20-7 いつもとは違う音
「そろそろ帰るか」
「そうだね」
アイドル部の方に顔を出していた麗美も戻り、特にすることもないまま部室でまったりとしていた俺は、窓の外の陽が傾きはじめたのを見てみんなに帰るかと声をかけた。
今日のオカルト研究部はいつも以上になにもなかった。
洋子先輩は終業式のあとすぐに帰ってしまったようで顔も合わせなかったし、当然のことながら秋彦先輩も姿を現さなかったし、エイィリ先輩も部室にはやってこなかった。
「まあ、さすがに真夏にあのローブは暑いのかもな」
「ん? どうかした」
「いや、エイィリ先輩も来なかったって思って」
「あー。ローブの人ね。確かに暑そう」
それ以外にこの部室にやってきそうなのは香染あたりかもしくは学園OGのユーチューバー先輩くらいだが、香染はアイドル部の方が忙しいからそれどころではないのだろう。
というか、思惑どおりに麗美を引き込めた以上、もうここに大した用事はないだろうしな。
キクシン先輩は知らん。
動画ももうチェックしてない。
「うわ、あっちー」
部室から出ると、外の暑さは想像以上だった。
といっても、今日はあまりムシムシした感じはしない。そこそこ風があるからだろうか。
エアコンの効いた部室に後ろ髪を引かれながら、俺たちは部室棟をあとにする。
「あら? 何の音ですの?」
「ん?」
耳慣れない音に、麗美が足を止めた。
ピュンッという何かを弾いたような甲高い音と、それに続いて聞こえるパツンッという軽い破裂音。
特徴的なその音は、あたりに充満する蝉の声や遠くから聞こてくる野球部の怒声(?)にかき消されることなく俺たちの耳に届いてきた。
「弓道部? あれ? 弓道部ってまだあったんだっけ?」
いろいろな部活があるうちの学校には、当然のことながら弓道部も存在していた。
いた、というのは最近すっかりその名を聞かなくなってしまっていたからだ。
「去年まではいろいろ聞いたよな。なんとか大会優勝とか、何とか杯で一位になったとか」
「優秀な人が一人いただけだったから。その人が引退したら、ぱったりダメになった」
「あー」
切ない理由を緑青が説明してくる。
「個人競技だとそういうこともあるのかもな」
「じゃあこの音は?」
その音の正体が気になった俺たちは、それまで進んでいたのと反対方向……弓道場の方へと足を向けた。




