4 半日で作った地下都市がとんでもないのですが
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「にしても、また此処も凄いところだな」
真っ暗な鍾乳洞を、ミリアが召喚してくれた光の低級精霊に先導されるようにして先に進む。
「昔はドワーフの王国があったんだって」
「へぇ。それは知らなかったな」
「もう何百年も前の話だからね。もともと不気味って理由で誰も寄り付かなかったけど。魔王が復活してからは、格好の魔物の巣になっちゃって、より近づけなくなった。それで忘れられちゃた感じだよね。私が行った事があるのも魔王が復活する前」
さらっと言ったミリアの言葉に、戸惑いを感じた。
「魔王が復活する前って、ミリアって……」
「うん?」
「やっぱりいいや」
喉元まで出た疑問を引っ込める。
「今、年齢訊ことうとしたでしょ?」
「あ、いや……」
「本当は人間に言うのあんまりなんだよね。皆、何とも言えない顔するから。でもラウルは特別に教えてあげるね。嫌いにならないでよ?」
ミリアは不安そうな顔をこちらに向けた。
「嫌いに何てならないよ。エルフがびっくりするぐらい長寿って言うのは有名だし」
「なら、良いけど。私は238歳。人間の感覚だとおばあさん通り越して、なんだかって感じでしょう? でも、私はこれでも村では子ども扱い」
「それは何となく分かる気がする」
「私って子供っぽい?」
「可愛くて良いと思う」
そう言うとミリアははにかむ様に笑った。
2
「これは……」
目の前に広がった光景に度肝を抜いた。まず地下だと言うのに地上の真昼と見間違うほどの明るさに驚く。
その原因は空洞の中心に聳える巨大な何かにあった。強烈な光を放つそれを、目を細め、よく見ると木の根にようにも見える。
「森の中で一番大きな木、大昔に誰かが埋めた世界樹の苗木だって言われてるけど、それの根だと思う」
自分の視線の先に気付いたミリアがそう説明してくれた。
それにしても広大な空間である。そこには川はもとより地底湖まであった。王都と同規模街など幾らでも作れてしまいそうな広さだ。
「よし! 始めるか!」
空間を見渡せる小高い丘の上に立ち、気合十分にそう叫ぶ。
やはりモデルとするなら、王都であろう。
――まずは道を整備して、それから上下水道と……
けれど、実行する以前のあまりに早い段階から行き詰まってしまった。リストにある殆どのものが何なのか分からない。
民家やケーキ屋さんを召喚した時にステータスにあった『発電所』やら『都市ガス』すらも何なのか分からないのだ。
分かるのは、これが必須にあたるインフラの一部だろうことぐらいだ。
――そうだ、またさっきのケーキ屋さんに教えてもらおう。
などと思い付き、地下大帝国で最初に作ったのはケーキ屋さんとなった。
「市長さん、またこんな所に呼び出して、いい加減にしてくださいます? ホント」
「ごめんなさい。ちょっと手伝って欲しくて……」
2
物知りなケーキ屋さんの助けを借りて、ついに計画は実行となった。
主にリストの意味不明な用語についてケーキ屋さんに訊きながら、街の骨格を決めて行く。そして作業するたびにケーキ屋さんはアドバイスをくれた。
その殆どが、『発電所を迷惑だから街中に作るな』とか、アドバイスと言うより文句に近いものであったが、素直に助かる。
広大な土地に、自分でもびっくりするような巨大な魔法陣が次々現れ、常識的な感覚では広すぎるのではないか、思われる『道路』とか言われる道が出現する。さらに発電所や上水施設、下水処理施設などの大型の施設が次々と召喚された。
「私は車を持ってないから、バス停や鉄道も欲しい」
「車って何? バス停? 鉄道?」
こんな調子で必要なものが、どんどん整備されて行く。お金がごっそり減った。気付けば所持金の2/3くらい使ってしまっている。
「まぁ、こんな所ですかねぇ、最低限。あとは市長さんが頭を使って住民から出る苦情に真摯に向き合ってください」
そう言って溜め息を吐いたケーキ屋さん。
「ハイ……」
って言うか、ケーキ屋さん凄すぎでしょう。
「あ、最後に、私のお店をあの辺に移してもらえません?」
「はいはい」
言われるがままにケーキ屋さんを移転し、今日の作業は終了となった。
「それにしても……」
目の前に広がった光景は圧巻だった。開いた口が塞がらないと言うべきか。
この時点で街の規模は王都の10倍くらいはある。
空いた土地には、次から次へと魔法陣が勝手に開き、建物が増え、見る間にヒトが増えて行く。
勝手に召喚される建物の中には見たことも無いほど巨大なものもあり、見上げるような高さのものまであった。
『道路』と呼ばれる道に、鉄で出来た『車』と呼ばれる乗り物が走り、『線路』と呼ばれるラインをさらに巨大な鉄の乗り物が走しる。
この街は既に、この世界のどの街よりも発展しているのではなかろうか。
これを今日半日で自分が作ってしまったのだ。
そして、こうしている間ににも街は凄まじい速度で成長して行く。
思った以上にとんでもない召喚リストだ。まさに『神の玩具』としか言いようがない。
隣にいるミリアも、唖然と目の前の光景を見つめていた。
「少し……街をあるいてみるか?」
「う、うん……」
街を歩くと更に驚いてしまう。ここにある何もかもが常識外だった。恐らく数百年規模で先の技術が導入されていると感じる。
とんでも無いものを作ってしまったと思った。この街にある物だけで、十分に世界を変えてしまえる。そう感じたのだ。
けど、同時にこの街自体が、自分がこれから建てる『本物の国』にとって大きな糧となるだろう。
自分が治める国に徐々にここにある物を還元して行こうと決めた。
そんな事を考えながら歩いていると、ミリアが不意に
「あっ! さっきのケーキ屋さんに、もうケーキが沢山並んでるよ!」
と嬉しそうにそう言った。
「じゃあ、手伝ってもらったお礼もかねて、沢山買って帰るか……」
「うん!」




