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夜の攻防
星影家にはたくさんの絵本がある。愛らしきミザールの為に、これまでの星影家の者達が買ってきたり、客人から贈られたりしたものだ。
屋敷の中にいる時のミザールは白い毛糸で薔薇を編んでいるが、時折自分で絵本を選び、読むこともある。
星影家に囲われて二百年。
彼女はこの国の言葉を容易に読み解き、文章にして書き起こすことができていた。
「今夜は読み聞かせはいらないわ! 書庫に行って取ってくる!」
この二百年、彼女が眠る時はいつも、誰かが添い寝をし、絵本の読み聞かせをしてきた。
見た目は幼くとも、中身は二百歳を越えた淑女。本来なら添い寝も読み聞かせも必要ないが──星影家の者がそうしたいから、毎晩してきたのだ。
「『エイプリルは窓から飛び出した』」こぐまが語ると同時に、ベッドを飛び出そうとしていたミザールの身体は浮き上がり、ふわりとベッドの上へと戻されていく。
「ちょっと!」
ミザールが拒もうが、今宵も読み聞かせは行われる。