23話 魔法剣士?
よろしくお願いいたします。
アーシャが、血だらけのココに向かって走り出した。
「に、兄さん……」
血だらけのココは、トーニに抱かれていた。
「ココ! ココ! 大丈夫か?」
「治癒の祝福を……えっ!」
アーシャが治癒の祝福を唱えようとしたが、外傷はまったくなかった。
「オーガの攻撃は当たっていないんだが、突然、鼻から大量の血を出したんだ……」
トーニはアーシャに説明した。
「魔女様の仕業ですね!」
ペソットが言った。
「!!!……」
マティルダは黙っている。
「肉体強化をしましたか?」
ペソットが問いかける。
「……ごめんなさい」
姿を消したマティルダは、小さな声で謝った。
「《紅蓮の牙》がこちらに来ますので、詳しい話はあとで……」
「……はい」
マティルダは元気なく返事をした。
ベントーラが剣の血を払い、鞘に収めながら近寄ってきた。
「チョコ君は大丈夫かい? かなりの出血だが……」
「それに、最後の魔法は何だい? チョコ君がやったのかい? オーガが一発じゃないか!」
「あんな威力の《氷柱の槍》、見たことないわ……」
ミカエラも驚いている。
「ア、アレは、ココ、魔法も扱えまして……ほ、本気を出すと……アレなんです……」
ペソットは嘘が下手だった。
「ココは魔法剣士なの! でも、威力のある魔法を使うと、副作用でこんな感じになってしまうの!」
ジーナがすかさず助け舟を出した。
ジーナは嘘が上手かった。
「そ、そうなんです!」
ペソットは汗をかきながら頷いた。
「魔法剣士、実在するのですね……」
ミカエラが呟く。
ペネロペだけは、何も言わずにココを見つめていた。
「命に別状はありません。気絶しているだけです」
アーシャが少し安心したように言った。
「それは良かった、アーシャ嬢。だが、本当にでたらめな戦い方だな!」
ベントーラが大笑いする。
細かいことは気にしない、ベントーラであった。
「チョコ君も、まだ目を覚ましそうにない。少し早いが、今日はここで野営をしよう」
「申し訳ありません……」
ペソットが頭を下げる。
「気にするな! ぺ……今は、仲間じゃないか!」
ベントーラは笑顔で言った。
「牙は切り取っておくよ。ギルドへの討伐証明になるからね! ベル、手伝って!」
モニカは元気よくオーガの元へ走っていった。
「……」
ベルゴミは黙って後をついていく。
「《夢見る羊》のオーガは首が吹っ飛んでしまったから、残念ながら回収は難しいな……」
そんなことを言いながら、ココの移動を手伝ってくれる、優しいモリエーロであった。
二つのチームは少し離れ、別々に野営をした。
食事が出来上がった頃、ココは目を覚ました。
「お、お兄ちゃん!」
アーシャが声をかける。
「……あれ? オーガは?」
ココは状況が分かっていない。
「倒したよ、一応……」
トーニが答える。
「トーニが倒したのか?」
「ちげーよ! 魔女様だよ!」
「えっ! ちょっと……説明してくれ……」
「私が説明しましょう」
ペソットが説明をした。
「……」
あぐらをかき、ココは下を向く。
「……ごめんなさい……」
マティルダが小さな声で謝った。
「……」
ココ。
「……」
マティルダ。
「……」
ココ。
「……」
マティルダ。
「俺のために魔法をかけてくれたんですよね! 初めて魔女様に魔法をかけてもらった!」
ココは喜んだ。
「……そ、そうよ! 貴方のためよ!」
マティルダは怒られると思っていた。
「うれしーなー」
「ココ! ここは厳しい態度をしなさい!」
ジーナが怒る。
「そうだぜ! 結構ヤバかったんだからな!」
トーニも続ける。
「魔女様、皆が許しても、私はまだ納得していませんよ。あれほど……」
ペソットの説教が始まった。
魔法を教え合う2人は、実力ではマティルダが上だが、まるで師弟関係のようだった。
「お兄ちゃん、まずは落ち着いて。これを食べてね」
アーシャが夕食の入った器をココに渡した。
一番落ち着いているのは、アーシャかもしれない。
《紅蓮の牙》
「おっ! チョコ君が目を覚ましたのかな……アハハ! 大騒ぎだね! 元気があって良かったよ」
ベントーラが笑う。
「ベンちゃん、ココだよ!」
食事をしながら、モニカが言う。
「はあ、緊張感のないパーティーだわ……」
ミカエラがため息をつく。
「楽しそうで、良いではないですか」
モリエーロが穏やかに言った。
「……」
ベルゴミは黙々と食べている。
「……うるさいのは嫌いだ……」
ネグロはそう呟いた。
「……」
ペネロペは黙って食事をしている。
「ペネロペさん、長寿のあなたは、魔法剣士というものを聞いたことはあって?」
ミカエラが尋ねた。
「……聞いたことがない。剣も魔法も使うヤツは何人かいたけど、皆、中途半端だった。魔法剣士とは呼べない……」
ペネロペは答えた。
「しかも、あんな威力の魔法を見たことはない」
「でも、ペネちゃんは、精霊魔法と剣、両方とも凄いじゃん。しかも弓まで!」
モニカが言う。
「エルフ族は長寿だから、人間の何倍も修行できるから」
ペネロペは答えた。
「……やはり、異色だね、チョコ君は……面白いな」
ベントーラが呟く。
「ココだって!」
モニカがすかさず訂正した。
そんな時、《紅蓮の牙》の野営地にココが現れた。
「今回は、本当に申し訳ございませんでした」
ココは頭を下げた。
「アハハ! 気にすることはないよ!」
ベントーラは豪快に笑い飛ばす。
「だけど、本当に面白い戦い方をするね、チョコ君は」
「ココだよ!」
モニカが訂正する。
「……はあ、まあ」
ココは気まずそうに答えた。
「魔法剣士なんだって? 魔法の方が凄いけど!」
ベントーラが笑う。
「ええ、ま、まあ……」
「本当にあの魔法はあなたがやったの?」
ペネロペが尋ねた。
(ま、まずい。き、気づかれたか?)
ココは思った。
「え、ええ……そうです!」
ココは冷や汗をかきながら答えた。
「……ふーん、そう。分かったわ」
ペネロペはそれだけ言った。
「そ、それでは、失礼します」
ココはそそくさと退散した。
「グリフォン討伐も期待しているよ。魔法を使っても……気絶はしないでくれよ! アハハ!」
ベントーラが笑う。
「は、はい! 頑張ります!」
ココはその場を後にした。
「ペネロペ嬢が気に入る理由が分かる気がするよ」
ベントーラが言う。
「そ、そんなんじゃないわよ!」
ペネロペが慌てて否定した。
姿を消したマティルダが、ペネロペを鋭い目で睨んでいた。
(あのエルフ、危険だわ)
ありがとうございました。




