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消失  作者: 群青 ひら
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第7章 謝絶③

「琥太郎君とはどこで会ったの?」


と門亜が聞くと


「児童養護施設だ」


とさらりと大河は答えた。


「パートナー……あ、空河から聞いているよな。と、お互いだけじゃない、愛情を注げる対象を増やしたいね。と話をしていたんだ。それで琥太郎を迎えたんだ」


パートナーシップ宣言の話をしなかったのは、一から説明するのが面倒だったからだ、と言い訳のように大河は言った。それでも、今日、来るのは勇気の行ったことだろう。


「大河が幸せならいいよ。いつも1人で頑張っていたんだからさ」


門亜は注文したコーヒーにそっと口を付けた。


「そう言えば、音環に聞いたら再来週の土曜か日曜ならスタジオに来れるって言っていた。門亜の予定はどうだ?」


ドキリ。突然音環の名前を聞いた門亜は鼓動が大きく鳴り響いた。


「どちらも空いてるよ……音環、来れるの?」


門亜は平静を装って答えた。……でも、気持ちはばれているはずだ。それに……音環に面と向かって拒絶されたらどうしよう。


「ああ。無理やり引き込んだ。すべっタローの歌、完成させたいしな。それに、すべっタローもSAKIOTTEが止まっているのは許せないだろう。人生イベントで休止したり紆余曲折することがあっても、ずっと続いていくのが望みじゃないかな」


まったく、音環は体があっても実体のない奴だ、と大河はつぶやいた。


空河がタブレットを持つと注文を聞いた。


「僕、このラザニアチーズハンバーグ、と言うのが気になっていたんだよね」


空河はそう言うと、3人分の所をタップした。


えっ!ちょっと待って!門亜は慌てた。煮干しラーメンの店のルール、ここでも適用?


「ボク、そんなに食べられないよ」


と門亜は言うと、大河は空河からタブレットを取り上げ、琥太郎の注文を選ぶとさっさと注文ボタンをタップしてしまった。


あーあ。食べられるけどさ。でも、今日はちょっと軽めにしたかったよ。重い話に重い食べ物なんて……肉食系じゃないか。


「まあ、うじうじ悩んでないで、たまには食べて解決しろ。大丈夫だ。音環は地縛霊みたいなもんなんだから」


呪物に地縛霊か……音環、いったいあなたは何者なんだ。

門亜は大河の軽口にぷっと笑い出した。


コーヒーをお代わりしよう。門亜はタブレットで追加注文をした。


「そう言えば、すべっタローの歌って言えば~~の君の所だけ変えていた歌だったよね。何だっけ……透明な君、色を失った君、走り続けた君、道に迷った君と……」


門亜は言いながら、もう一つを思い出そうとした。もう一つは何だったっけ。門亜はスマホを開いた。


「残響の部屋の君、だ。恐らくカズヤのことだろう」


大河は静かに言った。


「アイツだけはすべっタローにしか救えない。1人で東京に行ってしまった、と言うのもあるが……最初から、すべっタロー以外拒絶していたからな。俺たちですら、一線引かれていただろ」


ああ……門亜は大河の言葉にうなずいた。小学校は結局行けなくて、中学は越境して大河たちと同じ中学に行ったよね。ここがよくわからない。


「中学、大河たちと一緒だったよね」


大河はうなずきながら言った。


「家にいても、別の中学に行っても変わらないからな。放課後会いたければすべっタローに会えばいい。なら、より未来が選択できる別の中学に行くのが自然だろう」


そう言うことか。じゃ、大学で県外に出たのは?すべっタロー、青森県から出られなかったんでしょ?


「大学は……なんで宮城に?」


「これはカズヤに聞かないとわからないが……関係が変化しようとするときに無理に一緒にいようとして壊れるのがよくある話だ。


それよりも、すべっタローを長く残す方法を探しに行ったのかな、と俺は思ってる。実際に、データは書き換えられてしまったが、すべっタローの残した音楽は、残っているだろ」


外に出たことで、色々影響を受けただろうから、と大河は続けた。


確かにな……門亜は2杯目のコーヒーに口を付けた。そう言えば、カズヤは音楽をやらせたいからって音環を宮城の大学に引きずり込んだんだっけ。


音楽をやっている間はすべっタローの輪郭も戻ってきた、とか言ってたな。


すべっタロー、音楽が本当に好きだったんだね。


「ちなみに、道に迷った君は僕ね」


突然空河が言った。


「迷いたくなくて、大河兄ぃの後を追いかけたもん。おかげで無事に学校の先生やって生活できてるよ」


空河の言葉に大河は苦笑いした。


「おかげで、背中見せなくちゃならなくて息をつく暇もなかったがな」


ああ……それで走り続けた君、か。大河の言葉に門亜は納得した。


それじゃ、透明な君と色を失った君はどちらかが音環とボク?似ているんだけど……。


そう聞きたそうな顔をした門亜に、大河はニヤリとしていった。


「透明なほうが音環だな。あいつはすぐに実体が無くなる」


大河の言葉に、そう言えばさっきも同じことを言っていたな、と門亜は思い出した。


「門亜は会った時からモノトーンな感じだったろ。音環がいて少しは色がついていたみたいだが。まあ、透明も色がないのも光をあてれば少しは見えるようになるんだが、すべっタローがいなくなって本質を強めたな。


まあ、どこかで光を見つけてこい」


何て言い草だよ……。門亜は憮然とした。


読んでくださりありがとうございます。

すべっタローが残した歌にあった、~~の君の部分は大河と空河が解読したようです。

門亜はどこで光を見つけられるでしょうか。

見つけた光は、実は音環も照らします。


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