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仕事を長く続けるには休みも大切、はあるある

やっとルネア……もといノレイアのターンです。


ルネアと私がハルバスで冒険者業を始めてしばらく。

ルネアはランクアップを目指して、せっせと薬草採取や雑用系の依頼をこなしている。


冒険者は夢のある仕事なせいで、薬草採取やホーン・ラビやゴブリンのなどの雑魚の討伐はある程度人気だが、下水処理や清掃業務などの4K(汚い・臭い・キツイ・給料少ない(ポイント少ない))な依頼は本当に人気がなく溜まりがちだ。


が、ルネアはそれを逆手にとって片っ端からそれを請け負っていた。

おかげでギルドからは「こんな仕事を請け負ってくれる奴はほかにいない」と感謝されまくって、依頼料金を(ほんの少しとはいえ)上乗せしてくれるようになった。


一応、依頼主たちはやっと依頼を受けてくれたルネアに感謝して、仕事終わりに臭いを消すためにお風呂に入れてくれたり、公衆浴場代を出してくれたり、服を新しいものと交換したり依頼のお金とは別に洋服代を渡したりしているおかげで、五感のいいハルピュイアである私からも変な臭いはしない。

服をちょくちょく交換するようになったおかげで、ルッタ王国から着ていたサイズの合わない服を手放し、サイズの合う服を手に入れられたのは嬉しいことだ。


当のルネアは、そんな4Kの仕事に嫌悪感はないのかと思うと別にそうではないようで、ちゃんと嫌なものはいやらしい。しかし、「帝国で死体の皮を剥ぐ仕事よりはるかに気分がいい」というあまりにも不穏なつぶやきによって帳消しにされているようだ。


帝国での経験が何もかもえげつなさ過ぎて、今更どぶさらいやちょっとした肉体労働ではメンタルに響かないらしい。

それに結果的に人の役に立っていて、依頼人から感謝されることでルネアのメンタルは順調に回復中。

人間、褒められないとやってらんないよね。わかるわかる。



しかし、ほかの冒険者からは「どぶさらいのルネア」と揶揄われるようになって後ろ指をさされたり、「ダークエルフだから汚いものが好きなのか」と根も葉もない噂を流されるようになってしまった。

それにハルピュイアを従魔にしているせいで余計に目立つ。


ダークエルフという珍しい種族であるのを抜きにしても、「不吉の象徴」とか「不幸を呼ぶ」として名高いハルピュイアを従魔にしているのは、ルネア(主人)の種族を抜きにしてもそれは目立つし、挙句の果てにハルピュイアの襲撃で被害を被った人たちからは小石をいただく始末である。

うーん……あまりにも正当な怒り。気持ちがめっちゃわかるだけに怒る気力もない。


ただ、こうなると面倒くさいのがルネアで、私の悪口が言われているのを察知すると秒速で喧嘩をおっぱじめようとするのだ。魔法を使わないだけまだ理性がある方かもしれないが。古代魔法なんて街中で撃ったら大惨事になる未来しか見えない。


魔法に頼らず肉体で襲い掛かるせいで、百戦錬磨な相手に返り討ちにされたことも何度かあるし、そのたびにギルドマスターからお叱りを受けている。ルネアがなんでここまで私に執着するかは知らないが、まぁ仲間思いというものだろう。


そんなこんなで依頼を受けて、仕事をして、時々喧嘩?をして……と平穏に、若葉マークな冒険者として経験を積んでいた。



・・・・・



今日も今日とて誰もやりたがらない依頼をこなす。


午前中は庭の木の伐採。風魔法でさっさと終わらせてしまったので、もう一件依頼を受けるようだ。

そして選んだ依頼は「排水溝が詰まったので見てほしい」だ。これで大体三ポイント稼げる。

依頼主はギルドから近い場所に住んでいる、おばあちゃんのマリアーンさんだ。

共用で使っている洗濯場の排水の調子が悪く、何か詰まっているようなら取ってほしいということだ。完全に詰まっているわけでもなし……ということでこれもしばらく放置されていた依頼だ。

早速受付に持って行って受注する。


ギルドの近く……とは言いつつも一本路地を挟んだ裏路地は、居住区域となっていて生活感があふれるところだ。

依頼主のマリアーンさんは洗濯場のお隣に住んでいて、赤い扉(とは言いつつもほとんど塗装が剥げている)が目印。

ルネアがドアをノックしたらthe・優しいおばあちゃん!なおばあちゃんが出てきた。バブーシュカがよくお似合いで。

依頼を受けに来たことを話したら大興奮である。元気だな。その勢いのまま洗濯場に移動。


マリアーンさんの黄色い悲鳴を聞きつけたご近所の人も出てきて、洗濯場はあっという間に人でいっぱいになってしまった。やっと来た救世主にマリアーンさん他、洗濯場を利用する女性陣からの黄色い悲鳴がよく響く。ルネア顔いいもんね。めっちゃわかる。

ちなみに私は洗濯場の屋根に待機だ。特にハルピュイアが活躍する場面なんてないし。何人かは私の存在に気付いたようだが特に気にするそぶりはなかった。近くに住んでれば「ハルピュイアを連れた冒険者」がギルドに出入りするところはよく見ているはずだからだ。


早速依頼開始ということで、腕をまくって排水溝に腕をっつこむ。


腕を突っ込んで動かすことしばらく。


ルネアが何かをつかんだらしい。つまりの原因かもしれないとの事。

そのまま引っ張れば、排水溝から出てきたのは、タオルの塊と……でっぷりと太ったネズミの死骸……。

うえぇ……。きも……。


洗濯場は黄色い悲鳴から一転して大絶叫である。

ルネアが一切動じないまま、念のために雷魔法でネズミを感電させている。


ともかく。これを取り除いたことで排水溝のつまりはすっかり治ったようだ。水がするすると流れている。

ルネアがタオルとネズミをほどいている間、ご婦人が、



「ちょっとヤダ。あのタオル、フローレンスのじゃない?」

「うっかり流されたって言ってたわ」

「あんたのなんだから受け取りな!」

「いやよ! ネズミの絡まったタオルなんてっ!」



と話していた。

タオルに関してはそれはそう。ネズミの死骸だもんね。汚い。



「タオル、どうしますか」

「捨てといてっ!」

「じゃあネズミと一緒に燃やしときますね」



というわけで、ねずみは排水溝を共に過ごしたタオルとともに火魔法によるお焚き上げ……もとい焼却処分となった。南無。

ネズミを引き出したせいで大混乱となったが、依頼は達成された。

依頼主のマリアーンさんがルネアの前に出てくる。



「ルネアちゃん、ありがとねぇ」

「いえ……」

「はいこれお駄賃。ギルドには内緒だよ。あと、これとは別にお風呂代ね」

「そんなに貰えませんよ……」

「若いのに遠慮しちゃあダメよ!」

「え、えぇ……」

「洋服は洗濯して乾かしておくから、旦那の服きて浴場に行ってきな!」



押し切られる形でお金と洋服を押し付けられる。どこでもおばちゃんたちは強し。ルネアはたじたじである。

まだ日は高いがそろそろ夕方、といったところだ。今日はもう休んでいいかもしれない。

ご婦人たちがきゃあきゃあいいながら洗濯場から帰っていく姿を見ながらルネアの隣に降りた。



ギルドマスターがありがたがって上乗せをしてくれるとは言え、最低ランクの依頼達成時の料金は雀の涙だ。


格安の宿に泊まって出費を抑えようとしても、それなりに痛いのだ。少しでも出費を抑えてお金を貯めて、冒険者としての身なりを整えるには金がかかるのだ。ここにきても結局金がものをいう。悲しきかな貨幣経済。


服こそルネアに合うサイズだが、防具があまりにも心もとない。衣服以外に防具なんてないし、せいぜい身を隠すのにちょうどいい大きめのローブぐらいだ。

衣服にしてもハルピュイアの爪が鋭いせいで引っかけて破けたりも何度かあるから、いい加減革製の手袋的なものが欲しい。鷹匠みたいなやつ。それをルネアの肩につけて私がその上に乗る。完璧。



依頼達成したのでギルドに帰還。

受付のお姉さんに依頼達成を報告して、報酬を受け取る。

ここを拠点にして動き始めてしばらく時間が経つが、ポイント的にもそろそろランクが上がってもいい頃だろう。

早くF級になってお金をもっと稼いでほしいところだ。



・・・・・



毎日冒険者業をするのは大変だし、たまには息抜きも必要だ。

というわけで今日は息抜きの日である。ルネアは今日は依頼を受ける気分ではないらしい。自由でいいね!


そんな自分たちが今何をしているのかというと、ハルバスにある図書館にお邪魔している。

ちなみに私は図書館の屋根で待機中である。

一緒にいる癖でそのまま図書館の中に入ろうとしたら、管理人と思しきメガネのおっさんにえらい剣幕で追い返されたからだ。私が。


イヤーやばかったね! ホウキもって台所の天敵(四文字の黒い虫)を殲滅せんとする勢いだったよ。

よくよく考えたらハルピュイア以前に、管理が大変な図書館に動物はNGだわ。うっかり。

ルネアはキレかけていたが、その後ルネアに向き直ったおっさんに叱られたせいで気勢をそがれたようだ。


別に(やり方はともかくとして)不当な扱いどころかおっさんの仕事を考えれば正当な行動なので、おとなしく外で待つことにしたのだ。

閑話休題。



ルネアは私に気を使ってか、窓から見える位置で本棚から持ってきていた本を読んでいた。

本の題名は……「ハルピュイア並みのバカでもわかる! 魔法の適性の見分け方!」「ハルピュイアでも理解……できるかもしれない! 四種属性魔法の使い方!」「ハルピュイアでは使えない! 基本の魔法!」「現代魔法と古代魔法の違い」などなど。魔法の本ばっかり。席に持ってきていた本のほとんどが魔法使いの素質がある子供向けの本って感じ。

本の題名にいちいち「ハルピュイア(バカ)でもわかる!」とついているのがなんだか癪に障るが、ルネアは集中して読み込んでいる。


ブロッゼ河川の主を雷一撃で倒したんだから、別に必要なくない?

なんて思わなくもないが、初めて会った時やルッタ王国から発つまでの間も魔法の本を読んでいたみたいだし、何か苦手な魔法があるのかもしれない。

そう考えるとルネアはとっても勉強家だ。


図書館に行く前に買っていた羊皮紙?に図書館に置いてある羽ペンとインクで本の内容を写し取っている。

羊皮紙はそれなりに買い込んでいたが、A4ぐらいの大きさ十五枚で金貨一枚だからそれなりにお値段がする代物らしい。なけなしのお金を羊皮紙につぎ込んでしまったので貯金は再びゼロに等しくなってしまった。私は別にいいけど、ルネアが困るからやめてほしい。


とにかく、あらかた内容を写し終えたルネアは図書館から出てきた。

笛で私を呼び寄せたルネアの片腕には羊皮紙の束を抱えている。いっぱい魔法について書かれている。ルネアは満足そうだ。



「ノレイア、草原行こう」

「ギュ?」

「魔法の練習です!」



足取りが軽いまま草原へレッツゴー!



・・・・・



というわけで、再びの草原。マジ平和。最高。

ルネアは私を連れて草原のはずれにある森っぽいところへ来た。

どうやらここで魔法の練習をするようだ。

羊皮紙をめくって何をやるか確認している。



「……。まずは、自分の魔力の流れを知る……。これはやったことがあるけど、やってみるか」



この一言で練習が始まった。

とは言いつつもハルピュイアの私に魔法は無縁なので、つかず離れずのところで遊びだしたわけだが。

その辺に落っこちている枝をいい感じに集めて、自分の巣もどきを作ってみたり、別の鳥の巣にお邪魔したり。

この体になってから「楽しい」と思うハードルもだいぶ下がったんだよなぁ……。やっぱり魔物、人間とは違う知的な生き物じゃないからなのかもしれない。


そういえば……。すっかり忘れていたが、自分のスキルに「神話の獣」なるものがあったような気がする。

あんまり気に留めてなかったけど、この際だからルネアと一緒に自分も確認してみるか。

ルネアが魔法の練習をしているのを横目に私は空中に浮かぶウィンドウを見てみる。


私のスキルと称号の一つ、【神話の獣】。

これがなんなのかわからない。

……というか、ステータスにも鑑定、使えるんじゃね?

やってみるか……「鑑定!」



【神話の獣】

このスキル・称号を完全に解放するには条件が必要です。



なるほど。で、条件は?



【条件】

・レベルが100になっている

・人を食べる(3人以上)



……ま、マジ?? これ??

人を食うって……。魔物だから人を食うのは本能的に分かってはいるが、中身が人間だったせいで人を食べることには嫌悪感が出る。というかそれのせいで未だに人間は食べたためしがない……が、生まれたばっかりの時に母親から与えられていた愛のゲロ、肉も混ざっていたような……。いやまさかね……。ないない。カウントされてないみたいだし、セーフセーフ。


実際問題、コレ、解放したらどうなんの??



【神話の獣】

解放されると「神話の獣」として目覚め大幅ステータス強化、形態変化を獲得します。



分かるけど分からん……。「神話の獣」自体の力そのものが分からない。

字面そのもので見れば神話に出てくる獣そのものになれるということだろうか……?

これが解放されると、形態が変わってそれに伴いステータスにも変化が起こるってことしかわからん……。

コレばっかりは解放してみないと分からない。人を積極的に食べる予定はございません。一旦封印。


何も収穫なかったな。すぐに終わった。

そういえばアイテムボックスも最近整理してないな。

自分で引っ張り出すまでは何が入っているかわからないから、忘れたものも入っているはず。

だいぶごちゃついている感じしかしないぞ……。がんばれ私!

・共用の洗濯場

水を大量に出せて、排水がしっかりしている場所でのみ洗濯が許されている。後は単純にポンプの設置場所が少ない。飲み水用と洗濯用では水が違うので、間違えて飲まないように注意。たまに流されたタオルや配管を通っていたネズミが詰まることがある。


・図書館のおっさん

あの人は悪くない。仕事を全うしただけ。ここに限らず、ビトリック王国の図書館では写し取りのためのインクや羽ペンを貸し出してもらえる。紙は持参。貸し出し用のインクは特殊なインクであり、蔵書にはすべて魔法がかかっているので本に落書きをすることはできない。


・ハルピュイア

バカの代名詞。ハルピュイア自体は別に頭は悪くない……どころか魔獣の中でも屈指の知能を持つ。しかし、その頭の良さを悪用し、害悪な行為をするせいでそういうふうにみられてる。サルとかカラス枠。


・「神話の獣」

神話に出てくる怪物や伝説の獣、伝承で語られる存在って大なり小なり人間食べてますよね。そういうことです。

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