黄金と宝石の価値は人による
今回は1話だけの更新です…!
最近忙しく、しばらくは1話だけの更新になるかもです。すみません…。
「バッキャローーー!!!!」
「ヒィッ!」
ハルバスに到着し、関所でこれまでの話をざっくりと伝えたら冒険者ギルドにすぐさま話が伝わったらしい。
真っ赤な顔をしたギルドマスターが到着早々こっちに怒鳴り込んできた。
その勢いのまま冒険者ギルドで説教された。
「パーパルのギルドから、いろいろと規格外の獣人の冒険者がそっちに向かうっていうから待ち構えてたら、盗賊を討伐して来ただとっ!」
「い、いや、なんか成り行きで……。襲われたし、こっちの身も危なかったんで応戦したって感じで……」
「ンなこたぁいいんだよ!! てめぇ、人間黄金化してモノ扱いって何考えてやがる!!」
「だってケガ人いたし、人数も多い、そのくせ荷馬車は一個しかないから、こうしたほうが一番言って言うか……」
「パーパルの冒険者ギルドでやたらと問題を起こす獣人とは聞いていたが、こんなタイプだったか……」
「えー……。なんかすんません」
ちなみに街につく前に予備のローブで体は隠した。ので、こっちの身なりの派手さが目立つことはない……はず。
ギルドマスターがこっちに乗り込んでくる直前、黄金化してアイテムボックスに収納していた人や馬たちにかけていた黄金化を解除して事情を説明したが、俺に対する非難の言葉が飛び交った。
何ならこっちは事情を説明した後回復魔法でケガを治したのに、だ。納得いかない。
助けてあげたし五体満足、命もある。何なら盗賊は一網打尽だし、むしろ功績の方がデカくないか?
「ってか、盗賊は一網打尽、盗賊に攫われた人たちも無事生還、ダンジョン化した事実も持ち帰った、ほかに問題あるんですか?」
「お、ま、え、なぁ~~~!!!」
「話聞いていたのかっ!」と拳骨を食らった。
話は聞いていたが、何が問題なのかは理解できたが、なんでそれが問題なのかは理解できない。
道中はある程度危険なことも承知のはず。その上で危険にさらされていた状態を俺が救出してあげたし、安全が確保されているハルバスまで一刻も早い方法で運んだのだ。
命さえあれば大抵あとは何とかなるんだし、問題のようには感じない。
「人を持のように扱うのが問題だって言ってんだよ!」
「……?????」
「だめだこりゃ……。とにかく、盗賊を捕まえたこと、ダンジョンの報告諸々含めて報酬は渡す。が、ラッガスティーナ、お前は降格な」
「え゛」
「当たり前だ。命のやり取りをする以上、命や他者の扱い方をもっと学べ!!」
「うっす……」
自分でもよくわからないまま、せっかく一ランク上がったのを下げられて駆け出しに戻ってしまった。
報酬は金貨五十枚。
ほかの冒険者パーティーはもっと貰っていた。俺の方が報酬が少ないのは、「ほかの人に迷惑をかけたんだからその慰謝料だ」ということらしい。別にお金に関しては換金できるものを持ってきているので別にどうでもいいが。
ちなみにほかの荷馬車を護衛し、俺の黄金の川によって黄金となっていた冒険者パーティーたちは、何がなんだかよくわからないままハルバスに着いてしまったので、依頼達成なのかをギルドマスターとともに決めることにしたらしい。
ほぼ半日お叱りを受けて追い出されるようにしてギルドを出てきた……わけだが、今夜の宿を見つけなくてはいけない。なんだかんだでトラブルが発生まくって精神的に疲れた。
その辺の目についた宿屋に入ればすぐに部屋に通された。
服も脱がずにベッドに横になるとそのまま眠りに落ちていった。
・・・・・
翌日と思ったら、丸々一日眠っていた。つまり二日目。
それなりの時間になっても下に降りてこないのを心配した女将さんが、従業員に様子を見に行かせるとあまりにもぐっすりと眠っていたというので、そのままにしていたらしい。
マジでありがたい。種族柄睡眠を多くとるし、ここ数日は忙しかったから全然寝れてなかった。
食堂で食事を済ませた後いったん宿を後にする。
昨日、降格させられたことでランクは一番下のG級になってしまった。
となるとパーパルでやったF級になるまでの依頼をもう一度やる羽目になる。面倒くさいがこれも冒険の一つだろう。
依頼がないか一昨日ぶりにハルバスの冒険者ギルドを訪れる。
ビトリック王国でも一にを争うほどの大きな街かつ貿易拠点であるためかパーパルと比較しても、見劣りしないほどに賑わっている。
俺が入ってきた瞬間ギルドが静まり返ったが無視だ無視。モージ王国じゃよくあることだったし。王族がいきなり庶民のいる場所に来たらビビるに決まってる。
とにかくまたF級になるためには依頼を受けなくてはいけない。
依頼を見ていると、昨日ぶりのギルドマスターに呼び出された。
「あー……ラガス、昨日お前を降格にしたわけだが」
「まぁ、そっすね」
「実力は認めてるんだ。これでもよ。人の扱い方はどうであれ、盗賊どもを魔法一撃で戦闘不能にする、素の戦闘力も高い、魔法も扱える。冒険者という才能のピンキリが激しい中では抜きんでてる」
しみじみと語りだしたギルドマスター。
「で、だ。お前、誰かとパーティー組むつもりはねぇか」
「え?」
降格にしてその翌日にパーティーの提案とはマジで何?
表情に出ていたらしく、ギルドマスターが続ける。
「いやな、お前の活躍を聞いてから、それなりの数の冒険者パーティーが「お前を仲間にしたい」って要望が来てんだよ」
「えぇ……」
「本当に仲間にしたいやつもいる。が、それは僅かだろうな。いかんせんお前の魔法を見て目の色を変えた連中がほとんどだった」
「まぁ、俺の魔法で変化させた黄金は資源的、金銭的にも価値のある「本物」の黄金なんで、悪用すれば一発で大金持ちでしょうね」
「あぁ。だからこれは忠告だ。使用者であるお前自身があの魔法の危うさを理解しているならそれでいい。冒険者も善人ばかりじゃねぇ。毎年毎年ヤバいことに手を出したり、冒険者で殺し合いが始まったりで登録取り消しとか、処刑とかされる奴がいるんだよ。だから人を見る目は養っとけよ」
「……ご忠告、どーもです」
「引き留めて悪かったな。話はそれだけだ」と言ってギルドマスターは去っていった。
仲間ねぇ……気が向いたらでいいか。
「君がラガス、かな?」
「んぇ」
掲示板で何をするか悩んでいたら、人間族の男に声をかけられた。その後ろには連れと思しき仲間がいる。
「活躍は聞いてるよ。強い魔法に加えて回復魔法も使ったとか。それに身体能力も高いそうだね」
「まぁ……そう、っすね」
なんでこんなに情報が洩れてんだ。別にいいけどさ。
こいつが次に言いたいこと、なんとなく予想ができる。
「ぜひ僕たちとパーティーを」
「いや別にいい」
「え」
「お前に興味はない。パーティーメンバーが人間族だけだから俺が入ったら浮くだろ」
「リオン様はそんなこと思ってない!」
穏便なお断りの言葉を投げかけたら、魔法使いと思しき少女が声を上げた。
「リオン様がそういってるんだから早く頷きなさいよ!」
「ちなみに聞くけど、なんで俺なのさ。見たところ役職は間に合ってるだろ」
このままわめき始めそうな勢いを遮えり「リオン」だかに向き直る。
「リオン」の腰には片手剣が下がっている。おそらく前衛で剣をふるうアタッカーだろう。魔法使いの少女は見た通り。後ろにいる大男は盾役、こちらの様子を見守る女は斥候といったところだろう。俺が入っても役割が被るだけだ。
「ダンジョンの攻略予定なのだけれど、優秀な人材はいくらでも欲しいからね」
「あっそう……。俺はダンジョンに潜る予定はないから他所あたってくれ」
「そんなこと言わずに、」
「はあぁっ!?! リオン様がモガッ!」
「いいから黙って」
しつこいなコイツ。
また騒ぎ始めようとした魔法使いの口を一瞬で覆い隠してズルズルと引きずる斥候の女。魔法使いの少女はそのままフェードアウトした。
正直、船旅にランク上げに道中のゴタゴタが重なって激しい依頼や活動はするつもりはないのだ。疲れたともいう。薬草採取で心を癒すに限る。
てか「リオン」の後にも俺に声をかけようとしていた連中も俺を取り囲み始めた。
「おい! 『ドブさらいのルネア』だぜ!!」
酔っ払い特有のギャハハ!と下品な笑い声がしたのを皮切りに、視線が入り口に集まる。
入り口には大きな人面鳥を肩に乗せたローブの「何か」がいた。
フードを深く被っていて顔は分からない。
冒険者の嘲笑う声を意に介さず、受付にまっすぐ向かい受付嬢と話している。
そいつが気になったので、「リオン」に聞くことにした。
「なぁ、『ドブさらいのルネア』ってなんなのさ」
「あ、あぁ、彼は最近このギルドを拠点にして活動している冒険者さ」
「ほーん」
「ダークエルフで、ランクも低い。いつも皆が嫌がる依頼を率先して請け負っているからそう言われるようになったのさ」
「それで何か問題あんのか?」
「どんな依頼を請け負うかは冒険者次第だ。でもドブさらいや下水道の掃除は匂いもキツイ上に報酬も少ないからまず誰もやりたがらない。仕事をしている彼の姿を見た心のない冒険者が勝手に彼を蔑んでいるだけだ。『ダークエルフは汚いものが好き』だってね。とんだ偏見だ」
ダークエルフは希少な存在だ、というには知っている。
『ダークエルフは汚いものが好き』というありもしない偏見でみみっちいプライドを保っている、というわけか。え、くだらな。
「ただ、彼自身がそう揶揄されるのにはもう一つあるのだけれど…」
「アイツがハルピュイアも連れてるからさ」
「ハルピュイア?」
斥候と思しき女も会話に入ってきた。魔法使いの少女の口を押さえていた年頃の女だ。
「アンタ知らないの?」
「まぁ名前ぐらいは聞いたことはあるけど」
「うるさいしフンは撒き散らすし、そのくせ討伐しても魔石しか得られない。戦ってもアタシら冒険者の利益にはならないんだよ」
「うわメンド」
「しかもこのハルバスは、ハルピュイアが生活してる大森林との距離も近いから、不定期にハルピュイアの群れが騒ぎに来るんだよ」
「ここ最近はないけどね。多分そのうちくるさ」と忌々しげに吐き捨てる様子を見るに、相当な嫌われようだ。
「しかも、そいつールネアって名前なんだけどー連れているハルピュイアにご執心みたいでね。自分が揶揄われることには顔色一つ変えないくせに、連れているハルピュイアの悪口をいうとすぐ喧嘩になるのさ」
斥候の女がチラリと「ルネア」を見ながら小声で話す。
「そのせいでせっかく稼いだポイントもパァにしちまうのさ。アタシの見立てだと相当な強者さ。エルフは魔法に長けているが、ルネアはその中でも一番だろうね。斥候としての経験もアタシ自身の感覚でも感じる魔力の力が桁違いだ」
エルフが魔法に長けるのはモージ王国でも分かりきったことだ。受付を離れて隣接する解体の窓口でホーン・ラビを差し出す「ルネア」を見る。
フードはいつのまにか外している。背を向けているせいで顔は分からないが、鎖骨ほどに伸びた黒い髪、そこから覗くうなじは確かに褐色だ。耳も長く尖っている。
獣人としての感覚も、「ルネア」が魔力が異様に高いことを感じている。
興味が湧いた。
ハルピュイアはこちらに気づいているらしい。さっきからこっちをガン見している。
「リオン」やそいつの仲間を置き去りにして、「ルネア」に歩み寄る。
魔物を預けている無防備ぎ背中に近づいた。
「お前が噂の『ハルピュイア狂いのルネア』ってやつ?」
「は?」
すんごい嫌そうな顔で振り返られた。
これまで聞いた話をなぁなぁをまとめて口に出したら変な感じになった。
ファーストインパクトが最悪なのが決定した瞬間だ。
「当たってはいるが、何も当たっていないよ……!」
遠くから「リオン」の声が聞こえた。
・ラガス(ラッガスティーナ)
「黄金の川」の一件からヘッドハンティングが爆増している。人に話は基本聞いていないので誰が話しかけたかは覚えてすらいない。猫耳を向けている方の話を聞いている。猫は人間に話しかけられていても意図的に無視するらしいです。睡眠時間が長いのもラガスが猫の獣人だから。
その結果、聞いた話を適当にまとめて口に出したら「ドブさらいのルネア」よりも最悪な二つ名が完成した。
・ルネア
「ルネア」という名前自体ダークエルフ差別する言葉からきているし、帝国の方が扱いが悪かったので今更冒険者の暴言程度では特に何も感じない。が、ノレイアが悪く言われるのは許さない。すぐにキレて稼いだポイントをパァにする。それがなかったら今頃E級になってた。
「ドブさらい」よりもさらにイカれた二つ名で呼ばれた。




