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26話 報告

よろしくお願いいたします。

グリフォン討伐から一息ついた。

ココの治療のため、アーシャが歩み寄ってきた。

「兄さん、治療を……」

アーシャが優しく声をかけた。

「アーシャか……えっ!」

ココは、自分が泣いていることに今気づいた。慌てて涙を拭いた。

「ハハッ……何でだろう?」

ココはアーシャに問いかけた。

「少しは、つっかえは取れた?」

アーシャは治療をしながら問いかけてきた。

「んー……どうだろう、分かんないな」

ココは笑いながら答えた。

アーシャは、そんなココの顔を眺めて言った。

「……私、お父さんの顔、あまり覚えてないの……」

少し寂しそうに答える。

「アーシャはまだ、小さかったからな」

ココが遠くを眺めながら答えた。

「……でも、今のお兄ちゃんの笑顔、お父さんが『ただいま』って家に帰って来た時の顔だった……」

アーシャの治療が、ちょうど終わった。

「そっか……」

ココも、それ以上なにも言わなかった。

「さてと……」

アーシャは膝の埃を叩きながら立ち上がった。そして小声で、

「魔女様、今は、アレなんで……後でちゃんとお礼を言わせて下さい」

アーシャは頭を下げると、奇跡的に生き残ったロバのもとへ走り出した。

「俺も、後でちゃんとお礼させて下さい」

ココもマティルダに伝えたいことが、たくさんあった。

「……別に、しなくていいわ……」

姿を消したマティルダが、小声で言った。



「いやー、でも本当にチョコ君の戦い方は、デタラメだね! 反則だよ!」

ベントーラは腰に手を当てて、グリフォンを眺めていた。

「《物理障壁(プロテクション)》は分かるわ! でも、何なの、あの強度! それに、グリフォンを動けなくした魔法、あれは何? 見たこともないんだけど! しかも咄嗟に自分の武器に付与魔法をかけるなんて、あり得ない! どこで習ったの? 師匠は?」

ベントーラの横でグリフォンを眺めていたココは、ミカエラにまくし立てられるような質問攻めにあっていた。

「……内緒です……」

ココは困った。

「はぁーーーー! 貴方ね、その魔法は王国の上級魔法使いでも無理よ! 王国に報告したいぐらいよ!」

ミカエラは納得がいかない様子だった。

「ミカエラ、もうそのへんで、チョコ君をいじめるのは止めてやりなよ。チョコ君も困ってるじゃないか。冒険者には秘密は付き物だ。それ以上は無粋だ!」

ベントーラが助け舟を出してくれた。

「……分かったわよ」

ミカエラも渋々、質問を止めた。

「ベントーラさん、ご配慮ありがとうございます」

ココは心底感謝した。

「ハハハ……ペネロペ嬢は聞かなくて良いのかい? チョコ君が気になるんだろ?」

意地悪そうにベントーラはペネロペに話しかけた。

「そういうんじゃないから! ……私は、特にないわ」

ペネロペの耳は赤くなっていた。

「エッ! ペネちゃん、ああいうのが好みなの?」

モニカがドストレートに聞いた。

「違うって! 向こうが……私に……」

ペネロペは声を詰まらせた。

「なんだ、違うのか!」

モニカは素直であった。

そんな様子を見ていた2人は、

「ん……?」

ココが首を傾げる。

『ん……?』

マティルダも首を傾げた。


「……で、こいつはどうすんだ? 誰が行く?」

ネグロは骸となったグリフォンを叩いていた。

「あー! ギルドに報告か!」

ベントーラは面倒そうな顔をした。

「討伐報告?」

ジーナが聞いた。

「それもあるが、グリフォンにもなると王都に持って帰る必要があるんだよ、ジーナ嬢」

ベントーラが説明する。

「王都まで持ち帰れば、良い見世物になる。冒険者ギルドとしては、信頼が爆上がりだし、羽根や爪なんかは貴族が高値で買い取るんだよ! 一石二鳥ってところさ」

「こっちとしては、面倒なだけだけど……」

ベントーラは苦い顔をした。

「ギルドに報告すると、輸送用の冒険者が荷台を持って来るってこと!」

「しかもその間、グリフォンの死体が他の魔物に荒らされないように、私たちで警護しなきゃならないの!」

ミカエラが残りの部分を説明してくれた。

「で、誰かが報告に行かないといけないと……」

ジーナが答える。

「そうなんだ、ジーナ嬢! 安全のため、2、3人必要だ!」

「面倒だな……置いていっちゃダメなのか?」

トーニが口を挟んだ。

「冒険者の義務です」

モリエーロが答える。

「報告に2、3日、輸送隊の到着が3、4日ってところですね?」

ペソットが計算した。

「げー、死体の近くで6、7日過ごすのかよ」

トーニが嫌そうな顔をした。

「で、誰が行く?」

ネグロが再度聞いてきた。

『ちょっと……』

マティルダが念話でココに話しかけてきた。

『なんですか? 魔女様?』

『ペソットを呼んできて』

マティルダが言った。

『ペソットですか?』

ココは不思議がる。

『いいから、そっとね』

『は、はい!』

ココはペソットに、手を使って「こっちに来い」と仕草をした。

それに気づいたペソットは、ココの近くへ歩み寄ってきた。

「なんでしょうか?」

ペソットが尋ねる。

『ペソットの手を握りなさい!』

マティルダが唐突に変な指示を出した。

『エッ! いやー、それは……』

ココは男と手を握ることをためらった。

『いいから! 早く!』

マティルダが急かす。

『は、はい!』

ココはペソットの手を握った。

「エッ! ……ココ、私はそんな趣味は……」

ペソットは驚いた。

まさかココが……と思った瞬間、頭の中にマティルダの声が聞こえた。

『ペソット、《転移(テレポート)》を使って、ギルドに報告をして来なさい』

マティルダの念話だった。

「わ、私がですか?」

ペソットは声に出して答えてしまった。

『念話よ。今、この人を通じて貴方と念話をしているの。心で答えればいいわ』

マティルダが念話の説明をした。

『貴方が《転移(テレポート)》を使い、ギルドに報告に行ってちょうだい』

『私が教えたでしょ、実践の時よ!』

いきなりの提案だった。

『は、はい?で、ですが、私に出来るでしょうか?』

ペソットは念話で答えた。

『私も付与魔法が出来たわ』

マティルダが言った。

『貴方と私では才能が違います』

ペソットが答える。

『500年前の魔法使いと比べても、貴方はいい線いっているわ。自信を持ちなさい,

それに私が直接教えたのよ!完璧よ!』

マティルダが本心からそう言った。

ペソットは少し考えた。

『……分かりました。やってみます』

『ペソット、あなたならできるわ』

『おだてないで下さい……』

どこかで聞いたことのあるやり取りだった。


男2人が黙って手をつないでいるのを見て、周りの冒険者たちは、それぞれの解釈で考えていた。


ペソットが手を挙げる。

「私一人で、その報告に行きます」

「それは危険だ! 認められない!」

ベントーラが反対する。

「《転移(テレポート)》を使います」

ペソットは冷や汗をかきながら答えた。

「て、転移魔法を使えるの?」

ミカエラは驚く。

「ええ、多分……」

ペソットは自信なさそうに答えた。

「なによ、それ? 本当に使えるの?」

ミカエラは、自分より劣っていると思っていたペソットが、自分には使えない魔法を使えると知り、つい攻撃的な口調になってしまった。

「大丈夫だ! ウチの魔法使いに任せてくれ!」

ココがペソットの背中を叩いた。

「ココ……」

ペソットは少し勇気をもらった。

「なら、頼むよ、ペ……キミ!」

「ペソットだよ」

モニカがベントーラに言った。

「はい!」

ペソットは少し離れ、転移魔法の詠唱を始めた。

「《転移(テレポート)》!」

青い光と共に、ペソットの姿が消えた。

「凄いな、初めて見た……ミカエラは使えるのかい?」

ベントーラはミカエラに聞いた。

「……使えないわ……あり得ない!」

ミカエラは、ベントーラが嫌味で言っているのではないことを、長年の付き合いで分かっていた。

「本当に、面白いチームだね、《寝る犬》は!」

「ベンちゃん、《夢見る羊》だよ。もう飽きたよ……」

モニカはちゃんとツッコミを入れた。



ペネロペは、消えたペソットがいた場所を見つめていた。

「……あの時、一瞬現れた黒い女性は、誰?……」


ありがとうございました。

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