第二話 コンプライアンス ②
――場所を移し、教会の応接室。
ソフィは突然訪ねてきたゲスオを応接室へと通し、三人はテーブルを囲んで席についていた。
事情が分からないソフィが、二人の顔を交互に見つめる中、ゼルは本題を切り出す。
「そんで、何しに来たんだよ」
「ゼルさんがパチンコで儲けたお金の税金を徴収しに来たでゲス」
ゲスオがさらりと答えると、ゼルは眉をひそめて問い返す。
「なんでお前がそんなこと知ってんだよ」
「税務署はなんでも知っているでゲス」
ゲスオはどこか誇らしげに胸を張った。
しかし納得がいかないのか、ゼルは不満げな顔で問いかける。
「大体よぉ、ギャンブルで増やした金に税金がかかるなんておかしくないか?」
その発言に、すかさず声を上げるソフィ。
「ほら! やっぱりパチンコはギャンブルだったんじゃないですか!」
「ええい、うるさいぞ!」
「うぐっ」
ソフィを一喝するゼル。
そしてどうしても税金を払いたくないゼルは、今度は別の理由を持ち出す。
「つーかよ、まだ納税の時期じゃないだろ」
「王城の改修工事のお金が足りないから、例年より早く税金を徴収することになったでゲス」
「おいおい、そんなくだらない理由で納税が早まるのかよ」
呆れたような顔をするゼル。
「仕方ないでゲス。オイラ達庶民は、王族には何も言えないでゲス」
「まったく、世知辛い世の中だぜ……」
「ちなみに、おいくらなんですか?」
横で話を聞いていたソフィは、恐る恐るゲスオに尋ねる。
「十万ゴールドでゲス」
「そんな金無いぞ」
「ゼルさんどうするんですか! 脱税になっちゃいますよ!?」
あまりにもあっさりと言い切るゼルに、ソフィが慌てて詰め寄った。
「別にいいだろちょっとくらい」
「よくありませんよ!!」
「そんなこと言われても、無い袖は振れないぞ」
ゼルは悪びれもなく言い切った。
「そう来ると思ったでゲス」
「あん?」
ゼルが怪訝そうな顔を向けると、ゲスオは得意げに言葉を続ける。
「ゼルさんが素直に払ってくれないことくらい予想していたでゲス」
そう言ってゲスオは懐から一枚の紙を取り出し、ゼルの前へ差し出した。
「なんだこれ?」
ゼルは訝しげにその紙を受け取り、ざっと目を通す。
「ただの指名手配書じゃねえか。これがどうしたんだよ」
「このワルーイ=ヌスットと一味の盗賊団が、この町の近くの森に潜伏しているという情報を入手したでゲス」
ゲスオの話を聞いたゼルは、指名手配書にもう一度目を落とす。
そしてそこに記された懸賞金を見て、ニヤリと口角を上げた。
「なるほどな。コイツを捕まえて金を作れってことだな?」
その言葉に、今度はゲスオもニヤリと笑う。
「そういうことでゲス」
「でも危険なんじゃないですか?」
二人がすっかりその気になっている一方で、ソフィは不安そうな表情を浮かべていた。
「アホか。俺は元勇者だぞ? こんな小悪党共に負けるわけないだろ」
「そうなのかも知れませんが……」
「よっしゃ! 善は急げだ! 行くぞお前ら!!」
ゼルはソフィの不安などお構いなしに、威勢よく声を上げる。
「えっ、私も行くんですか?」
まさか自分まで頭数に入っているとは思わず、ソフィは驚いてゼルを見た。
「当たり前だろ。お前にも重要な“仕事”があるんだから」
「仕事って……何をさせるつもりですか?」
ソフィは警戒するように尋ねる。
「細かい話は後だ! とにかく行くぞ!」
「行くでゲス〜!!」
すっかりノリノリな二人に――
「まあ良いですケド……」
渋々と受け入れるソフィ。
――こうしてゼル、ソフィ、ゲスオの三人は、懸賞金を手に入れるべく、盗賊団のアジトへと向かうのであった。




