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魔法少女(24)の異世界転移  作者: ほすてふ
第二章 ドワーフ地下帝国

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062 聖女

 以前は、仲間の到着はマジカルナックルの役目の終わりだった。


 強敵との戦いでは、戦力が大きく劣るマジカルナックルは、仲間の魔法少女が到着した時点で戦線離脱する、時間稼ぎをする場合がほとんどだったのだ。

 それは被害を抑えるためには重要な役割だ。

 だが、最後まで戦い抜けないことに、歯がゆさを覚えた日もあった。


 だが、今は最後まで役目が持てる。


 聖女たちの援護が、今までいない力を与えてくれる。


 聖なる光が瘴気を取り除き、格の低いアンデッドを祓う。格の低いといっても、聖女や魔法少女、高位の魔法使いが居なければ対抗できないだろう。


 風が毒のガスをさらっていく。

 精緻な制御が、いたずらに空気をかき混ぜるのではなく、毒性のある気体を敵側の奥に押しのけていった。


 聖なる結界は、今度こそ正常に働いた。

 結界の聖女による宝石触媒の補助がなくなったことで、最低限の規模で陣を展開、大樹から根を伸ばして足場を固めている。


 愛と勇気の歌は継続してマジカルナックルに力を与えてくれる。


「待たせたのう」


 ドワーフたちが横に並ぶ。


「無事で何よりよ。あれが不死帝ですって。倒しても知らないところで復活して滅ぼせない」


「話は聞いておった。ここから追い出し、復活までしばらくかかるだけでも大いに価値がある。そうじゃろ」


 マジカルナックルと不死帝の会話は共有できているようだ。

 エルエルヴィあたりが魔法でどうにかしたのだろう。


「何より、一矢報いる機会。長年やられてきた分を返すときじゃ」


 ドワーフたちが持つ魂光鋼のハンマーが光を強める。


「わかったわ。それじゃあ突っ込んで殴る。わかりやすくいきましょう」


 マジカルナックルがゴーレムを防ぎつつ、みんなで不死帝を殴る。

 手数で有意な時はやはりこれ。数の力。


『おっと、そうはいかぬぞ。貴重な個体を見せてやろう』


 しかし敵もさるもの。

 聖なる光の中でも動いてくる。さすがは不死帝というべきか。

 影の中から新たなアンデッドを呼び出した。

 不死帝同様、人型の、肉がついたまま、しかし腐っていないタイプ。それも少女の姿をして武装している。

 生気がない虚ろな目でこちらを見てくる彼女たちは三人。


「あれは……まさか!」


 聖女ビアンカが悲痛な声を上げる。


 心当たりがある……?


 まさか。




「あれは、過去にやられた聖女ちゃんじゃ……!」




『その通り。やはり、聖なる力への耐性もあるようだな。其方ら聖女の肉体は、今後もこうして活用していくとしよう』


 きわめてグロテスクな笑みを浮かべ、聖女アンデッドを前に出す不死帝に、強烈な不快感を覚えた。


 別に今までとやっていることは変わらないのだ。

 しかし。

 ……マジカルナックルは言語化することをやめた。

 この気持ちはそのままの形で持っておく。



 そして、不死帝自身も、聖なる光によるダメージを受けていないように見える。

 体から湧きだす瘴気と常に相殺し合っているように見えた。


 ただ、それは瘴気によるこちらへの影響がなくなったことを意味する。


「あの子たちは私が」


 マジカルナックルはそう言い残して前に出た。


 瘴気の重圧から解き放たれたマジカルナックルのスピードに、聖女アンデッドたちは反応できていない。


「マジカルパンチからのマジカルつる草なにこれ何か吸われてる?魔力と生命力?そういうアンデッドなの?エナジードレイン?そうでもこれくらいなら」


 マジカルパンチで三人をまとめ、つる草で縛り上げる。

 淡々とつぶやきながら聖女アンデッドの動きを封じた。

 接触部分から力を吸い取られる感覚があった。

 アンデッドに魔力奪取を仕掛けた時と似た不快感だが、少しだけ違う。

 これも、ファンタジー創作で時折見かける設定、エナジードレインに似ている。

 そして絶対量は今のマジカルナックルであれば、無視できる程度であった。

 無限に湧き出る愛と勇気はびくともしない。


「ごめんなさいね。マジカル・浄火」


 動けないまま、一瞬で焼却した。

 葬送の炎。

 自粛していた炎の魔法を瞬間的に力を込めて。つる草ごと焼き尽くした。


「お姉様……」


 後ろは振り向かず、不死帝を見る。


『ふむ。つまらぬな。いや、其方が想像以上に強力なだけか。だが』


「全部、こいつを倒してからにしよう」


 怒りに身を任せるのはマジカルナックルのやり方ではないが。

 今は怒りも力に代わるようだった。


「「神よ。かの者たちに我と同じ恩寵を」」


 そのとき、聖域の中で歌い続ける聖女スカーレットと聖女クロエが、歌の中に今までとは異なる歌詞を混ぜ込んだ。

 すると、さらなる力が体に宿るのを感じる。


「裁きの加護と再生の加護、そして聖域の力を宿しましたわ! 奴を倒して!」


 聖女ビアンカが

 マジカルナックルだけではなく、三人のドワーフにも、同じ加護が与えられていることがわかる。


 聖女の加護が一時的に拡張されているのだ。

 これもまた、聖女の切り札の一つ。

 聖域と聖女の歌とあわせてようやく使える儀式加護。

 そんなことまでわかる。


 二人の聖女の想いの一部が伝わってくる。

 怒りと悲しみ。感謝と希望。マジカルナックルの力がまた増した。


 希望の心は魔法少女の力となる。

 聖女たちの心の力は、魔法少女に匹敵する強さを持っていた。


 こうしている間にも、聖女セレナとエルエルヴィが、敵の遠隔攻撃を防ぎ、ゴーレムを解呪して無力化しており、また、体の大きな副長は不測の事態が起きた際、聖女たちを身を挺して守るために備えている。


 ドワーフたちが駆けだした。


 不死帝はなおも笑っている。


 マジカルナックルは――




 一息に飛び込んだ。


「マジカル・正義パンチ!」


 正義の神の裁きの力が自動的に付与される。


 自然の摂理から外れ命をもてあそぶ罪人である不死帝を裁く拳。




 それが受け止められた。




『おお! 想像以上だ。これは何度も受けられぬな』


 なおも余裕そうな不死帝も、接触した場所から力を奪ってくるようだった。


 触るだけで力を奪うなんてインチキじゃないか、とは言えない。

 マジカルナックルも同じことをやったから。

 通用しなかったが。


 同じ方法で防ぐことはできない。

 通用しなかったのはアンデッドの性質だ。

 マジカルナックルはアンデッドではない。


「マジカル・連続パンチ」


 だからマジカルナックルは力を奪われるのを恐れず、防がれた腕をつかんで魔力打撃を打ち込み続けた。


『なんだと?』


 完全なノーモーションで攻撃を連打できるのは、マジカルナックルの単純な魔法による数少ない強みだ。

 人体とは思えないほど強靭な不死帝の腕に、マジカルナックルの指が食い込んでいく。


 そのすきに、ドワーフたちが魂光鋼のハンマーで殴りかかった。


『ふむ、面倒な』


 ガキンガキンと、肉を殴っているとは思えないような音が、ハンマーが振り下ろされるたびに響く。


 しかし、音が鳴るたびハンマーの放つ光が強くなっていくのを見れば、効果があることがわかる。


『裁きの加護はなかなかに響く者よ。だが、このまま殴り続ける気かね? いつまでかかるか分からんが』


「そんなことを言って、いやそうな顔をしているじゃない。マジカル・浄火!」


『それは痛そうだ』


 マジカルナックルが、浄化の炎で焼こうとすると、不死帝はゆらりと飛びのいた。


 腕はマジカルナックルに掴まれたままである。


 肩から先が分離するようにあっさりと外れたのだ。


 そして残った腕は一瞬で燃え尽きる。


『さすがに聖女の援護を十全に受けていては厄介か』


 離れた場所で腕を生やしながら、不死帝は独り言のように吐き捨てる。


 ドワーフたちが飛び掛かる。

 しかし、不死帝が腕を一振りすると空中で弾き飛ばされた。


『この日この時に、其方らのような者どもが現れたのも、また定めか。世界は余を妨害したくてたまらぬらしい。だが余は諦めるつもりはない。そのための準備をしてきたのだからな』


「なにを言っておる!」

「ほうっておけ! とにかく殴るのじゃ!」

「嫌になるほど思い知らせてやるぞ!」


 弾き飛ばされようと、もともと頑丈で、再生の加護まで受けているドワーフたちはすぐに立ち上がり、不死帝に向けて駆ける。

 マジカルナックルも、再び不死帝に向かう。


 すると、不死帝はマジカルナックルから距離を取った。

 マジカルナックルの速度に負けない速さで横に跳ぶ。

 上。天井に着地。地面へ。次々と移動する。

 マジカルナックルは追随するが、捕まらない。ドワーフたちは付いて来れず、暫くの間一対一の鬼ごっこが発生する。


「速い……!?」


 想像以上に活発に動く不死帝は、縦横無尽に逃げ回り、マジカルナックルはそれを追う。

 捕まえて足止めできればダメージを与えられる。


 だが捕まらない。

 膠着する状況。

 ドワーフたちは聖域まで下がり、聖女やエルエルヴィたちと言葉を交わしていた。


 向こうは向こうで任せておこう。


 不死帝を自由にさせないために、マジカルナックルは追いかける。



 そしてついに状況が動く。


『さて、そろそろ逃げるのも終わりとしよう。ゆくぞ』


 不死帝が言ったその時。


 周囲をまばゆい光が包んだ。

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