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オークの集落を殲滅せよ!(ただし無給)、はあるある。

しばらく更新をお休みしていて申し訳ありません……。

今月は積極的に更新していこうと思っています!

呆気に取られた人たちを置き去りに、ルネアと獣人さんは宿に向かった。というのも、獣人さんーラッガスティーナ、ラガスと呼んで欲しいらしいーが宿に荷物を置きっぱなしにしているかららしい。

ラガスとしては軽くギルドを見て依頼を受ける予定だったので、身軽な状態だったのだ。


そんなわけで『アストラ』の人たちを連れて一度宿に帰還、そして今は街の外れにいる。

明るい空がとても清々しい。


ラガスは長い真っ白なローブ?みたいなのをつけターバンを巻き、背負子(に革製のちっちゃいリュックみたいなものが付いている。バックパックを小型化したようなもの)を装備した。

前世の世界でいうと……こう、アラビアンナイトに出てきそうな、そんな感じの見た目。

この世界ではあまり見ないから結構目立ってるが本人は気にしていないようだ。

準備を整えた『アストラ』とルネアとラガス。ジャビさんが依頼内容を読み上げる。



「オークの集落はここから南に馬車で三日ほどのところだ。森の開けたところに集落があると確認された。もともとあそこはオークが多く出る森ってことで危険視されていたんだが、本格的に調査をしたところ集落を作っているのが確認された。集落自体は人気がない場所だが、そう遠くない場所に街道があるせいで、餌を求めてやってきたオークと鉢合わせする事案が多発している」

「集落がある、ということはそれを統率するオークキングがいるということだオークの最上位種だ。ランクはSランク。最強格だね」



ジャビさんの説明に合わせてリオンさんが補足を入れる。

魔物のランクは最上位のSランク、そこからA、B、C、D、E、Fとと下がっていく。冒険者が討伐依頼を受けられるようになるランクがF級からなのは、魔物のランクがFランクからということらしい。

Sランク、となればそれ以上のランクがないだけに限りなくAランクに近いものもいれば、限りなく強い魔物もいる。ピンキリらしい。



「オークキングの討伐は何度か依頼を受けて達成したことがあるから、いざというときは助けるから安心してくれ」

「リオン様は強いんだから! 心配しなくっていいわよ!」



本来なら『アストラ』に寄せられた依頼なのだが、これはルネアとラガスのペナルティ。一度怖い思いをして懲りろ、というわけだ。限界まで助けに来ないだろうな……。



「馬車の手配から君たちがすることになってるから。移動も好きに決めていいよ」

「んじゃ、俺のターバンで行こうぜ。半日で着く」

「え?」

「ん?」


ターバン……空飛ぶターバンってことかな?

呆気に取られる『アストラ』の人たちを他所に、ラガスが頭に巻いていたターバンをほどく。

大きめのレジャーシートほどの大きさのターバン。模様はない。

ラガスが広げると地面に落ちることはなく、膝ほどのところでフワフワと浮いた。


「これ……魔道具?」

「そ。魔道具の一つ。空を飛ぶのには乗ってる奴の魔力が必要だから、魔力切れを……って魔法使いいるから大丈夫か」


乗った乗った!と声をかけるラガスに押されるようにしてターバンの上に載っていく。ちなみに私は空を飛ぶ予定。

ルネアは少し緊張しているみたいだ。


「ラガスはどうするの」

「俺は走るからへーき」


ルネアの問いかけにそう答えた。体の骨をパキパキと鳴らして四足の体勢になる。間近で見ると本当の「獣人」ってこうなんだろうな……。

ファンタジーでよく見るケモ耳のお姉さんとかお兄さんではなくて、がっつり動物味のある獣人さんの方が私は好み。


「んじゃあ……。オークの集落に向けて出発!!」


ラガスの一言でターバンは滑るように飛び始めた。



・・・・・



ハルバスを離れて森に入る。

ターバンは地面をすべるように低い位置で飛んでいる。私はさらにその上の、木々を超える高さで飛んでいた。

しばらくすると人の気配は完全に消えて、鬱蒼とした木々の存在と木漏れ日が混ざる自然そのものを体現した中心部へと出た。

この間ターバンは一回も止まることはなかった。つまりラガスはずっと走りっぱだったというわけだ。かなり速く飛んでいるはずなのに、ずっと横に張り付いている。

頭がぶれてないし、何というかチーターが走ってる感じ。



「オークの集落はこの辺り……ですね。魔物の魔力を感じます」

「エルフって魔力探知に優れてんだよな? なんで?」

「さぁ?」



ルネアとラガスが話してる。なんか気が合うみたいで、喧嘩の時のようなチクチクな雰囲気がない。

仲がいいのはいいことだよ……。最近は乱闘騒ぎばっかり起こしてたからさ。

うんうん、と思っていたら二コラさんが教えてくれた。



「エルフの耳の先」

「え」

「耳の先?」

「エルフの耳の先は魔力の探知をする感覚器官や、それに相当する魔力回路が集約されてるって言われてる」

「へー」

「西側では禁止されてるけど、東側では未だにエルフの耳を切り落とすことがあるのはそれのせい。切り落とされると魔力の探知に加えて魔力が扱いにくくなって魔法の威力が落ちるの」

「あー……。だからか……」

「……」



二コラさんの説明で二人は納得したようだ。ラガスは何か思い当たる節があるらしい。ルネアは黙ったままだ。



「それにしても、ルネア君は耳が大きくて長いね」

「そうですかね」



耳を指先で触りながら二コラさんが言う。ルネアは耳を動かしている。くすぐったいらしい。てか耳動くんだ。



「ある程度、ではあるんだけどエルフの耳の大きさとか長さでその人の魔力量とかが分かるの」

「へー」

「あくまでも目安だから例外も当然あるんだけどね。本当に目安」



「学院にも魔法に秀でたエルフがいっぱいいたけど、ルネア君ほどの耳は見たことがないなぁ~」とほのぼのしている二コラさんをよそに、ルネアは触られた耳の先を包んでいた。恥ずかしかったのかもしれない。


ターバンの上でほのぼのするみんなを見ていると、右手側に二足歩行の豚を発見した。どうやらターバンを追いかけているらしい。

……あれがオークっぽいな? 

念の為に「鑑定!」



【オーク】

魔物。食欲と性欲が旺盛で、集落を築いて周りの生態系や人間に悪影響を与えることがある。

肉を始めとして、皮や骨は武具に、睾丸は薬に使われる。



はいオーク確定。この一匹だけじゃなくて複数接近しているみたいだから集落が近いってことだ。



「ギャアァァァ!!」



鳴き声でルネアとラガス、『アストラ』の人たちが気付いたらしい。

『アストラ』の人たちはなるべく手を出さないスタンスだから、いつでも助太刀できる体制になっているだけだ。


ターバンの前に出てきたオークはこん棒を振り上げている。

ルネアが古い木製の杖をアイテムボックスから取り出す。



「『ウィンドカッター』!」



現代魔法だ。珍しい。

言葉とともに放たれた風が刃となってオークを輪切りにする。なんて呆気ない。

血が噴き出る前にターバンは旋回して避けていく。


追いかけるオークにルネアがどんどん魔法を打ち込んでいく。後方はオークたちの死体の山だ。キモっ!

オエ~っと考えていると笛の音がした。ルネアの首にかけられている笛の音だ。


……。なるほど。先に行って偵察をしろってことか。合点承知!


答えるように翼を一打ちし、先へと飛んで行った。



・・・・・



「オークの集落って見たことねぇからよく分かんねぇけど、こんな奴がバカスカ出てくんのは面倒だ、な!」

「オーク自体がっ! 単体でもそれなりの強さの魔物……っと! だから、集落ができた時は輪をかけて……うわっ! 危険ということでしょう、ねっ!」



ラガスがオークの首を爪で掻き切りルネアに声をかける。ルネアはオークに集中的に狙われているものの、魔法で応戦している。

オークがターバンの横から突撃してきたことで、ターバンのバランスが崩れルネアだけが放り出されたのだ。『アストラ』を残したターバンは上昇し、被害が飛ばないところで停止していた。


すでに倒したオークは二人で合わせて四十を超える。

集落が見えているわけではないのに、あまりにも多い。


疲労しているわけではないが、お世辞にも綺麗とはいいがたいオークの猛攻で精神的に披露する。特にルネアは見た目が綺麗なせいか完全にロックオンされて、次から次へと襲い掛かってきている。

ラガスは持ち前のスピードで急所を裂き続けているが、オークに感があるのか尾を掴まれそうになっている。


かく言う私も空から急襲して首をかぎ爪で切り裂いたりしている。

ルネアと出会う前もそうだが、基本的にハルピュイアは戦闘せずに逃げの一択(ついでに相手をおちょくる)をとるので戦闘力に関しては自分でも分からない所が多い。

でも、シェイオ大森林に生息する馬鹿みたいに気性の荒いホーン・ラビを襲ったり、集団で大きな獲物を袋叩きにして群れの餌を確保したりするので、まったく弱いわけではないのだろう。

多分群れて力を発揮をするタイプ。


狩りで魔物との戦闘に慣れているのと、安全をとって一撃したら空に避難する戦法をとっていた私は全く問題ないのだが、初めての実戦であるルネアとラガスにとって、数が多いオークとの戦闘はハードになっていた。



・・・・・



「はぁ……はぁ……」

「これで全部か……??」



しばらく猛攻を続けているとオークがいなくなった。どうやら近辺のオークはすべて狩りつくしたようだ。

ルネアはゼーゼーと息を荒らげているが、ラガスはケロッとしている。体力差だ……。

ステータス見たまんま魔法使いタイプだから、体力ヘボなのは間違いない。

というかルネアの面の良さでオークが全部そっちに行っていた。恐ろしきエルフの美貌。囮として優秀すぎる……。

魔法を使う体勢をとる以前に群がってくるものだから、ルネアは逃げ回ることしかできてない。可哀想。



「……。この先に集落があるかも。でも遠い」

「遠い?」



ルネアが集落を感知したらしい。


いま私たちがいるのは山に囲まれたくぼ地……山道の途中の下り坂のところだ。

ルネアが言うにはこの先の峠を越えたところにあるという。

息を整えながらルネアが続ける。



「でも集落なら、平地のほうがいいんじゃねぇの?」

「たぶん、四方を山に囲まれた平地……えっと、たしか盆地、だったかな。になってるんだと思う」

「ほーん……」

「遠い、って言ったのは、ここからさらに山を登る必要があるし、物理的にも距離があるってこと」

「なんで感知できたんだよ」

「たぶん集落の高さと今僕たちがいる地面の高さが同じだからなんだと思う。……魔力探知は基本的に、自分と垂直になるようにしか広げられない。それを地形に合わせて広げたり、空気中にも伸ばせるよにするのが魔法使いとしての修行の一環だからな……」

「じゃあ今まではそうして地形に広げてたのに感知できなかったっていうのは……」

「単純に僕の範囲では足りなかったから。垂直にして初めて引っかかったんだ」



……。何言ってんのかわかんねぇ……。

つまり、ルネアは今まで山の地形に沿うように魔力の探知をしていた。

けど、それでは山を越えた先にある盆地の集落には届かなかった。

山に沿うようにしていたことで距離が延びたから。


でもオークの襲撃でルネアの山に沿うような探知ができなくなり、本来の探知である「術者と水平にしか広げられない」状態になってしまった。

その結果山を挟んで盆地にある集落を発見できた、というわけだ。


山を沿う距離と、直線距離ではその長さはまるで違う。何だかんだで見つかったのはいいことだ。



「見つかったなら話が早いな!」

「待って! 休憩させて!!!」



意気揚々と先へ進もうとするラガスの服の裾をつかんで引き留めたルネア。

ブサイクオークに群がられたせいで疲れたらしい。さもありなん。


ターバンに乗っていた『アストラ』の人たちと一緒に休憩だ。



「初めて戦うっていうんだから助太刀も覚悟していたが意外とやるな」

「訓練は詰んでたんで!」

「オークに群がられた……」



ジャビさんの言葉に明るく返すラガスとげっそりしたルネア。対比がひどい。



「実際、オークに狙われやすいのはダントツでエルフだからな」

「見目がいいやつが最優先で狙われるのよ」



ザビーネの言葉にルネアはうなだれた。

ターバンに乗って峠を越える。

ルネアの予想通り、峠を越えた先は四方を山に囲まれた平地……盆地が現れた。

あまり広くはないものの、留意の木々が切り倒され集落が築かれている。

村というほどではないが確かにこれは骨が折れそうだ、と思えるほどの大きさに、数のオークがいる。


集落全体を見回したリオンさんは、



「どう攻めるかは君たちに任せるよ」



といってそのまま静観の構えだ。

ターバンに乗ってる間に回復したらしいルネアが集落を見て何か思いついたらしい。



「案がある」



そう言った。


・オーク

ファンタジーの代名詞の魔物。二足歩行の豚……みんなが想像する典型的なオーク。食欲と性欲が盛んで、一度集落が築かれると被害が拡大しやすい。

繁殖ではなく食事目的として人間やエルフをさらう。きれいな宝石とかそこらへんの感覚でさらう。特にエルフは種族柄美形揃いなので被害にあいやすい。

単体のオークを倒すことができるか、が中堅冒険者といえるかどうかのラインでもある。

皮や骨は武具や武器に、睾丸は精力剤の材料になる。肉は美味。

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