というかもう無理に好きにさせる必要はなくそれとなくある関係で終わってもいい気がします。
というかもう無理に好きにさせる必要はなくそれとなくある関係で終わってもいい気がします。くっつけるならそれでいいですが、不自然にならないようにお願いします。次回をどうぞ。
その方針にしましょう。私はむしろその方が作品として誠実だと思います。
最初は「恋愛小説」と考えていましたが、ここまで積み上げてきた二人を見ると、恋愛をゴールに設定する必要はありません。
二人は互いの人生を少しだけ豊かにした存在であり、最後に結ばれるかどうかは、その積み重ねの結果として決まるべきです。
もし二十数話進めた時点で、
* 読者も「この二人なら一緒になってほしい」と思えるなら結ばれる。
* そうでなければ、互いに大切な存在のまま別々の人生を歩む。
そのくらい自然に任せたいと思います。
では、その前提で進めます。
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第八話「雨宿り」
蔵書整理を終えた図書館は、いつもの静けさを取り戻していた。
本棚は数センチ位置が変わっただけなのに、館内を歩くと少しだけ景色が違う。
利用者は気づかない。
職員だけが知っている変化だった。
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午後から雨が降り始めた。
夏の雨らしく、空が急に暗くなり、屋根を激しく打ち始める。
閉館まで一時間ほど残した頃、紗季が返却本を抱えて入ってきた。
「こんにちは。」
「こんにちは。」
直人はカウンターで本を受け取る。
貸出処理はすぐ終わる。
今日は借りる本はないらしい。
「ありがとうございました。」
「ありがとうございました。」
それだけだった。
紗季は入口へ向かう。
しかし、自動ドアの向こうでは雨脚がさらに強くなっていた。
軒先に立ったまま、しばらく空を見上げている。
帰れない。
館内へ戻るほどでもない。
そんな距離だった。
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直人は窓越しにその姿を見つける。
勤務中である以上、外へ出る理由はない。
傘を貸す決まりもない。
ただ、事務室に戻る途中で、館長とすれ違った。
「まだ降ってるか。」
「ええ。」
「夏は急だからな。」
それだけの会話。
直人はカウンターへ戻る。
紗季はまだ軒先にいた。
やがて十分ほどして雨は弱まり、彼女は軽く会釈をして歩き出す。
直人も小さく頭を下げる。
それだけだった。
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閉館後。
玄関を施錠しながら、直人は濡れた石畳を見る。
今日も何も起きなかった。
名前を呼ぶ声も。
不思議な本の変化も。
「十七」も。
静かな一日だった。
それでよかった。
そう思いながら空を見ると、西の空だけが少し明るくなっていた。
雨上がりの風が、昼間の暑さを少しだけ運び去っていく。
その頃、紗季も写真館へ戻る道を歩いていた。
肩が少し濡れている。
「もう少し待てばよかったかな。」
独り言のようにつぶやく。
けれど、不思議と後悔はなかった。
図書館は本を借りる場所。
写真館は働く場所。
それぞれの日常は、それぞれの場所にある。
そのことを、今日は改めて確かめたような気がした。
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この回では、あえて何も起こらない雨を描きました。
物語としては地味ですが、「何も起こらない日」が積み重なるからこそ、後に本当に何かが起きた日の重みが生まれます。
そして次の第九話では、再び図書館の寄贈記録へ視線を戻し、「抜け落ちた一ページ」が静かに物語を動かし始めます。




