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5 お家の風呂が使える様になりました

「そう言えばせっかく地下にインフラ整備したんだし、昨日召喚した家とそれを繋げるか」


 ふとそんな事を思いつき呟いた。


 村にもどり直ぐに実行に移す。地中ケーブルやパイプラインなど、地下都市を作る際に使用したそれを、召喚すれば行けるはずだ。


 ムーアど地下大空洞が地上からどの程度の深さに存在するのか分からなかったため、不安ではあったが、あまりにあっさりとそれは繋がった。

 

 地下都市と繋がったため、家に付いていた謎のボタンなどの機能が全て使用可能になった。


「これは……!?」


 村人たちは、家の蛇口から水やお湯が出る事に感動し、ボタンを押すだけで火が付く謎の装置に驚愕し、食料保存用らしき冷気がこもる箱に感嘆の声を漏らす。さらに色々なもの全てに、驚きを伴った様々な反応を示した。


「いったい、どんな魔法なんですかこれは!?」


 それを笑ってごまかす。


――本当にどんな魔法だよ


 確かに魔法を使った、似たような道具があるものもあったが、便利さが違った。食料を冷やして保存するための魔法を使った箱などは王都でも良く使われている。


 けど、此処まできっちり区画整理がなされ、それを別々の温度を指定して管理できるなど聞いたことがない。


 村人に電気なるものとガスなるものを説明し、水を含めて使用するとお金がかかる事を説明した。


 これには反発が起きるかと思ったが、便利さの影に微々たる問題だと納得してもらえた。


 家にもどり、大量のケーキの前にキラキラと目を輝かせるミリア。そしてあっと言う間に食べてしまう。


 自分の方は途中で胸やけを起こしてしまった。物欲しそうな顔をするミリアに自分が食べきれなかった分を差し出すと、


「え? いいの? ラウルって優しいんだぁ」


と、屈託のない笑顔を浮かべる。


 それから他愛もない話をして過ごし、そろそろ寝ようかと考えていた矢先、ミリアは思い出したように言った。


「せっかくだしお風呂、使って見ない? あれってそうだよね? 実はこの家見た時から気になってて」


 二人で浴室に行き、使い方が良く分らないが、何となくそれらしいボタンを押す。


「自動って書いてあるんだから、これ自動でやってくれるんだよな?」

「さぁ……」


 ミリアが首を傾げた直後、お湯が湯煙をたてながら浴槽へと注がれ始めた。


「凄い……」


 お湯が溜まりきるまで、それを眺めて過ごす。慣れてしまえばそんな事はしないのかもしれないが、見ていて飽きなかった。それはミリアも同じらしく、溜まっていくお湯に腕を突っ込み、


「すごいすごい」


 と連呼する。


 やがて、軽快が音楽鳴り響き。


『お風呂が沸きました』


 と声が聞こえた。


 それに二人して驚いてしてしまい、思わず肩がビクリとなる。


「風呂が喋るとは思わなかったな……」

「本当だよね」


 驚いた顔を互いに見合わせて、何となくそれが滑稽で二人して笑ってしまう。


「ねぇ? 折角だし、一緒に入る?」


 ミリアが唐突にそんな事を言った。


「え?」


 全く予想外の展開に身体が固まってしまう自分。


「もちろんタオル撒くよ? ラウル顔真っ赤」

「いや、だって……」

「私達ってそう言う関係だよね? と言うよりこうやって一緒に住んじゃってるし、村の人達は私達の事、夫婦だと思ってるんじゃないかな? じゃなきゃ多分大変な事になってる」

「そ、そうなの?」

「うちの種族ってそういうの厳しいの」

「だから、私達は村の公認。ラウルは王様になるんだから、私は御妃様だね」


 そう言ってはにかむように笑ったミリアの笑顔に、ドキりとしてしまった。なんだかとても嬉しい。けど……


「逢ってから、そんなに経ってないけどミリアはそれでいいの?」


 訊かずにはいられなかった。


「そんな事言ったら、逢ってからあまり間もないのに、ラウルは王様の前で私の事を好きって言ってくれたでしょ?」

「それは……」

「村を出てから散々な目に遭ったし、助けられたって言うのもあるのかもだけど、私はラウルが好き。私の事を大事にしてくれるラウルが大好き。凄い感じてるよ? 大事にされてるのが分かる。だからねラウル、いつか言おうと思ってたんだけど、私の寿命半分を貴方に貰って欲しい」


 恥らうように視線を逸らして言ったミリアの言葉の重さに、さっきまでの浮ついた緊張が引けて行くのを感じた。


「それって……それじゃミリアが」

「私達の殆どは一生で一人しか愛さない。なのに私の人生の大半がラウルがいない時間だなんて、そんなの私は嫌だよ。返事は直ぐにじゃなくていい。きっとラウルにとっては凄く大きな覚悟が必要だと思うから」

「……」

「でも、お風呂ぐらい一緒にはいろ? それぐらいは直ぐ決められるでしょ?」


 そう言って瞳を細めたミリアは、いつになく大人びて見えた。


2


                                                     

 翌日、目が覚めるとステータスに大量の地下都市から苦情が届いている事に頭を抱えた。人口を見ると昨日の10倍近くに跳ね上がっている。それに伴って、『病院を増やせ』だの、『道が渋滞している』だのの色々な問題が上がって来ていた。


 税収の方はすさまじい勢いで増え続けている。


――午前中の内に対処しなきゃだな……


 今日の午後には早速、森林内に点在するエルフ集落から村長達が集まって来ると言う。それまでに片付けなければならない。


 ミリアと共に再び大空洞に足を運び、目の前に広がっていた光景に絶句した。


 街の中心部には、大空洞の天井を突き刺すが如き高さを持った巨大な建物が密集し、それを囲うように広がる居住区や工業エリア、商業エリアなどには既に空が無い状態だった。


 街にはヒトが溢れかえり、道路と呼ばれる道は鉄の乗り物がと至る所で、列をなし詰まっていた。


 たった一晩で此処まで街は成長したのだ。


 これでは問題も起きるはずである。


「さて、やるか……」


 こうして暫く、大森林に住む亜人達との交渉の合間を縫って、地下都市の整備を行うのがラウルの日課となる。

 

 住民たちの苦情に只ひたすらに対処し、支出と税収のバランスにうーうー唸る悪銭苦闘の日々の中で、徐々にラウルは要領を得て行くのだった。



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