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8 獣人族の長と勝負したら猫耳娘が仲間になりました

1


「これは本当に済まない事をした、恩人と敵を見誤るとは。確かにお主以外は全員エルフだ。頭に血が上って周りが見れておらんかった」


 そう言って頭を下げた族長。そして続けた。


「村の惨状ははわしの落ち度だ。魔王が討伐されて少しうかれていた。狩に男衆全員を連れて行くべきでは無かったと後悔している。皆が無事で本当に良かった。

 魔物がいなくなった今、人間共がこの森で亜人狩をしやすくなったのだろう。特にエルフや獣人の女は奴等の間では高値で取引されてるらしいからな。悲しいことだ」


 族長の瞳に怒りとも憂いともつかない感情が浮ぶ。


「して、今日は何用でこられた? まさか偶々通りかかった訳ではあるまい」


 フィリスが自分にかわり事情を話すと、族長はあからさまに目を見開き、此方を見つめた。


「魔王を倒した英雄が、エルフの女子を娶り亜人の地に国を建てるだと!? これは誠に愉快! いや、褒めているんだぞ? どうだ? 王になったあかつきにはうちのニーナも側室に向かえんか?」

「ちょっ! お父さん!?」

「強い男は良いぞ? この父を見ろ。皆この父を慕っておるわ!」


 族長が言った瞬間、後ろに控える女性たちが一斉に頭を下げた。


 獣人の長が一夫多妻なのは有名ではあるが、実際にみるとこれは中々に凄い光景だ。


「そうやって調子に乗ってると、イグニに足元すくわれるんだから」

「世代交代とは必ず起きるものよ。このわしが、イグニの父であるブラハを倒し、族長の座を奪ったようにな。だからその時は受け入れるまでよ。そして新たな強者の誕生はめでたき事だ。強い者が一族を守ってこそ繁栄に繋がる。だが、わしは後10年はイグニには負けんぞ!」


 その族長の言葉に人狼のイグニが苦笑いを浮かべる。だがその目は笑っておらず殺気すらも宿って見えた。


「では、建国の話は受け入れてくれるのですか?」

「今のを聞いていなかったのか? 我等は強きものに従う種族。我等を従えたくば力を持って示せと言う事だ。明日にでもこの村に、一族全てを集めよう。皆の前で見事このわしを倒して見せろ。それで誰も文句は言うまい。なに、あの魔王を城ごと灰にしたお主なら造作もないことだろう?」


 そう言って鋭い犬歯を剥き出しにして豪快に笑った族長に、思わず生唾を飲み込んだ。


2


 翌日、族長の招集により森中の獣人達が村に集まって来た。


 そして予告されていた一騎打ちが遂に始まる。


 村の中央、ちょうど昨日人質達が集められていた場所に族長と自分が対峙していた。その周りを獣人達の群衆が取り囲む。


 それ混じってミリア達もいた。


――完全にアウェイだこれ。


「ラウル頑張って!」


 ミリアの応援にぎこちない笑みで応える。


 目の前に立つ獅子の顔を持つ大男からは気圧されそうな程の覇気というか圧力を感じる。


――オーガより楽に交渉出来るはずだとフィリスは言ってたよな? これの何処が楽なんだよ……


 と言うことはオーガと交渉する時にはもっと酷い事になるのだろうか。


 召喚リストから何を呼び出して良いか分からない。下手に攻撃力が高いものを呼び出しては殺してしまう可能性があった。


 とりあえずトロールを倒した時に使った『ロケットランチャー装備歩兵・攻撃力:420』を選択する。トロールより弱いと言う事はないだろう。


 自分が杖を構えるのと同時に、族長も構えに入った。四つん這いの独特の構えは、まさに獣である。


「始め!」


 イグニの声が響き渡った。


 次の瞬間、族長から空間が震えたのではないかと錯覚するほどの凄まじい咆哮が上がった。その咆哮は獅子そのものだ。


 それによって僅かに杖を地に突きたてる動作が遅れてしまう。


 気付けば族長の姿は眼前にあった。鋭い爪を持つ右手が振り下ろされる。異様な速さだ。


 咄嗟の判断で召喚を止め、杖でそれを受けてしまう。


「げっ! 杖が折れた!」


 思わず裏返った声が漏れた。


 更に2撃目。もう受けるとしたら自分の腕しか残されていない。それをするととても痛そうなので、本能的に相手の腕を掴んでしまった。


 そしてそれをそのまま振り払おうと腕に力を込めた瞬間、族長の巨体があまりにあっさりと浮き上がる。そしてそのまま一回転して背中から地に叩きつけられてしまった。


 地響き共に巨体が沈み込み、土煙が吹き上がる。


――えぇぇぇ!?


 驚く程の静寂が訪れ、やがて一人が唸るような声を漏らすと、どよめきとなって群衆に広がった。


「だ、大丈夫ですか?」


 族長の顔を覗き込み手を差し出す。


 すると族長は素直に差し出した手を握り、もう片方の手で頭を押さえながら立ち上がった。


「まさか、そのような細い腕にこれ程の力があるとは……お主、レベルは幾つだ?」

「一応……999です」


 言った瞬間、族長が目を見開いた。同時に群衆の間に先よりも大きなどよめきが走る。


 声を上げ豪快に笑い出した族長。


「これは完璧に負けた! 勝てるはずがない!!」


 そう言って再び豪華に笑う。


 そして族長は唐突に片膝を突いた。まるでそれに習う様に一斉に群衆の獣人達も膝を突く。


「我が王よ。我等は今より貴方に忠誠を誓う」


3


 その後はエルフの村の時と一緒だった。空中回廊と地下鉄の設置を提案し、その日のうちに作業を済ませる。


 反応に関してもエルフの時とほぼ一緒だった。突如召喚された巨大構造物に畏怖し、地下を走る鉄の乗りものに驚愕する。


 これで、エルフの村から獣人達の村まで随分と来やすくなった。


 そして本日も夜は宴である。獣人達の酒の飲み方はとにかく豪快であり、エルフ達とは違い酔い潰れるまで只管飲むと言った感じだった。


 そして自分も飲まされてしまう。その後の事はあまり覚えていない。気付けばミリアに介抱されていた。


 そしてあくる日、酷い頭痛の中、村を出ようとすると族長に呼び止められた。その後ろには一昨日助けた猫耳の獣人ニーナがいた。


「王よ、どうか我が娘も連れてってくれ。オーガとの交渉にこの族長バサラの娘は役に立つはずだ。そのまま娶ってくれても構わない」

「ちょっ! お父さん!?」

「なんだ、昨日はお前もまんざらじゃないようなこと言ってただろう?」

「そ、それは……」


 族長が声を上げて豪快に笑う。


「獣人が強い男に惚れるのは本能のようなものだからな。恥ずかしがる必要はない。そしてお前は我が王より強い子を産めばいい」

「ちょっ! 何言ってるの!?」


 顔を真っ赤に染めたニーナが族長に連続猫パンチをくりだす。


 族長はそれを片手でうけとめ、再び豪快に笑った。


「ねぇ、ラウルまさかその気になってないよね? エルフの嫉妬ってとぉっても怖いんだからね? 一途なだけに重いんだよ? 知ってった?」


 そう言ったミリアの表情は怖いぐらいに笑顔だった。


「あら、エルフの細くて凹凸の少ない身体よりも、獣人の放漫な肉体の方が人間は好みって聞いたことがあるけど?」ふくよかな人なの?

「何ですって!?」

「二人とも仲良く……」


 言った瞬間二人に睨まれてしまった。


「「ラウルは黙ってて!」」

「あ、いや……ハイ」


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