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魔法少女(24)の異世界転移  作者: ほすてふ
第二章 ドワーフ地下帝国

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060 不死帝

 通常の魔法少女モードに戻った状態で、強烈な瘴気を浴びる。


 さらに、ここにきてマジカルナックルに集ってくる霊体アンデッドたち。触れるだけで力が奪われていく。


 聖なる光がない中でのアンデッド帝国戦はこうなる、という例を実演してしまっている。


『余が呼び出されるほどの強敵とは思えぬが。これがお前たちを追い込んだのか』『ククク』『クカカ』『クケケ』


『うるさいから余の言葉に重なるな』『ク』『カ』『ケ』


 気負いもなく、何気なく存在しているだけでこれまでにない瘴気が渦巻く。

 存在感だけでいえば轟炎竜に匹敵するのではないかとすら感じた。


 こんな恐ろしい存在の前で……。


「マジカルパンチ……!」


 伏せているわけにはいかない。


 勇気の歌が届いている。


 愛の歌が支えている。


 無限の魔力が湧いている。


 ただ、出力が不足して圧倒されていた。


 それでも。


 マジカルパンチは左手に触れていたランタンバックラーを粉砕した。


『ほう?』


 ランタン内に仕込まれていた聖なる光がむき出しになってあたりを照らす。

 光の聖女直々にかけてもらった強力な聖光は、しかし、敵の放つ瘴気に呑まれて消えていく。



 だが。



 マジカルナックルにたかるゴーストたちを消滅させて、瘴気の圧力に抗った。


 そのわずかな猶予でマジカルナックルは立ち上がる。


「マジカル・チェンジ・セレブレイション!」


 再び纏われる白のドレス。


「愛と勇気よ燃え上がれ(萌え上がれ)! 魔法少女マジカルナックル!」


『ふむ。ふむ。なるほど。それなりに力があるようだ』


 立ち上がり、面と向かって相手を見る。


 一見すると普通の人間のようだった。

 地球の礼服に似た衣装の、ふくよかな長髪の青年である。

 骨ではなく、肉もついていてなおかつ腐ってもいない。

 肌が青白く、目が赤黒い光を放っていなければ人間に見えるだろう。


 古代の王様のイメージと違い、シンプルな姿である。

 白と黒で構成された、現代日本の喪服に近い。埃っぽい地下で、チリひとつ付いていないのは魔法少女衣装のような機能がついているのか、それとも。


『余の前に立ち、名乗るか。ならば、余も名乗ってやろう。余は不死帝。唯一無二の帝王だ。短い付き合いであろうが、見知りおくがよい』


 轟炎竜の時と違い、明確な敵として相対している圧倒的な力は、マジカルナックルであってもその心の奥を震え上がらせた。

 勇気の歌がなければ立っていられなかっただろう。


「不死皇帝じゃあ、ないのかしら?」


『それは余に対抗して作られた称号にすぎぬ。まず余があり、皇帝などという称号が作られ、余をもそう呼ぶものが現れた。余にはどうでもよいことだ』


 どうでもいいのに経緯を教えてくれるなんて矛盾してないかと思ったが、そこはつっこまず、次の話のネタを探す。

 瘴気はなんとか耐えられる。無尽の魔力で体を満たし生命力を維持すれば、瘴気とゴーストは跳ねのけられた。


「おかしな笑いをする部下の皆さんは、ご一緒じゃないの?」


『あれらは余の中で養生しておるのだ。せっかくだから教えてやろう。余が永劫の命を得るための方策の一つを』


 お喋りに飢えているのかな?

 そう思ったが喋ってくれるなら都合がいい。

 圧力に耐えながらマジカルナックルは気持ちよく喋っていただくことにした。


 楽しそうに語る不死帝の話によると。


 不死帝と側近はつながっており、側近が倒されると不死帝の元へ送られ、再生を待つのだという。

 そして、万が一不死帝が倒されたとしても、側近が一人でも存在していればその場所に逃げて再生を待つことができる。


『そして余の側近はこの三人だけではない。世界中に散らばっておるのよ。むろんこの山脈の地下にもだ』


「そんな、それじゃあ……!?」


『ここで其方がどれほど奮闘し、幸運に恵まれようと、余を滅ぼすことはかなわぬということだ』


 とんでもないインチキ存在であった。


 もしも一度倒せても、再生する前に繋がっているすべてのアンデッドを倒さなければ不死帝を滅ぼすことはできないという構造。

 そして時間はアンデッドの味方である。

 通常の生命体と違い寿命がない。

 倒せるような存在が寿命で死ぬまで潜伏すれば、万一倒されるようなことがあっても生き延びることができるわけだ。


『まさにそのとおり。もっとも、そんな事態になったことはいまだかつてないが。余が直接敵対する者と見えたことが、まず一万二千五百六十五年と六十五日ぶりだ』


「細かいな!」


『長く生きると大雑把になるのでな。意識して些事にも注意しておるのだ』


「いい心がけでなによりじゃないの」


 なにもよくはない。


 長い年月をかけて万全の態勢を敷いている。

 ただでさえ恐ろしく強そうなのにもかかわらず、だ。


「そんなに無敵そうなのに、なんでドワーフを攻撃しているの?」


『うん? それは逆である。ドワーフどもが余を攻撃しているのだ。余は敵対している者の武器を取り上げ、身を守ろうとしているにすぎぬ』


「ドワーフが作る武器が怖いと?」


『わかっておるではないか。武器そのものはまあ、構わぬ。だがその武器は世界屈指の英雄どもが使えば脅威となろう。世界中で同時に優れた武器を優れた使い手が振るうことは、余にとって好ましくない。わかるであろう?』



 命の保険を大量に持っている不死帝だ。

 その保険を同時に削られることが、もっとも不死帝の危機感を煽るということか。

 マジカルナックルはそのように解釈した。


「さらに言えば、ここでアンデッドと戦争していれば、対アンデッド用の武器は広まらない」


『うむ。うむ。理解したか』


 アンデッドに効果が高い魂光鋼製武器がもっとも必要とされる場所。それが不死帝国とドワーフ帝国が争っているこの大山脈の地下である。


 となれば、ドワーフたちは魂光鋼製武器を流出しなくなるだろう。

 地下に居ない、遠方に配置された保険用アンデッドの安全性が上がる。


「すごいね」


『そうであろう』


「褒めてもらいたかったの?」


『長く生きていても、長く生きているからこそ、そのような機会は希少なのだよ。刺激がなければ面白くない』


「若々しくてなによりね」


 言葉を交わした結果心理的に追い込まれてしまっている。


 どうやってこの状況を打開するか、必死で考えるが、決定的な考えは湧いてこなかった。


『よいぞ、その打つ手がないのに諦めもできない、はりぼての強気な表情。甘露。甘露』


 愉快そうに笑う不死帝に、マジカルナックルは拳を握った。


 そしてそこに、意外な言葉がかけられる。



『どうだ其方、余の配下にならぬか? こんなところで命を落とすのは馬鹿馬鹿しいとは思わぬか』



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