7 猫耳の女の子を助けました
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それは獣人達の村を目指している時の出来事だった。
獣人の少女が、木々を蹴り渡りながら凄まじい勢いで飛び出して来たのだ。
「危ない!」
そう叫んだミリア。
何とか先頭を行くフィリスとの接触は避けれたものの、少女が大きくバランスを崩しそのまま突っ込んでくる。それを咄嗟の判断で受け止めた。
「大丈夫!?」
少女はボロボロだった。ただ事ではない。
「人間!?」
そう言うなり腕から跳ね降りて、身構えた少女。その身構え方が獣そのものである。
頭から突き出た猫耳をこちへ向け、四つん這いになり構えている。
「落ち着いて」
そう声をミリアが声をかけると。少女はうって変わって泣きそうな表情を浮かべた。
「エルフ……良かった……お願い! 村を助けて! 獣人狩りの奴等が」
護衛のエルフ達が顔を見合わせる。
「先に行って! 俺は大丈夫だから!」
恐らく自分を放置すれば彼等の移動速度は各段に上がるはずだ。
その言葉にエルフ達が頷き、木々を蹴りながら凄まじい速度で先に駆けて行く。読みは当たった。
「動けるか?」
「大丈夫」
「君はミリアとここに居て。俺も村に急ぐ」
そう言うと少女は激しく首を横に振った。
「私も村に戻る。ついて来て」
そう言うと少女は、エルフ達の後を追うようにとんでも無い速度で、森の奥へ消えて行く。
慌ててミリアと共に走り出した。
「いや、あんなの付いて行けないだろ……」
と思わず呟いたが、そうでも無かった。
レベル頭打ちによって異様に向上した身体能力。見よう見まねで木々蹴り跳躍する。
意外と出来るもんだ。
そして気づけば置いて行きそうになってしまったミリアを無意識に抱き抱えた。
その瞬間、「きゃっ!」と言う可愛らしい悲鳴が聞こえたが、構っている時間はない。
獣人の少女へと一気に追い着き、それを確認した少女がさらに加速する。
そして先行するエルフ達に遂に追い着いた。
そして目の前が開ける刹那、とっさの判断で攻撃力300から400クラスの『何か』をリストから適当に10くらい召喚する。
呼び出されたのは、やはり霊圧の欠片も感じない人間だった。彼等が森に散らばって行く様を横目で見つつ、エルフ達と共に獣人達の集落へと飛び出す。
村の至る所から悲鳴が聞こえていた。
見れば縛り上げられた獣人達が、中央に集められているようだ。
その周りで、いかにもと言う連中が獣人達を追いかけまわしていた。
レイピアを持ったエルフ達が切り込んでいく。それに続くように飛び出してしまった自分。
後方ではピタリと止まった残りのエルフ達が矢を放ち始めていた。ミリアもそこで止まり精霊の召喚を開始している。
そして思った。
――何で召喚士の俺が飛び出してるんだろ……?
それもつかの間。
「危ない!」
ミリアの声が聞こえた。
正面には、自分が後先考えずに突っ込んだ斧を持ったムキムキ大男が立っている。それが今まさに斧を振り下ろそうとしてた。
「うそ……だろ?」
思わず手に持っていた杖で力任せに殴りつけてしまう。
非力な召喚士の悪あがきにしか思えない攻撃は、次の瞬間信じられない結果を生んだ。
何かが破裂でもしたかのような音が盛大に響き渡り、大男が吹っ飛んで行く。そして男は十数メートル空中を移動し、そのまま背中から家屋の壁に叩きつけられ、崩れ落ちた。
「こうなっちゃうのね……」
非力な召喚士と言えどレベル999はだてじゃない。
獣人狩りの野盗達は、徐々に追い詰められているように見えた。
このまま押し切れると思った。
けれど、それは野盗の一人が大声で叫んだ一言によって、一変してしまう。
「それ以上動くな! 少しでも動けばこいつ等を殺す!」
集落の中心で縛り上げられた獣人達の前に立つ男がそう宣言したのだ。
それによって硬直してしまう一同。
が、次の瞬間あり得ない事が起きた。何処からか、パンッ! と言う破裂音が聞こえたと思うと、人質を取っていた男が倒れたのだ。
その後はあまりに一方的な展開となった。
森のいたる所からババババッ! と言う聞きなれない音が連続で響き渡り、野盗達が次々に倒れて行く。
そして、全てが終わると、森から緑色の服を着た男達が走り寄ってきて一斉に姿勢を正した。そしていつもの如くおでこの当たりに手を持って行く。
彼等は自分が集落に突入する前に召喚した者達だ。
「任務、完了しました!」
「あ、有難う……」
「では、私達はこれでっ!」
それだけを言い残し、男達は消えてしまった。
縛られていた獣人達の縄を解くと、一斉に歓声が沸き上がった。
今更ながらに気付いたのだが、女性しかいない。
――どういう事だろ?
と、首を傾げた瞬間だった。
「何だこれは!? 何が起きた!?」
村に大声が響き渡る。本能的に声がした方向を向くと、そこには獣人の男達を引きつれた一際、大柄な男がいた。
まるで猛獣の咆哮のような声。男は身体こそヒト型をしていたが、顔に至っては完全に獅子のそれだった。
獣人達の中にはこう言ったタイプの者がいるのは知識としては知っていたが、実際に見るとその迫力は凄まじいものがある。
「お前等は何者だ!? 何しに来た!?」
獅子の顔をした大男が、ものすごい剣幕でこちらに近づいてくる。
「違うの、お父さん! 彼等は私達を助けてくれたの!」
言いながら飛びしてきたのは、森で助けた少女だった。




