第十八話 お前の罪を教えて
あ、水曜日だ。
「今日、学校終わったら…パトロール…」
眠たい目を擦りながら亜夢が言う。
「あの…もうちょい寝るから先行ってて…」
「え、もう間に合わないぞ?」
「ムリァ…すやっ」
「あ、寝た」
由宇はすでに寝た。
鎖田さんは…寝相がすごいね。
体の鎖がバラバラになってるよ。
絡まらないのかな…
■
一限目が始まったぞ。
亜夢が来ないぞ。
え、こないぞ?
「おくれましたぁぁぁぁぁ!!!」
全速力で走ってくる亜夢。
背中からは…
エンジンのマフラーが生えている。
なにそれ?
剛鐵装の一つ?
隣に座る。
マフラーが仕舞われる。
制服に穴が空いてる…
「起こしてちょうだいよ」
「お前が先に行けって言ったんだろ」
喋りかけないで欲しいなぁ…
亜夢は人気者だ。
そいつが俺みたいな隠キャと仲良く話して…
挙句一緒に住んでるなんて知られたら…
光が強くなるほどに、影はより濃くなりゆく。
■
「やっぱりがっこうではなしかけないで???」
「なんでー?」
「めだつの!隠キャくんが!ヘイトを浴びるの!」
じと…
なんだよ。
何が言いたいんだよ。
「…わかった。じゃあまた後で裏門で」
すんなり行った…
■
放課後。
裏門で。
亜夢はあの後結局話しかけてこなかった。
「あ、いたいた。ほんじゃあいくよ」
〈〈BALANCY〉〉
一瞬。
白い予測線があたかも閃光の如く。
遠くにいるね〜。
「待てやー!!!」
「遅ーい!!!」
■
亜夢の異常性。
見える予測線はその人からざっと100m程度。
これはどれだけ動いても誤差程度でしか変わらないように見える。
亜夢…もといラピッドマンはその予測線と先頭を競り合うように動く。
予測線の先端と肉薄する。
おかしいよ…
とかなんとか考えてるうちに本日のパトロール場所の大通り市街地に到着する。
一見は平和そうだが…
平日とはいえ夕方の時間帯。
人が多いな…
少しくらっとするか?
ぱちん。
ほおを叩く。
気合いだ気合い。
〈平和平和。平和が1番。これ、サボってもバレないかな〉
亜夢のくぐもったような声。
「そんな声だっけ」
〈うん、少し改良した〉
かっこいいでしょ。
もうちょっと実用的な改良したらどうかな。
平和が1番。
そんな願いは人混みの騒ぎにより消える。
「泥棒だ!」
「にげたぞー!」
「追えー!」
ジュエリー店からガラスの割れる音。
フェイス越しからもわかる。
呆れたような亜夢の表情。
〈…私らの担当って本来能魔退治なんだけどさ。たまにあるんだよねー…パトロール中の犯罪者対応も仕事だよ。ほら、いくよ〉
ラピッドマンは地面を踏み締めて飛び出…さない。
「どうした?」
〈あれ、ダメだな。人に当たる。あのー…犯人もどれかわかんないわ〉
んー…
手を耳に当てる。
声が聞こえる範囲ならば思考は聞こえる。
洗い出す。
(強盗?)
(買い過ぎた)
(なんか騒がしいな)
(強化グラスが割れた〜!)
(今の男の人、消えた?)
(逃げろ逃げろ逃げろ…!撒いてやる…!)
…!
見つけた。
「…ぶはっ!あ、亜夢!あれ!あいつだ!!!」
〈サンキュー、了解っ…〉
今度こそ踏み込んで…飛び出した!
犯人の予測線。
亜夢の予測線。
二つが交差する。
捕まえるつもりだろうな。
しかし。
フッ…
〈えっ!?〉
犯人の姿が一瞬消える。
亜夢は「犯人がいる」はずだった場所をすり抜け思い切り地面に激突。
えぐれたのは地面。
〈いたた…〉
「なんだ今の…」
亜夢に駆け寄る。
〈うーん、ま。仕組みはなんとなくわかった〉
背中を向けて逃げる強盗をしっかりと見据えて…
右手で指す。
〈あ、間違えた〉
左腕を向けて指す。
〈あの探偵ヒーローの決め台詞をね…さぁ、お前の罪を数え〉
「言わせないよ?」
???「「さあ、お前の罪を数えろ!!」」
ふふふ…




