25話 グリフォン
よろしくお願いいたします。
ロバを囮と考えていた陣形のため、目標がアーシャに変わったことで、誰も対応することができなかった。
「に、兄さん……」
アーシャは恐怖で動けなくなっていた。
ココの脳裏に、父親の顔がよぎった。
(父さん、アーシャもそっちへ連れてゆくの?)
父親は笑っていた。
そんな中、一人だけ対応した人物がいた。
「《物理障壁》!!」
「キィィン!!」
高い音を立てて、アーシャへ向けられたグリフォンの爪の攻撃が弾かれた。
姿を見せたマティルダだった。
「貴方、急ぎなさい!」
マティルダが叫んだ。
「ま、魔女様!!」
ココは我に返った。
「早く!」
そう言いながら、マティルダは姿を消した。
「トーニ! ジーナ!」
ココは声をかけた。
「このっ!!」
トーニは弓を放った。
矢はグリフォンの翼にうまく当たった。
ココ、ジーナもボウガンを放った。
ココの矢は翼に当たったが、ジーナの矢は体に当たってしまった。
連射の利かないボウガンをその場に捨て、ココとジーナは走り出した。
ここで出遅れた形だが、《紅蓮の牙》のメンバーも矢を放った。
ペネロペとネグロは弓を、ベントーラ、ベルゴミ、モニカ、モリエーロはボウガンを使った。
6本中3本が翼に当たり、1本が体に当たり、2本は外れた。
「チッ! 出遅れた! 前衛! 急ぎ出るぞ!」
ベントーラが指示を出し、藪からグリフォンに向かって駆け出した。
その隙に、ココはグリフォンとアーシャの間に入った。
「ジーナ、アーシャを連れて後ろに!」
ココはジーナに指示を出す。
「分かったわ。さあ、アーシャ!」
ジーナはアーシャの脇を掴み、後ろへ後退した。
前方の人間と、その後ろから駆けつけようとする大勢の者たちを見て、グリフォンは不利だと感じ、空へ逃げようと考えた。
多少、翼に傷を負ったが、この程度なら問題ない。
そう思い、空を飛ぶために翼を広げた。
その時――。
「《過重力》!!」
姿を消したマティルダが魔法を唱えた。
《過重力》の魔法は、範囲内に何倍もの重力をかけ、動きを封じる古代魔法だった。
グリフォンの動きが止まった。
というより、まるで犬が伏せをするような状態になっていた。
グリフォンの動きが止まった理由を、誰も理解していなかった。
だが、チャンスを逃すベントーラではない。
「ペネロペ嬢!」
ベントーラが指示を出す。
「風の妖精シルフよ、我のために……」
ペネロペは精霊魔法を唱える。
トーニ、ネグロは弓で2射目を放った。
グリフォンの翼に矢が当たった。
トーニは弓を捨てて駆け出し、ネグロは次の矢を装着する。
「《風の大鎌》!」
ペネロペは精霊魔法を放った。
「ヒョォォォ……」
奇妙な音を立て、グリフォンの翼をズタズタに切り裂いた。
もう、飛ぶことはできない。
すかさず、モリエーロが《勇戦の歌》を唱える。
マティルダは《過重力》を解除した。
グリフォンが立ち上がり、咆哮を上げた。
接近戦が始まった。
ココはグリフォンの正面に立ち、スモールシールドを構える。
グリフォンの爪が振り下ろされた。
ココは盾で受け流し、攻撃の軌道を逸らす。その隙に、剣で脚を斬りつけた。
ベントーラは側面から接近し、爪をかいくぐりながら重い斬撃を叩き込む。
ベルゴミは正面で攻撃を受け止め、その隙にモニカが脇から槍を突き出した。
後方では、ペソットとミカエラが火球を放つ。
「《火球》!」
炎の球がグリフォンの胸部へ命中し、翼の付け根を焼いた。
トーニも遅れて戦線へ加わり、剣を振るう。
ネグロは距離を保ちながら、弓で翼や脚を狙い続けた。
ジーナもボウガンを拾い上げ、援護射撃を行う。
ペネロペは次の精霊魔法を発動する。
地面から伸びた蔓がグリフォンの後ろ脚へ絡みつき、動きを鈍らせた。
しかし、グリフォンも黙ってはいない。
翼を失ってなお、鋭い爪と嘴を振り回して暴れ続けた。
ココの肩を爪がかすめ、ベントーラの腕から血が流れる。ベルゴミの盾には深い傷が刻まれ、モニカも吹き飛ばされた。
「下がってください!」
アーシャが負傷者へ駆け寄る。
「《治癒》!」
淡い光が傷口を包み、傷が塞がっていく。
治療を終えた者から、再び戦線へ戻った。
それでも、グリフォンの生命力は凄まじかった。
攻撃を受けるたびに激しく暴れ、戦場全体を薙ぎ払おうとする。
総力戦だった。
戦いは長く、長く感じた。
だが、終わりが訪れる。
ベントーラのすくい上げるような斬撃が首に当たり、グリフォンの顎があらわになった。
「そこだ!!」
ココが剣を突き出した。
「《火炎付与》!」
待っていたとばかりに、マティルダがココの剣に《付与魔法》を施した。
燃える剣はグリフォンの顎から頭部を突き抜けた。
さすがに生命力の強いグリフォンも、頭を貫かれ、内部から焼かれてはひとたまりもなかった。
グリフォンは大きな音を立てて倒れた。
「ハァハァ……お、終わったのか……?」
ココが唸るように言った。
「そう、終わったよ。悔しいが、止めを刺したのはチョコくんだ……」
ベントーラが言った。
「ハァハァ……ココだよ……」
律儀に訂正するモニカであった。
「あーーーー! 終わったのか……」
トーニは力が抜けたように、ドカッとその場に腰を下ろした。
それを合図に、皆が腰から崩れ落ちた。
アーシャとモリエーロは皆の治癒に走った。
治療魔法が得意なアーシャは深い傷を負った者を担当した。
「グリフォンを倒したのか……」
ココは知らず知らずのうちに泣いていた。
《夢見る羊》のメンバーは何も言わなかった。
アーシャは何も言わず、笑顔で治療していた。
(よかったわね……)
マティルダは心の中で祝福した。
ありがとうございました。
戦闘描写は難しいです。




