28話 お姉ちゃん
よろしくお願いいたします。
「な、何を言っているのかしら、こ、この子は……」
マティルダは明らかに狼狽した。
「だ、ダメですか……?」
アーシャが涙目で、上目遣いにマティルダを見てくる。
(カ、カワイイ! こ、こんな妹が欲しい……でも、ダメ、あの男の妹なのよ!)
マティルダは心の中で葛藤する。
「ど、どうしてあなたに、お……お姉ちゃんと呼ばれないといけないの……」
マティルダは頑張って否定の言葉を絞り出した。
「……やっぱり、ダメですよね……」
アーシャは明らかに落ち込んだ。
「ア、アーシャ……」
ココも同情する。
「な、なあ! 魔女様、俺からもお願いするよ! 頼むよ!」
トーニが必死に頼み込む。
(な、何か、私が悪者になっていないかしら……?)
マティルダは思った。
「魔女様、困らせて申し訳ございません」
悲しい顔をして、アーシャは諦めた。
(もーっ!!)
「待って! お姉ちゃんと呼ぶことを許すわ」
マティルダは決意した。
「ただし、この男は関係ない! 妹分よ! 妹分!」
マティルダの意地の発言だった。
「えっ! やったー! ありがとう、お姉ちゃん!」
アーシャは満面の笑みを浮かべた。
マティルダは咳払いをして言い返した。
「私は今後、あなたのことをアーシャと呼ぶわ。姉だから当たり前でしょう!?」
「うん、アーシャって呼んで、お姉ちゃん!」
またもアーシャは満面の笑みを浮かべた。
(カワイイ……)
マティルダの心は満たされた。
「良かったな、アーシャ!」
「本当に良かった!」
ココとトーニは心底喜んだ。
「アハハハハ! 面白い! 本当に優しいね、魔女ちゃんは!」
ジーナは大笑いした。
「何だったんでしょう、この会話は……」
ペソットは疲れがどっと出た。
ココは一人部屋で窓を開け、夜の王都を見ていた。
ココが一人部屋になったのには理由がある。元々は男3人(ココ、トーニ、ペソット)が同じ部屋だったが、旅の汚れを落とす際、トーニが平気で全裸になって体を拭いていたのだ。マティルダがそれに嫌悪を示し、ココだけ一人部屋となったのである。
「魔女様、申し訳ありませんでした。妹があんなことを……」
ココが謝罪する。
マティルダも、ココと同じ景色を見ていた。
「!? ……ああ、あれね……別に大丈夫……」
マティルダは少しはにかみながら答えた。
「失礼じゃなかったでしょうか?」
ココは妹の行動が心配だった。
「あの程度……あなたに比べれば、大したことないわ」
マティルダは外の風景を見ながら答えた。
「?」
ココは分かっていない様子だった。
(突然の告白、突然の妹、フフフ……本当に似ているわね)
マティルダは、この兄妹の突拍子のない行動を心の中で笑った。
「あとね……」
マティルダが続けた。
「実は、妹か弟が欲しかったの……私、末っ子だったから……」
マティルダは、遠い過去を見つめるような目で窓の外を見ていた。
「でも、なぜか兄様や姉様は皆、私のことをいつも心配するの?」
マティルダは不思議だった。兄や姉が、自分の身の回りのことまで心配するのが。
(分かる気がする……魔女様は、魔法以外は……)
ココはジト目でマティルダを見た。
「何よ……!?」
「いえ、べ、別に……魔女様は可愛いから、可愛がってくれたんですよ!」
ココが誤魔化した。
「……そうね、可愛がってくれた……」
マティルダは寂しげに呟いた。
「……」
ココはそんなマティルダの顔を見て言った。
「まとまったお金が手に入りました。急いでドラグネス王国へ行きましょう! そして、魔女様の家族のことを調べましょう!」
ココはマティルダを元気づけたかった。
「……よろしくお願いするわ」
マティルダは笑顔で答えた。月明かりに照らされ、幻想的だった。
ココは胸に衝撃を受けた。
「魔女様!!」
ココは叫んだ。
「キャッ! な、何よ!」
マティルダは驚いた。
「お、俺も、ココと呼んでください!」
ココは決死の思いをぶつけた。
「嫌よ!」
返事は即答だった。
「返事、早っ!」
「なんで、アーシャはよくて、それにペソットのことまで名前で呼ぶのに!」
ココは納得がいかなかった。
「ダメなものは、ダメなの! 嫌なの!」
マティルダの頬は少し赤い。
「エーッ!! そんなー!」
ココは抗議した。その時——。
窓の外から、緑色に輝く小さな球体が近寄ってきた。
「な、なんですかね……これ?」
ココは見たことがなかった。
「……」
マティルダは黙っていた。
その球体から声が聞こえた。
「ペネロペよ。夜分遅くにごめんなさい。今から会えるかしら? お二人さん……」
まさしくペネロペの声だった。
ありがとうございました。




