第二十三話 これが私の『真骨彫』
《全戦闘隊員に告ぐ!東京都月谷市◯◯町△-×-◻︎にて警報級大型能魔が出現!警戒レベルは6!周辺住民の避難と早急な討伐を求む!繰り返す!東京都月谷市◯◯町△-×-◻︎にて警報級大型能魔が出現!警戒レベルは6!周辺住民の避難と早急な討伐を求む!》
◯◯町…
亜夢の出先だ!
「由宇、バット持ってこい」
「了解!」
さっきとはうって変わって真面目な雰囲気の二人。
「ほらなにボケっとしてんだ馬!お前も来るんだよ!」
はっと、我に帰る。
「ごめん」
「口は後!手を動かす!動きやすい服装にして!」
由宇が着替えながら言う。彼らは慣れている。
《緊急警報!警戒レベルを7に引き上げ!繰り返す!警戒レベルを7に引き上げ!》
「7、か」
「それってどんくらいなの?」
「あー…地震で例えると五強くらい?」
やばいじゃん…
■
現場に向かうとすでに何人かの隊員が交戦しており、倒れている者も見える。
「なんだこいつは!」
「毛皮が硬え!」
「今助け…ウガッ!」
ゴリラのような姿をしたその能魔。
力任せに暴れているのに隙がない。
俺は魂能があってこそ動きを追えているが、それでも異常な俊敏さだ。
「斬撃が効かない!?じゃあバットで殴っても意味ないじゃねえか…」
ガランッと乱雑に金属バットを落とし構えるゼロヒト。
「重そうな体して動きが速いねぇ…もっと重くしたらどうなるのかな?」
由宇がふわりと浮かび上がる。
「力操」の力だろうか。
能魔の動きが鈍くなり、まるで重力に抗うような動きを見せる。
「おい馬、冷凍保存されたくなかったらどいてろ。冷気の出血大サービスだ」
触れただけで痛みを覚えるような、俺と戦った時とは比べ物にならないような冷気が辺りを覆う。
能魔の毛先が白く凍る。
「…あれ。思ってたんと違う」
唐突なゼロヒトの間抜けな声に思わず疑問を返す。
「え、どういうこと…?」
「いや、今…周囲の空気を-275…は言い過ぎだけど生物の活動限界ギリギリまで冷やしたはず…もっと相手が動かなくなるくらい固まる技なんだけど…」
「ちょっと待ってこいつやばいんだけど!私の「力操」を力でねじ伏せてくる!」
言葉の通り、能魔は先ほどまでの俊敏な動きを取り戻しつつあった。
どうすりゃいいんだと悩む矢先、能魔の行動予測が目に止まる。
回避不能の一撃。
防御不能の一撃。
言うなれば、最悪の未来。
「…あ。」
絶望の一声が一足先に飛び出た。
■
能魔の視線が由宇に向く。
自分が重くなる力の原因がコイツにある。
それが能魔の知恵なのか本能なのかはわからないが、完全に矛先が由宇に向いた。
由宇はそれに気づかない。
能魔が大きく腕を振り上げる。
由宇の魂能であれば空気抵抗や能魔の拳速減などやりようはあっただろう。
もし由宇がそれを使いこなしていたならば、だが。
もう遅い。
全てがスローに見える。
由宇が眼前に迫る拳を見て絶望の顔色を示す。
ゼロヒトが由宇に向かって駆け出す。
わかってるんだ。
間に合わない。
また…
また、助けられない…!
起こりうる未来を打ち砕く、鈍く輝く銀色の稲妻が一閃、吹き上がる黒煙を伴い迸る。
〈私の妹に手ぇ出すな〉
能魔の手首が吹っ飛んだ。
■
砂煙と黒煙の霧の中からエッジの効いた鋼のアーマー。
白い肌。
後頭部から伸びる銀髪。
ラピッドマンだ。
亜夢だ。
アーマー形態を解除すると、余裕のある顔が見て取れた。
「うっ…うっ…うえええ〜!」
膝からガックリ崩れ落ちた由宇から涙が溢れ出す。
「お゛に゛い゛ぢゃ゛あ゛ん゛」
「おーよしよし、怖かったな」
俺とゼロヒトは安堵の息をもらす。
さて、と一言。
思考は相変わらず読めない亜夢。
明らかに目の色が変わった。
「ゼロヒト、由宇を連れて撤退しろ」
「え?俺様はまだ戦え…」
「め い れ い」
こちらを振り向かないが、迫力、凄みがある声。
強者の声。
ゼロヒトは震え、従う。
「りょ、了解…」
ゼロヒトは由宇を抱え逃げる。
能魔が体勢を立て直す。
「俺はどうする?」
「アリマくんはリアルタイムで行動予測教えて」
「了解」
「さーて、見せようか私の真骨彫!」
〈〈BALANCY〉〉
誤字ではありません




