黄金と本性
ラガス編やっとひと段落です。次からルネアとノレイアの話です。
彼らが出会うまであと少しです……!
時間がなかったのでちょっと雑です。すみません。
頬擦りする中、空気が変な感じに気が付いたわけだが、なんで変なのかはよく分からなかった。
てか、今は戦闘中じゃん! 黄金にメロってる場合じゃねぇ!
っと思ったが、周りの目線がなんだか冷たい……というよりも、自分の恰好にドン引きしている目線だ。
……。あ! 上着の下、服着替えてなかった!
爺に散々「目立つから着替えろ」って言われてたのに! どうせ脱ぐ場面なんてないだろとか思って着替えてなかった。
下の服はファルロテ大陸の中でもオーソドックスなやつ……だけど足の形が違うから膝ぐらいのやつを履いてるけど、上は完全に身に着けていない。
つけているのは王族がつける、さまざまな力が付与された大量の黄金の装飾品だけ……。
モージ王国以外では黄金と香辛料は極めて貴重だから気を付けろって有名だったけど、そういうことか。
その程度の黄金で目を変える時点で、黄金がどれだけ貴重なのかが分かる。
まぁいいや。
これで魔法の発動に必要なものはすべて揃った。
「俺さ、黄金がだーい好きなわけ」
そう言って体を起こす。
その上半身に衣服は身に着けていない。獣人特有の毛皮があるだけだ。
しかし、体を覆うように大ぶりな黄金のアクセサリーをいくつも身に着けている。
特に首から胸元にかけての大きな装飾品は精巧な獣の細工が施され、異様に目立つ。
また、ターバンを巻いていたことで隠れていた耳には、ファルロテ大陸では貴族以上の階級でなければまず見ることのできない黄金と宝石を使った耳飾りをつけている。
その異様な意匠だけで彼がファルロテ大陸の住人でないことは明らかだった。
盗賊たちはその姿に色めき立つ。黄金を身にまとうのは間違いなく権力を持つものだからだ。
冒険者たちもその姿に唖然とする。
ダンジョンで何度か黄金のアクセサリーは見たことがあったが、ラガスの着けているようなデザインは見たことがないからだ。
「特にこの黄金の細工がきれいだろ?」
指を刺されたところに促されるまま視線は細工に導かれる。
あまりにも精巧すぎる獣の装飾。
口を開け咆哮をするような表情だ。
「この装飾はさ」
「俺の国で悪いことをした犯罪者なんだ」
あっけらかんと言い放つ。よくよく見ればそれはあまりにも苦悶に満ちたものだ。
「そのまま死ぬのももったいないなーって思ってさ。俺の力で体を黄金にしたんだ。首以外は加工して金塊にしてそのまま資源になった。今頃国の国庫に保管されてんじゃない?……ああ、もちろん首はそのままじゃ使えないから小さくしたけど」
自国の民を「資源」としてしか扱わないその姿勢に、冒険者たちは自分たちに一切興味がなかったラガスの挙動に嫌でも納得せざるを得なかった。
「その中にも、当然お前みたいな盗賊もいたわけだけど」
「……っ!」
自分がそのアクセサリーの一つになるのを想像したのか、盗賊の顔色が変わる。
それにかまわず言葉を続ける。
自分の杖が手元にある。
生きている奴の数もほどほど。
気分は絶好調。
全ての条件がそろっている。
ラッガスティーナは朗々と語りだす。
「俺の使う魔法の中で一番得意なのは、『俺の体が触れたものすべてを黄金に変える』魔法」
ラッガスティーナの杖が光りだす。
その杖の先には小さな光が灯る。
ただの光ではない。黄金の光だ。
朝日のような、夕焼けのような。
すべてを染め上げる金色の力。
「そして変化させた黄金は俺が自在に変形させることができる」
明るい表情、声色で話す獣人のなんと恐ろしいことか。
「俺の魔法、刮目しろ」
あっけにとられるのも構わずラッガスティーナは続ける。
それは詠唱であった。
「『増えよ。満たせ。黄金の豊穣は今、目の前に』」
ラッガスティーナの手から黄金の光があふれ、光が触れた地面は黄金に変わっていく。
そして、杖の先にある黄金の光はさらに大きくなり輝きを増す。さながら小さな太陽のようだ。
「『黄金の川!』」
唱えた瞬間。
ラガスが黄金の光を投げつけるかのように腕を振り切り、それに呼応するようにそれは炸裂した。
刹那よりも速い光は周囲を染め上げる。
すべてが黄金に包まれた。
薄暗い洞窟も、武器も、ましてや生きた盗賊も関係なくすべてが金に包まれる。
恐ろしさを感じた盗賊は我先にと背を向け逃げ出したが、黄金の光と黄金の波がはるかに早く包み込む。
体が動かなくなる。
逃げなくてはという意志だけがはっきりと残った。
一帯を黄金に変えたのち。ラガスは何の感傷に浸ることもなく、
「盗賊、捕縛しておきますねー」
と言い放った。
後にそのすべてを見た冒険者はのちにこう語った。
「初めて黄金をおぞましく思った」と。
・・・・・
「あーあーあー……。こんなに溜め込んで……」
何をしているのか。
盗賊が溜め込んだ品物の選別と、黄金になった人間たちの回収だ。
全てを黄金に変えて気がついたが、明らかにやりすぎた。盗賊だけじゃなく洞窟全体が黄金になっている。
久しぶりに使ったものだからだいぶガバガバになったらしい。
それはいい。
問題は、ダンジョンと化した洞窟のフィールドごと黄金になってしまったことだ。
おかげで生存者を探すことができない。
死体も生者も黄金になると、俺でも見分けはつけられない。いちいち解除して確認するしかないのだ。
そんなことをやっている暇は正直、無い。
とにかく一刻も早くギルドに連絡して調査をしてもらうことが優先だからだ。
黄金化したものは、黄金化されるものが死者や生者にかかわらず、「モノ」と判定されるためアイテムボックスに収納して運ぶことができる。
牢(ここも黄金の川の効果で黄金になった)にいた生存者?と思しき人型の黄金をアイテムボックスに収納していく。救出した冒険者以外の冒険者ももれなく黄金になっていた。
他にも荷馬車の乗客やそれよりも前に幽閉されていたと思われる人たち、魔道具の力で操られていたであろう人たちも、すべてが黄金になっている。
下手に怪我をしていると治療や落ち着かせるのにも時間がかかってしまうので、そっちの方がいいだろう。黄金化すればその部分もひっくるめて黄金になるので悪化することはない。
冒険者ギルドや関所にはポーションがあるって聞くし、落ち着いて治療を受けられるはずだ。
街についたらすぐに解除するから我慢してほしい。本当にスマン。
そう思いながらどんどんアイテムボックスに収納していく。
そして、冒険者パーティーと手分けして回収してきた品物は黄金を解除して、発見した荷馬車のに詰め込んでいく。
奇跡的に荷馬車を引っ張ていた馬や荷馬車そのものは無事で、盗賊たちが引っ張て来ていたらしい。洞窟の外、入り口につながれていたのを冒険者パーティーの一人が発見した。
荷馬車を引っ張っていた馬はすべて見つかったが、荷馬車そのものは一台しか見つからなかったらしい。
あらかた洞窟を歩き回り、黄金化した人や他に見落としたものがないかを入念に確認する。
黄金化した人たちはすべて回収できたし、これで全部だろう。
荷馬車の乗客や操られていた人たちを合わせれば、三桁近くなっていた。
そして、残る問題は……。
「この盗賊、どうします? アイテムボックスに入れておきます?」
「いや、街まで歩かせる」
「あっ。そうですか」
盗賊の扱い。
そう、こいつらを俺のアイテムボックスに入れるか入れないか問題。
俺としてはダンジョン化した洞窟のことをすぐに報告したほうがいいから、アイテムボックスに入れてさっさとハルバスに行った方がいいと思うのだが、冒険者パーティーたちはそういうわけではないようだ。
「俺としても、盗賊に慈悲を与えたくないのは山々なんすけど……実はそうもいかなくて」
「なんだと?」
「この洞窟、ダンジョンになってるっぽいんですよねぇ~」
静寂。
「「はあああああ???!!!」」
「やっぱりそうなった!」
「ど、どういうことだ!」
「いや、この洞窟、ゴブリン出てきたじゃないですか。それの対処を俺はあんたたちに頼んだ」
「そうだな」
「死体、残ってます???」
その一言で黄金の洞窟を見渡す。が、いくら見渡しても、自分たち討伐したゴブリンたちの姿が見えない。
「……」
「……。そういうことです……」
「野生のダンジョンに、盗賊騒ぎ。おまけに魔道具によって人を操り、人身売買疑惑……。問題が多すぎる」
「ですよね!!!」
俺もそう思う。
洞窟がダンジョンになったのが先か、盗賊が洞窟に住み着いたのが先なのかは知らないが、こうなった以上無視することはできない。
幸い、フィールドは黄金の川で固定しているから、これ以上ダンジョンとしての成長は緩くなるだろう。調査が入れば解除するので安心してほしい。
とにかく、一刻も早くハルバスに行かなくてはいけない。
とは言いつつも、この洞窟……もとい野営をしていた場所はパーパルとハルバスのを結ぶ街道の中間地点だが、ハルバスに向かうには森を超える必要がある。
この森が面倒で、人を好んで食らう魔獣の縄張りがあり、それを大きく迂回するルートになっている。
地図上の距離では直線距離で中間地点ではあるものの、実際の道では三分の一ほどしか進んでいないのだ。
ここから荷馬車を飛ばしに飛ばして三日はかかる。俺の足で縄張りをガン無視すれば一日程度で到着する距離。
パーパルへ戻る手もあるが戻るにしても同じぐらい時間がかかる。だったらハルバスまで行った方がいい。
その間、黄金化した洞窟が変な奴らに見つかってまた問題が起こるとも限らない。
どうしたものかと頭を悩ませる冒険者たちを横目に、自分の持ってる魔道具を思い浮かべた。
「……ここから、自分が走るのと同じ速度でハルバスに行ける手段があります」
「何っ? それは本当か」
「はい!」
自分の異邦人丸出しな恰好はすでにばれてるし、もういいや。
ということで、俺が所有する魔道具を使ってハルバスまで飛ぶことを提案する。
「俺のターバンに乗って、ハルバスまで行きます!」
「「???」」
盗賊の長ともみあいになっているときにとれてしまったターバン。これは魔道具だ。名前は特に付けていないが。
ターバンの上に乗り、魔力を流すと、かなりのスピードで空を飛べる。ターバンに乗る者たちの魔力を動力源とするので長時間乗ると魔力切れで疲れてしまうのが難点だか、短距離をすばやく移動したいときに重宝するものだ。
「このターバンは乗っている人間の魔力を動力源として空を飛ぶんで、空を飛べば街道関係なしにハルバスまで行けますよ!」
「……す、すごいなぁ」
「本当に乗っていいのかい?」
「緊急事態なんで手段はいっていられませんよ」
早く早く! とせかして冒険者パーティーを乗せる。
黄金化した盗賊連中、荷馬車は俺のアイテムボックスに収納する。心苦しいが、馬たちも黄金にしてアイテムボックスに収納する。これでアイテムボックスはパンパンだ。
地面に敷いたターバンに冒険者たちが座ったのを見て、俺もターバンに座る。
「じゃ、ハルバスまで飛ばしますよー」
「……た、高い所、無理っ!」
「そんなこと言ってる場合じゃないだろ!」
「目ぇ閉じとけ」
搭乗者の魔力を吸収したターバンは重さを感じさせずにふわりと浮き始める。
そのまま勢いよく、ターバンはハルバスまで飛び始めた。
・ラガスの魔法「黄金の川」
自身の体が触れている部分を黄金にする……だけでなく、黄金化させた黄金は好きなように変形・加工ができる魔法。黄金に見せかけた「なにか」ではなく、資源的、金銭的価値をもつ本物の黄金。黄金が好きすぎるあまりに開発した。生きた人間に使用すると黄金化しても自我が残るようだ。どこまで加工されたら消えるのかは未実証。凶悪極まれり。
・ターバン
モージ王国は黄金、香辛料以外にも魔道具の開発が盛んにおこなわれている。
ターバンは糸や編み方に魔力や魔術を込めることで作成された。搭乗者の魔力をエネルギーに飛ぶ。結構早い。
ラガスはアイテムボックスに魔道具をいっぱい入れてファルロテ大陸に来た。全身に身に着けている黄金の装飾品も魔道具の一つ。ダメージ軽減とか身体強化とかのバフがかかっている。




