第十五話 なぜ彼はバディにならなかったのか
ゼロヒトに向き直る。
「逃げるのは諦めたか」
痛くて震える。
寒くて震える。
怖くて震える。
それと。
勝てるかも、という期待に震える。
「馬の骨が!亜夢と並べると思うなぁぁぁぁ!」
どこから取り出したのか金属バット。
もう捕まえるとかじゃなくて殺しにかかってるよね。
扇状の予測線。
自分から生える「まっすぐ」と「しゃがむ」。
まっすぐの予測線から乗り換える。
びしびしびし…
筋肉の音。
懐。
最後の力を振り絞ってアッパーをかます!
■■■
顎を強打されると、人は脳震盪を起こし一時的な行動不能に陥る。
■■■
「ゼロヒトはねぇ、私のバディ候補だったんだよ」
一発かまして数分。
いたたたた。
湿布を貼ってもらいつつ耳を傾ける。
「私は金属系能力。後『発動』は冷たい場所の方が効率が上がる。だから本来ゼロヒトと組むのが最適なのよ…だけど」
あ、起きた。
「…ダ…」
「なんて?」
「ヤダ…」
『なんて…?』
「ヤダヤダヤダヤダ〜っ!取られてたまるかーっ!」
スッゲー駄々こねる…
亜夢がピキってる。
キレてる。
読まなくてもわかる。
「そういうところが!無理だって!言ってんの!」
歓喜とも悲鳴ともとれない叫びがビルで響いた。
ナズーに入って2日目の夜である。
■
翌日。
あ、まって起き上がれない。
痛い痛い痛い。
無理無理無理。
うん諦めよう。
にしても…
昨日のはなんだったんだろうか。
自分の予測線が見えるなんて初めてだ。
また見えなくなってるし…
まあ、いいか。
■
椅子に座る。
新しく会った2人と向かい合う形で。
『改めまして、俺は「鎖田朧」だ。亜夢の…師匠だな』
「よろしくお願いします…」
握手を交わす。
じゃら…
まるで金属を握っている…
いや金属だよこれ。
『あー、俺は金属製なんだ。この体は鎖の塊』
鎖田は見た目が棒人間そのもの。
その体をよく見ると、無数の細い鎖で構成されている。
相変わらず思考が軽々しい。
『俺の魂能は「鎖」。鎖を出す能力さ』
「それだけ?」
思わず。
『それだけ』
「おししょーはねぇ、その『雑魚能力』で最強に至ったんだよ〜」
『コンプレックスを刺激しないで…?』
…なんとなくわかったわ…
■
もう1人。
さっきから黙っている。
亜夢の妹?
「ほーらー由宇〜…挨拶挨拶ー」
「あ、え、えっと…あ、「明日乃由宇」でふっ!」
噛んだぁ…
かわよ…
『こりゃだめだな』
「由宇の能力は『力操』。物理の授業でやったじゃん…ほら、力の矢印…あれを捻じ曲げたり大きくしたりできる能力。クソ強いはずなんだけどさ…」
いかんせん由宇は物理できなくって…
『ちなみに操る力はなにも物理的なものに限らなくって、干渉系の魂能にも作用するらしい。カシマ少年の魂能で、由宇の思考読めないだろう?捻じ曲げてるから。無意識で』
なるほど。
確かによく考えたら由宇ちゃんの予測線は見えないな。
■■■
兄は過保護である。師匠、もとい今の保護者も過保護である。ついこの間まで由宇はアメリカにいたのだ。筋骨隆々とした筋肉に囲まれて過ごす青春時代は、細身が好みの由宇にとってさぞ辛かったろう。そして見た「兄以外のドンピシャ」。由宇はときめいていた。多分、初恋である。
えー、
書き溜めがなくなりました




