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現代魔法

あと少しなんです……! 彼らが出会うまでは……!!!


草原の人気がない森に近い場所で、切り株に写し取った羊皮紙を置き、飛ばないように石を置く。


自分は古代魔法が使えても、現代魔法が使えない。


「竜の翼」の一人であるシセリアに詰められるまでは、自分はむしろ魔法使いとしては底辺の方だと思っていた。

「師匠」たちのところにいた時は、古代魔法しか教えてもらえなかったし、今の今まで自分の使っている魔法が、この世界で流通している魔法だと信じて疑わなかった。


貸出期間を終えて奴隷商に戻されるときに「師匠」から口酸っぱく「ある程度無能のフリをしろ」と言われたので、魔法が使えない、エルフにしては珍しくアイテムボックスのスキルすらない、な完全に「見た目だけがきれいなエルフ」を演じていた。

……その演技すらもできないほど過酷な環境だったが。

自分を借りたがる連中は総じて自分の見目だけにしか興味がないから、それでよかったのかもしれない。


さすがに古代魔法をバンバン使うわけにもいかない。知見のありそうな冒険者達でさえ、「雷よ、穿て(トニト・テレブラ)」の簡単な魔法であれぐらい慄いていたのだ。実力は隠しておいて損はない。

ただでさえダークエルフというだけで変なやっかみがついているのだ。目立つ行為は控えた方がいいだろう。

……これに関しては受ける依頼が依頼だから、というのも理解しているが。

あまり目立たないように戦闘ができるようになるまでは、と戦闘系の依頼はすべて避けていたのも、自分が現代魔法を使えないことに気づいたからだ。


とはいえ、魔法自体は好きだ。

ギルドで図書館の場所を教えてもらい、魔導書の内容を書き写してこうして練習をしている。



「まずは……『四種属性魔法の適性を見つける』。火魔法から見るか。一番簡単な呪文は……」



羊皮紙に移した内容のまま、その辺に生えていた木を的にして手を向ける。

自分に流れる魔力の流れはすでにつかんでいる。後は詠唱をするだけだ。



『炎よ、顕現しすべてを燃やせ! ファイヤーボール!』



―――ゴオォッ!!!



「うっわ」



勢いが良すぎて木が丸ごと燃えてしまった。

ファイヤーボールを出せるということは、火魔法に適性がある、ということだろう。


幸い木が密集しているわけではないので、すぐに燃え広がることはないだろうが、山火事だけは絶対に止めなくてはいけない。

……このまま、水魔法の適性も見れるのでは??? 最悪古代魔法で雨降らせて消火できるし。


魔が差した自分は、燃える木を的にして水魔法の呪文を唱える。



「水よ、顕現し恵みをもたらせ! ウォーターボール!」



手のひらを中心に澄んだ水が集まりだす。

自分よりもはるかに大きい水の塊が出来上がる。手のひらどころか頭上で陰になるほどの大きさだ。


これを燃える木にぶつければ消火できる! ゆっくりと動かし、そのまま燃える木を飲み込んだ。

炎はすぐさまに消え失せ、ウォーターボールの中で木の残骸が漂っている。

自分がだしたウォーターボールの大きさは、燃えている木よりもはるかに大きいようだ。


このまま解除したら破裂した水に流される。

羊皮紙を回収して、少し離れた頑丈そうな木の上に登り、解除した。

形を失った大量の水が弾けて、地面を濡らす。自分のひざ下ぐらいの水が土や草を巻き込んで濁った色となり流れていく。


水の流れが落ち着き、グズグズになった地面に降り立つ。

水魔法も適性がある。後は地と風か。


練習をして全然時間が経っていないが、ファイヤーボールとウォーターボールの威力に疲れてしまった。

やる気がなくなったともいう。


ノレイアも別で作業をしていたようだが、自分が木の上に避難するように指示したせいで中断したようだ。ノレイアに歩み寄る。



「疲れたから草原行こ」

「グゥ」



最近のノレイアの鳴き声は唸るような鳴き声が多い。



・・・・・



草原で横になり、アイテムボックスから「師匠」に貰った魔導書を取り出す。

古代語で書かれた古代魔法の書。おそらくはかなり貴重な品なのかもしれない。「アイテムボックス持ってんの? じゃあこれ読んで勉強しとけ!」と押し付けられる形で持たされたが、結局返すことができないままここまで来てしまった。他にも押し付けられる形で持たされた魔導書や図鑑の類は多い。

五体満足、生きたままでの返却が絶対条件の最高級貸し出し奴隷。そんな自分がが物を返さないとは不思議なものだ。



隣のノレイアを見たら、どうやら自分のアイテムボックスの整理をしているようだ。

ひっきりなしに物の出し入れし、並べ替えをしている。



「ノレイア、これ何?」

「……ギャ!」



薬草でも何でもない。ただの花だ。もはや雑草に近い。

しかしノレイアは大切にしているようだ。



「アイテムボックスに入れてたら、そのうち枯れるよ?」

「ンン~……」

「押し花にでもしよっか」

「ギュウ!」

「後でね」


どんな経緯で手に入れたかは分からないが、大切にしているのならドライフラワーか押し花の方がいい。枯れるのを待つよりはいいだろう。

嬉しそうなノレイアを横目に、ほかのものに目をやる。



「これは……ルッタ王国で手に入れた地図か……。便利そう」



自分とノレイアが出会ったときにノレイアが持っていた地図。

かなり質のいいものだ。



「これは後で冒険者ギルドで解体してもらおうよ」



いつの間にか狩っていた魔物。ホーン・ラビを中心とした「肉がうまい」と評価されている小型の魔物がほとんどだ。



「どこから持って来たんだ? これ」



魔物図鑑。著者も巻数もばらばらで統一性がない。鋭い爪のせいか表紙には傷がついている。

多分冒険者ギルドか図書館に置いているようなものだ。ルッタ王国から持ってきたやつなのかもしれない。多分ハルピュイアだから、自分と出会う前に盗んできた物だろう。

自分と一緒にいるようになってから盗みや悪さをする素振りは全然ないが、行動には目を光らせておこう。


なんてことのないものばかりを必死に整理するノレイアに癒されたところで、自分もやる気が出てきた。

森に近いところは水浸しだが、遮蔽物の少ない草原なら問題はないだろう。



「土魔法の詠唱……。えーっと……『石よ、顕現し敵を打ち砕け! ストーンバレット』!」


ドガッ!―― ドガガガガッ!――


「これも適性あり……っと」



握りこぶしほどの大きさの土の塊……もはや岩のような硬さのものが雨あられと降ってきた。

なんかもうここまでくると驚く必要がなくなってきたような気がする。

草原の地面はえぐられて、ボコボコになっている。帰りにならしておこう。



「最後は風魔法……。『風よ、顕現し敵を切り裂け! ウィンドカッター!』」


ゴウッー!―― ズバンッー!――


「全部に適正あるのか……」



唱えた瞬間、強風が吹き荒れ一帯の草が刈り取られてしまった。

これで一応基礎となる四種属性の魔法の適性を見ることができたわけだが、すべての魔法が使えることが分かった。

なら次は、これらの魔法をもう少し威力を抑えて常識的な威力にしなくてはいけない。



・・・・



さっきまでは面倒で仕方がない詠唱をいちいち言っていたわけだが、イメージが重要な魔法において詠唱はただの補助でしかない。実際に明確なイメージと魔力さえあれば魔法は簡単だ。実際に「雷よ、穿て(トニト・テレブラ)」の一言だけで魔法は撃てる。



「……『ファイヤーボール』」



指先に小さな炎を灯すイメージで唱える。

出てきたファイヤーボールは小さな炎とは程遠いが、さっきよりははるかに威力は抑えられる。

……「魔力を使う」というイメージなしで使えばこれほど使えるのか。

古代魔法を使うときは、魔力の知覚が絶対条件のようなものだったから癖になってしまっている。

勢いのまま使うとありえないぐらいに被害が広がりそうだ。

練習も兼ねてそろそろ討伐系の依頼も受けていいかもしれない。


不自然にならない程度、それでいて確実に敵に通じる程度の魔法の練習はこれからも続ける必要がある。


……。やっぱり古代魔法の方が性に合っているのだ。魔力を消費するあの感じが、いかにも「魔法を使っている!」というのを自覚させてくれる。

現代魔法は何もかもが単調すぎて、気を抜くとすぐ制御ができなくなる。


「師匠」のところにいた時に、魔力がほかのエルフに比べてもはるかに多いと言われたから、元から古代魔法の適性はあったのだろう。

だからといって、古代魔法の知識を直接頭に植え付けるのはどうかと思うのだが。


とにかく、自分が使える魔法はわかったし、あとは実践あるのみだ。

戦闘系の依頼、もしくはダンジョンに潜ることだろう。

今日はもう休む。ノレイアを肩にのっけてハルバスへに道を歩く。


その道中、大きな布が頭上を通り過ぎて行ったのを見た。風で飛ばされた洗濯物の類ではない。風の流れに逆らうようにして飛んでいるからだ。

耳の先がチリチリと少し熱くなる。あの布から魔力を感じたのだ。つまりあの布は魔道具ということだ。

気になってあの布を追いかけた。



・・・・・



布を追いかけるようにして街に行けば、関所にはギルドマスターがいた。

誰かに怒っているようだ。

人ごみを避けてみれば、背の高い獣人がいた。縦半分で黒と白に分かれた不思議な毛並みだ。

そいつの頭を見たら草原で見た布が巻かれていた。耳の先が反応したのはこれか。


ギルドマスターの慌てようや、周りの話を聞く限り、何かに襲われて急いでこっちにきたらしい。勢いのまま獣人だけでなく、その仲間と思しき冒険者たちもギルドに連行された。


自分もそのままノレイアを連れて冒険者ギルドに向かった。



・・・・・



ギルドに着くと非常に騒がしい。何があったのかを聞くとどうやら「黄金化された人間が元に戻った」やら「盗賊を捕まえた」やら、要領を得ない発言を得ることができた。

何でも、ギルドマスターに連行されて説教を受けているあの獣人が、盗賊や囚われていた者たち、そして、根城にしていた洞窟すべてを黄金に変化させ、こっちに来たということらしい。

どうりで混乱する者たちが多いわけだ。モノのように運搬されて怒るものもいるが、命があるだけマシだし、無意味に傷つけられたわけじゃないんだからもっと感謝すればいいのに。


せっかくだから、ということで冒険者ギルドの食堂で食事を済ませ、いまだ怒号が響き渡るギルドを後にした。

・現代魔法

コスパ良し、威力もそこそこ安定、大体の人が使える、という便利な魔法。

火、水、風、水の属性が基本となっている。ほかにも雷や氷など応用の属性あり。


・古代魔法

コスパ最悪、威力は高い、才能ないと無理、な魔法。いろんな種類がある割には消費する魔力も多いわ限られた人しか使えないわで廃れた……もとい、現代魔法に取って代わられた。

使えるかどうかは横に置いといて、知識や学問自体は高等な教育現場で受けることができる。

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