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魔法少女(24)の異世界転移  作者: ほすてふ
第二章 ドワーフ地下帝国

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057 聖域

 聖域の加護は特に強力な結界術である。


 神殿の基礎となる構造と同質のものらしい。

 邪悪な者の侵入を拒み、攻撃から内部を守り、邪悪な魔力も弾き、害があるものを浄化する。

 中に居るだけで癒しの力があり、呪いを浄化していく。また、そういった加護の効果を増す。


 防御面では鉄壁であり、正しく展開すればアンデッドや悪魔から被害を受けることはない、らしい。


 もちろんマジカルナックルはこの世界の神殿も知らないのでそう聞かされたというだけである。


 しかし誰一人、聖域の強固な防護について疑問を持っている様子もなく、エルエルヴィに確認しても、その点は否定しなかった。


 なのでこの結界を発動させれば戦況は大いに有利になるということは前提であり、実績のある手段でもあった。


 結界の聖女が短時間で聖域を設置し、待ち受けるアンデッドたちと互角に戦える状況に持ち込む。城攻めの際に相手の城の前に味方の城を建てるような戦法。


 今回結界の聖女は同行していないが、他の聖女とエルエルヴィによる触媒の柔軟な運用技術の提供によって、結界の聖女がいるのと同等か、やや劣る程度の速さで結界の構築・展開に成功した。


 あらかじめ結界の聖女が加護を込めた宝石と、光の聖女による光の神聖印の展開を基軸に愛と勇気の歌を要素として組み込みつつ、豊穣の聖女の力で増幅した。



 魔法罠があるだろうと推定された怪しい魔力のある場所を避けて、少しでも安定するだろう場所を中心に展開された聖域は、かつてトロッコ駅だった空間の三分の一ほどを瞬く間にその範囲に収める。



 範囲内に残っていた敵ゴーレムやアンデッドは聖域の展開と共に押しのけられ、危険なガスとその発生源の液体も弾き飛ばされていく。

 実態を持たない霊体型のアンデッドが潜んでいたとしても消滅していたろう。聖なる光よりも強力な浄化効果があるのだ。





 そして地面の各所に設置されてあった邪悪な魔力も取り除かれた。





「ククク。愚か愚か」





 同時に地面が崩れた。


「なっ!?」「いやっ!?」「これは!」「崩落じゃ!」



 聖なる歌が途切れる。

 悲鳴が上がる。

 聖域の範囲より下方向に、体が落ちていく。


「どうなったの!?」


 崩れゆく地面は岩石質で見た目通りに強固に見えていた。

 マジカルナックルは破砕し崩れていく中で比較的大きな岩片を足場に落下していく仲間に手を伸ばし、しかし崩れてくる天井に気づく。


「マジカルパンチ!」


 岩雪崩と化す天井を殴り散らす。敵がいる方向へと意識して飛ばすがあまり意味はあるまい。崩れて流動化してしまえば水を殴るようなものだ。


「クロエちゃん育てて! マジカル・根っこは大地を支え幹を支え空を支える天地を支える柱となれ!」


 マジカルナックルは岩雪崩を蹴って下に向かって跳び、崩れゆく地面に左腕を突っ込んだ。

 ほとんど初めての長い呪文詠唱だ。中身はでたらめだが魔力とイメージだけでごり押しする。

 たっぷりと魔力を注いだ苗が頭を出して成長していく。

 森の中で家になった木を、魔法で生み出したのだ。


「神よ。力強く。おおきく。太く。立派にぃぃぃぃぃぃぃ!」


 愛の歌で聖女クロエが後押しすることで一気に成長して大樹となっていくのを任せて周囲を見回す。


「マジカル・つる草のムチ!」


 エルエルヴィがドワーフ一人と聖女ビアンカを抱えて浮いている。金属鎧の塊を二人も抱えるのは小柄で細身なエルエルヴィにはつらそうだ。

 聖女スカーレットが聖女ビアンカをかばうように覆いかぶさっている。

 聖女セレナは祈りの姿勢を取り、加護の詠唱を始めているようだった。

 ドワーフの残る二人と副長は腕で頭をかばい、体を丸めている。


 マジカルナックルはそのすべてにつる草のムチを伸ばした。

 複数のムチを伸ばすのも慣れたもので、体に巻き付けて引き寄せる。


「神よ。致死を避ける幸運を」


 引っこ抜くように全員を、聖女クロエと共に育てた大樹の根元に集める。

 聖女セレナはつる草にからめとられて宙にいる間に皆に加護をかけていた。


「エルエルヴィちゃん、これでなんとかして」


 そう言い残してマジカルナックルは前に出る。


 崩れかけた大地に根を張りめぐらせ、大きく枝が張り出した魔法の木は落ちてくる天井と崩れる床を支えている。

 どれほど保つか。しこたま魔力を込めたので相応の強さはあるはずだが。


 だがまだ危険は別にある。


『ククク。足元を支えていた骨組みを自ら消滅させた気分はどうかね。いや、まだ終わらぬがな』


「説明してくれてありがとうねっ!」


 ニヤけているだろう敵の言葉が響く。骸骨なので笑うも何もないだろうが、いやらしく喜んでいる様が容易に想像できた。


 上と下の崩壊は避けたとしても。

 横方向から崩れた岩が、ゴーレムが、スケルトンが、流れ落ちてくるまで猶予が少ない。


 いったい何が起きたのか。

 万年宰相の言葉で理解できた。


 そもそも、地面と考えていた部分が、魔法で支えられていたのだ。

 魔法の岩を作り出して支えていたのか、それとは別の方法か、そこまではわからないが。


 問題はその魔法を聖域の魔法で弾き飛ばしてしまったことである。


 結果として引き起こされるのは崩落。

 そして連鎖。


 およそ正気とは思えない。大規模な崩落につながりかねない作戦だ。

 万年宰相たちがいるあたりまで崩れたとしても……いや、それくらいは確信があってやっているのかもしれない。相手は歴戦。加減を知っていてもおかしくはない。



 相手はいつでも魔法を解いて崩落させることが出来たし、こちらが聖域を展開してもそれによって崩落が起きるように仕込んでいた。



 次々に崩落が広がっていくのが見える。

 このままだと、横からの岩雪崩に大樹が薙ぎ払われるかもしれない。


 それなら。


 大樹の枝の下から出るとマジカルナックルは岩が落ちてくる中を前に出た。


「マジカル・連続パンチ」


 当たりそうなものはすべて打撃で弾き飛ばしながら進む。


 今まさに崩れている場所にたどり着くのはすぐ。


「マジカルパンチ!」


 特大の魔力打撃を打ち込んだ。


 岩が雪崩のように、水のように動くのならば、流れを変えればいい。


 より低い場所があれば、そこに流れていくはずだ。


 ならばより低い場所を作ればいい。


 とっさに思いついたのはそれだけだった。


 マジカルナックルはどんどん崩れていく地面を、前に出ながら殴って進む。


 頭上への意識がおろそかになったが、衣装に組み込まれたランタンバックラーが勝手に動いて弾いてくれた。

 存在を忘れそうになっていたのにしっかり役立ってくれた。


『ククク。崩落を加速させておるのか』

『クカカ。必死だな』

『クケケ。必死の先に生はあるものよ。邪魔をするものも同じ場所にあるものだが』


 落ちてくる岩だけではなく、魔法が、矢が、混ざる。


「邪魔!」


 振り払うように動かした手で岩を飛ばして撃ち落とす。

 マジカルパンチに力は要らない。触れるだけでいい。挙動は最低限でいい。前に飛ばすのも、下を打つのも意思で即座に変えられる。


 かつて、物理的な威力を追求しないとした判断が、今、役に立った。



 振り返る余裕がない後ろから、覚えのある声がかすかに聞こえる。


 愛と勇気の歌が再開した。


 岩雪崩の音に掻き消えそうだが、その効果は届く。

 大樹を成長させていた聖女クロエが歌い始めたということは、耐えられると判断したのだろう。


 ならば仲間はなんとかなった。


 崩落の流れも、起点である大樹の位置よりも打撃して下方向に押し込んだ、今マジカルナックルがいるあたりに向いている。咄嗟の思い付きは成功。


 あとは、マジカルナックル自身が生き残らなければならない。


 崩落していく地面。

 落ちてくる天井。

 巻き込まれるつもりがないのなら、完全に埋まるほど崩れるようにはしないはず。

 このエリア全部が崩れるようならアンデッドの幹部たちが余裕でいられるはずがない。


 そして今から仲間の元に戻るのは難しい。

 一旦、さらに前に出るしかない。


「マジカルパンチ!」


 マジカルナックルは自身が隠れられるサイズの大きな岩塊を斜め上に打ち出して、その陰に隠れるように前に跳んだ。

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