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第30話:守護騎士 其の2

浪manの咆哮と共に、銀装甲の騎士が放った横なぎの一撃が彼の脇腹を捉えた。だが、浪manは避けない。あえてその衝撃を左腕で強引に受け止めた。


 ――ガギィィィィィィン!!


 火花が散り、鋼鉄節が限界までしなる。凄まじい物理演算の重みが彼を押し潰そうとするが、浪manは一歩も引かずに踏みとどまった。衝撃を殺しきった瞬間、彼の腕に余計な熱が溜まる。


「重てぇ……だが、通らねぇぞッ!」


 浪manは受け止めた剣を左腕で押さえつけたまま、右の拳を騎士の面当てへと叩き込んだ。至近距離での掌。騎士の巨躯を力任せにのけぞらせた。


 姿勢を崩した騎士に対し、浪manはさらに踏み込む。

 右、左、右。

 目にも止まらぬ速さの連撃。一発一発が岩石を砕くような重みを持ちながら、装備の反動抑制が即座に次の一撃へと意識を繋げさせる。


「らぁあああああ!!」


 騎士が体勢を立て直し、円盾で押し返そうとする。だが浪manは、盾の縁に指先をかけると、驚異的な握力と背筋の力でそれを強引に引き剥がした。剥き出しになった騎士の胴体へ、溜めに溜めた渾身の右ストレートが突き刺さる。


 ――ドォォォォォォォンッ!!


 衝撃波が背後の壁まで届くほどの威力。騎士の巨躯が数メートル後退し、石畳に深い溝を刻んだ。騎士のヘイトは完全に浪manへと固定され、その眼窩の紫光が怒りに燃えるように激しく明滅する。


「……へっ、そうだ。俺だけを見てろよ、デカブツ」


 浪manはニヤリと笑い、挑発するように手招きした。

 背後では、SRE-SREとL-NAが自由になった空間を駆け抜け、一本目の『魔力供給柱』に取り付こうとしている。


 騎士が再び地面を爆砕しながら突進してくる。浪manはそれを見据え、腰を深く落とした。

 避ける必要はない。


 今の自分には、この嵐のような猛攻をすべて正面から受け流し、ねじ伏せるだけの「腕」がある。


「来いよッ! 柱を全部壊されるまで、指一本触れさせねぇぜ!」



「……今だ! エルナ、合わせろッ!」


 浪manが守護騎士の大剣を『センチピード・バインド』で強引に受け止め、火花を散らしながら押し留めている隙に、SRE-SREが一本目の『魔力供給柱』へと向かった。背後からは金属が激しく軋む音と、浪manの荒い息遣いが聞こえてくる。


 石造りの太い柱を目の前にし、SRE-SREは迷わず跳躍した。晶鉄のポイントアーマーの驚くべき軽さにより、防具の重さを一切感じさせない極限の跳躍が実現されている。彼は柱の僅かな凹凸を足場にし、吸い込まれるような速さで頂部へと到達した。


「狙いは外さないわ……! 貫きなさい!」


 柱の麓で杖を掲げるL-NAが、鋭く詠唱を紡ぐ。放たれた氷の槍『スノー・パイク』が柱の頂部を保護していた外殻に直撃した。


 ――ガギィィィン!!


 硬質な外殻に蜘蛛の巣状の亀裂が走る。その刹那、頂部に張り付いていたSRE-SREが、逆手に保持した『蝕鎌』をその隙間へと力任せに突き立てた。


「――終わりだッ!」


 全体重を乗せた一撃。腐食の毒が結晶の深部へと侵食し、内側から紫の魔力を食い破っていく。


 パリィィィィィィン!!


 一本目の柱が砕け散ると同時に、エリア全体の光が僅かに陰った。しかし、それと同時に守護騎士の眼窩に宿る光が、一際激しく燃え上がる。


「……ッ!? 動きが速くなったか!?」


 魔力供給の一部を断たれた反動か、騎士の挙動から重厚さが消え、代わりに飢えた獣のような鋭さが加わった。剣の一振りが、抑え込んでいた浪manの腕を強引に跳ね飛ばす。


「がはっ……! おい、一本壊しただけでこれかよ!」


 浪manが再び食らいつくが、騎士の剣速は明らかに一段階上がっていた。供給源を守ろうとする騎士の防衛本能が、残された魔力を活性化させ、その質量を暴力的な速度へと変えていた。


一本目の柱が砕け散ると同時に、エリア全体を支配していた安定した魔力の供給が乱れ始めた。

 だが、それは攻略の始まりに過ぎない。守護騎士の銀装甲に走る紫の回路が、まるで血管が浮かび上がるように激しく明滅し、その挙動はさらに過激さを増していく。


「おっとぉ!? 冗談だろ、この加速!」


 浪manが叫び、飛来した剣の重圧を右腕で受け流した。先ほどまでの一撃が「巨岩」なら、今は「弾丸」だ。供給源を断たれた騎士は、残された三本の柱から強引に魔力を吸い上げ、そのスペックを限界以上に引き上げている。


「二本目、行くわよ!」


 L-NAの鋭い声が響く。SRE-SREは一瞬の着地の後、すぐに次の柱へと地を蹴った。背後では浪manが、騎士の怒涛の連撃を一身に浴びている。

 剣が空気を切り裂くたび、重厚な金属音が闘技場に反響するが、浪manは装備の鋼鉄節を軋ませながら、一歩も引かずに騎士の正面を陣取り続けていた。


「……ッ、こいつ、暴れやがる……!」


 騎士は柱へ向かうSRE-SREを追おうと強引に踏み込むが、浪manがその巨大な円盾の縁を掴み、力任せに引き戻す。


「どこ見てやがる! 相手は俺だろうがッ!」


 浪manの咆哮が騎士を繋ぎ止める。騎士は忌々しげに浪manへターゲットを固定し、再び猛烈な剣筋を叩き込み始めた。


 その隙を突き、SRE-SREは二本目の柱へと到達した。


「エルナ、合図を!」


「ええ、準備はできているわ!」


 L-NAがローブを翻し、詠唱を終わらせた『スノー・パイク』を放つ。柱の外殻が砕けた瞬間、SRE-SREが跳躍で頂部へ食らいつき、その核を『蝕鎌』で刈り取った。


 パリィィィィィィン!!


 二本目の崩壊。

 その瞬間、騎士の挙動から精密さが消え、もはやなりふり構わぬ暴走へと変わった。もはや盾による防御すら捨て、両手で大剣を握り直すと、残された魔力をすべて注ぎ込むような、目にも止まらぬ速さの連撃を浪manへと浴びせ始める。


「ぐ、あぁあああっ! くそ、マジで重くなってやがる……!」


 浪manのHPバーがじりじりと削られ、装備の耐久警告音が鳴り響く。だが彼は、折れそうな腕を無理やり突き出し、騎士の胸部を殴りつけてその突進を止めた。


「三本目だ……! スレスレ、さっさとしろッ!」


 三本目の柱に取り付いたSRE-SREの視界に、騎士の背中の回路が赤くオーバーヒートしていくのが見えた。供給源が減るたびに、騎士は残った一本の柱から過剰な負荷をかけて魔力を引き出している。


「これで……三本目ッ!」


 L-NAの放った魔法が外殻を粉砕し、露出した柱をSRE-SREの刃が真っ二つに両断した。


 ズゥゥゥゥゥゥン……ッ!!


 三本目の沈黙。

 闘技場内の空気が凍りついたような静寂に包まれる。騎士の動作が一瞬だけ止まり、全身からバチバチと紫の放電が漏れ出した。


「……あと一本。だが、こいつ……様子が変だぞ」


 SRE-SREが柱の上から見下ろすと、騎士の動きが更に変化していた。

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