旅は道連れ世は情け?
本当にお久しぶりです……
プライベートで様々なことが起こりその対応に追われていたら、体の調子を崩してしまい何も書けない状態になっていました。
無事に街について翌日。何とかペナルティを終えて街について終わりかと思ったら、遺体の引き取りやら集落の様子やらの事情聴取で夜中まで冒険者ギルドに居座ることになった。
私は途中で寝落ちしてしまい、気づいたら宿のベットで寝ていた。私の隣で丸まるルネアを見て、かなりデカい私を運んだのかと思うとちょっと申し訳ない。
兎にも角にもペナルティを終えた、ということはもう自由の身だ。これから西に行くと公言していたルネアは本格的に冒険者業をしながら旅をするということだ。……その割には旅費もたまってないしランクも上がっていないが。
冒険者と言えばパーティーを組んで動くのが定番だが、ルネアにはその気がないらしい。まぁ、喧嘩をすぐに買って乱闘騒ぎにするようなエルフなんて扱いにくいにもほどがあるし、害鳥と名高い私がいるからなおさらだろう。
魔獣の私がとやかく言える立場ではない、という前置きがあるものの。ルネアは強いが、いかんせんその強さを過信している節があるように感じる。本当に直観ではあるが。それに魔法使いは剣とか弓とか使って戦うのは苦手、みたいなテンプレにあてはめたらルネアも該当するはず。魔物の解体以外で刃物を使っているとことは見たことがない。「鑑定」では才能とかに剣術とかがあったように見えるが。
……そういえば、前回自分のスキルを見てから時間が経ったような気がする。久しぶりに見てみるか。「鑑定」!
【ステータス】
【名前】:ノレイア
【種族】:ハルピュイア(ユニーク個体)/若鳥
【レベル】:51
【体力】:780
【攻撃力】:500
【防御力】:350
【魔力】:460
【スキル】
:鑑定(Lv.3)
:ステータス表示(Lv.3)
:神話の獣(未開放)(条件を満たしてください)
:アイテムボックス(Lv.10)(Lv.15でコンテナ型からイベントリ型になります)
【称号】
:神話の獣
:ダークエルフのペット
だいぶ上がったな。戦った記憶ないけど。主人のルネアがボコボコにしたから経験値が分配されたとかかな。前見た時は45とかだった気がするから大きく上がってる。
スキルの部分に関してもレベルが表示されていたり、詳しい説明がついたりしているのでありがたい。レベルが上がるごとに説明も詳しくなっていくスタイル、ってところだろう。うーん……ゲームや転生モノのあるあるだね。
ステータスが軒並み三桁超えてるのは単純に強いからなのか自分がユニーク個体だからなのかは分からないが、冒険をするにあたっては何事においても強い方がいい。
うんうん、と一人納得しているとルネアが身じろぎをしてゆっくりと起き上がった。朝日に照らされる儚げな美少年。目に悪い。とってもスケベ。
のそのそと起き上がり、私の頭をなでるとそのまま部屋を出てしまった。朝の身支度に行ったのだろう。朝食を手に帰ってくるか、と思い二度寝を決め込もうとした矢先。
「おっはよー! いい朝だな!!」
「ギャアアアア!!!」
ドアを開け放ってた獣人、ラガスがいた。
いきなり溌剌とした声で言われたものだからこっちとしてもたまったものじゃない。思わず悲鳴を上げてしまった。
白と黒が縦半分で別れた不思議な毛並みにオッドアイ。ケモ度の高い風貌は私が見た獣人の中でもかなり異質な部類に入る。獣人と言ったなこれだよな!って感じで私は実に好ましいが。
「あれ? ルネアは?」
「ンン―」
「荷物は置いてあるし……宿のどこかで入れ違いになったかな? ま、いいか」
我が物顔でベッドの自分の隣に座ったラガス。足元にわずかな荷物しか括り付けられていた背負子を置いた。
全身を覆うような白いゆるっとした装束にターバン。所々に見える金のアクセサリーがアクセントになっている。顔に金の塗料を使っているのか化粧が施され、同様に手のひらの肉球にも金に塗られている。全体像だけで見れば冒険者というよりも胡散臭い異国の商人、といったところだ。
「ノレイアちゃんだっけ? 名前」
「ギャ」
「当たってる?」
私の言葉が正確に伝わるのはルネアぐらいなのでそのまま頭をラガスに押し付ける。
「ここまで来るときにハルピュイアは害鳥だって聞いたけど、ノレイアちゃんはそんな感じしないな。小さいときにルネアに拾われた感じ?」
「ンンー」
「違うかぁ」
他愛ない会話を何度かして行くうちにこちらに足音が近づいてきた。
「ノレイア、ご飯持ってきた……なんでお前がいるんだよ!」
「おーっす。おはよ!」
「出てけ!」
コントのようなやり取りだった。
・・・・・
部屋の端で持ってきた朝食にがっつくノレイアを横目に、目の前にいる獣人を睨む。
「俺はメシ食ってきたからいい」とのたまったラガスが自分の食事の様をまじまじと眺めているせいで全く落ち着かない。
井戸で体と顔を清める帰りに、宿の女将さんからもらってきたスープと硬いパンはほかの冒険者には受けが悪いようだが、僕としてはちゃんと味がしてちゃんとしたパンはそれだけでもごちそうだ。パンが固いならスープに浸せばいいだけの話。
食事を受け取った時に、今日は朝から依頼を受けていたのを思い出した。
食べたりない、と言わんばかりの目線を向けてくるノレイアに追加でホーンラビの肉を上げれば、満足したのか部屋の中をうろうろし始めた。
「今日もギルドに行くのか?」
自分も急ぎ目に食事をかき込めば、食事が終わったのを見計らったかのようにラガスが声をかけた。
「ギルド、というか……。昨日受注した依頼を思い出したので早く済ませようかと」
「俺も行く」
「は?」
「俺今日暇だもん。お前といるの面白いし。な? いいだろ?」
「いいわけあるか。自分で依頼を受けてそっちに行け」
「ひどくない?」
待ってましたと言わんばかりに自分たちの行く先についていこうとするラガスに苛立ちが募ってくる。適当に返せば「ノレイアちゃ~ん! ルネアがいじめるぅ~」とやたら高い声色でノレイアにすり寄ろうとする。ノレイアは素早く逃げた。ざまぁない。
「俺は『旅をする』ことが目的で旅を始めたんだけどさ。お前は何か目標とかあんのか?」
「……」
ノレイアを無理やり持ち上げて顔を摺り寄せるラガスがふと呟いた。腕に抱かれているノレイアは死ぬほど嫌そうな顔をしている。暴れないだけ彼女なりの慈悲なのだろう。
「特に。今のところは西に行くってことぐらいですかね」
「東には行かねぇのか?」
「あそこは人間以外の種族の差別が強い。ダークエルフの存在は希少だし、僕個人としても東側にはいい思いがない」
「やっぱ俺も行かねぇ方がいいな。この見てくれだし」
ノレイアを抱き上げて地面に下ろす。ノレイアはそのまま開け放った窓から飛び去って行った。
「東の帝国、チェザニル帝国は碌な話を聞かない。人間ならいざ知らず、それ以外の種族はこのビトリック王国から東は行きたがらない。行くとするならまず、身分が保障される冒険者ギルドや商人ギルドに登録したうえで、護衛や行商をする程度だ。観光気分で行けるような地域じゃない。未だに奴隷狩りが横行してるって話だし」
「ビトリック王国を隔てて治安の良し悪しが分かれるとはな」
ノレイアの飛んでいく先を見ながら帝国での日々が脳裏に嫌でも浮かぶ。
汚泥と穢れと悲鳴とうめき声。
鞭の音。肉を切る音。絶叫。
品定めをする目線。所有物の目。
嘲笑。爆笑。
背中の痛み。皮膚のは散々裂かれ血が滲み、熱を持つ。
色彩のない世界。
笑った瞬間に石を投げられて死ぬ奴隷仲間。
無意識のうちに拳を握り締めていた。
怒涛にあふれ出る記憶にはらわたが煮えくり返り脳が沸騰する。
それに気づいて、大きく息を吸い込んだ。澄んだ清い空気が体に染みわたる。視界が開けたような気がした。
「……人間よりも魔獣の特徴が強く出る獣人、ということは、出身は南の方?」
「正解」
気を取り直して問いかければラガスは軽く返した。
「師匠」の知識によれば魔獣の要素が強く出る獣人はファルロテ大陸ではなく、大陸の南側にある海域、スクエステ海域やその周辺で生活している者達らしい。
しばらく話していたらノレイアが戻ってきた。足には粗末な紙が握られている。どうやらその辺で配っているビラを持ってきたらしい。中身は面白みもない内容だった。火種にでも使おう。
その後もうだうだしていたらいよいよ時間が足りなくなってきた。ノレイアと(不本意ながら)ラガスを連れて依頼先へと赴いた。
・・・・・
「今日の依頼は……」
「大通りの裏手にいるばあちゃんの家事手伝い」
「地味過ぎない?」
「低ランクなんてそんなもんだよ。どぶさらいとかよりマシな部類。嫌ならあっちいけ」
「やだ」
「一応これでも報酬は金貨一枚だよ」
「しょっぼ」
ラガスと話しながら依頼場所へと赴く。なんと依頼人は洗濯場の件で顔見知り?になったマリアーンさんだ。もっとも向こうは誰が来るかなんてわからないから驚くかもしれないが。
依頼の内容にケチをつけまくるラガスを放置するつもりで歩いているのに、足の長さに物を言わせて平気で着いてくるし、やたらと距離が近いしで鬱陶しい。依頼がこなせればそれでいいけど、こいつは別にチームを組んでるわけではないからラガスに硬貨一枚も入るわけではない。何でついてくるのかが分からない。
「後はおまけで昼食が付く。ノレイアはその間好きなところに行かせられる」
「自分の食い扶持は自分でやってんのか。えらいな」
「ランク上げて、堂々と魔物の討伐に行きたいんだけどね」
軽口を言い合いながら仕事を進める。昼食をご馳走になってまた作業。
そうして黙々と進めるうちに全てが終わる頃には夕暮れになっていた。
冒険者ギルドへの報告のために大通りを歩く。
ノレイアはまだ戻っていない。どこまで行ったのだろうか。
「ルネアはさー」
「なに」
「パーティー組まねぇの?」
軽い足取りで歩くラガスが問いかけた。
冒険者は大なり小なり複数人でチームを組んで行動する。そのチームが即席であってもそうすることは多い。危険が伴う職業ゆえに異常事態が発生した際は誰か一人でも生きて帰ることで状況をギルドに伝えるのだ。
もちろんソロで活躍する冒険者もいるが、そういうのはよっぽど力があるとか癖が強いとかの偏屈な場合だ。
僕は冒険するために冒険者になったわけではないので、日銭を稼いで日々を過ごしながら安全に過ごせればそれでいい。ノレイアが魔物を狩っているから食糧には困らない。
「俺は旅をするために家を出たんだけど、せっかくなら道連れがいた方がいいかなって」
「死にたいわけじゃないんだけど」
「目標はあるの?」
「話聞けよ」
「ねぇえーーーー、あーるーのー?」
「……」
しつこい。
でも「アストラ」の魔法使いがメイザーラ出身とか聞いたから、そっちを目指していいのかもしれない。ちょうど西側にあるみたいだし。
「西側にあるメイザーラに行く」
「そうなの? じゃ俺も一緒に行く」
「は??」
「どこまで一緒にいれるか分かんねぇけど、よろしくなー」
頬をすり合わせるようにして顔を近づける。
「うっ……ラガスの目的地はあるのか?」
「ない」
「即答……」
「そうと決まれば早くこの街出ようぜ!」
ぎゃいぎゃいと騒ぎながら道を歩く二人を夕日が照らしている。
その様子をノレイアは空から見下ろしていた
あまりにも軽い二人組の結成は、やがてファルロテ大陸の未踏の地、シェイオ大森林を突破する伝説の始まりでもあった。
古代魔法を使い、ハルピュイアを従える、ダークエルフの魔術師・ルネア。
高い身体能力と治癒魔法、そしてすべてを黄金に変える仙猫・ラッガスティーナ。
ルネアの忠実な使い魔、「神話の獣」・ノレイア。
何とも言えないこの奇妙な関係性は互いの寿命が尽きるまで続く関係の始まりでもあった。
・ラガス
ラガス、はあだ名。ラッガスティーナがちゃんとした名前。名字を合わせるともっと長い。
モージ王国の十八番目の王子。上にも下にも兄弟姉妹がたくさんいる。
黄金に変える魔法を自身で生み出してしまうほどに黄金が好き。冒険者で身分を伏せているため装飾品は少なめ。
ズッ友をゲットした。




