします」
と、快諾してくれた。




