鹿毛彰子は心配性
――――とりあえず、落ち着こう。
当初の目論み通り、私はナギナギと巫女と幼馴染君と同じ班になれた。
今は、生物の先生の指示通り、学園内の植生を知るために、学園内に点在する森にいる。
出席番号で班を作ろうとした先生は、私の細工したくじを使って班編成をし、五人組が出来上がる。
が、霧たんが早退してしまったので、現在、巫女・幼馴染・ナギナギ・私、の四人で行動している。
「こっちに面白い形の葉っぱがあるよぅー。」
「いやそれカブレるやつだから、さわんな。」
きゃっきゃと戯れる彼らを背に、ナギナギと一緒に黙々と葉っぱを採取する。
各班ごとに採取するエリアが決められているため、周りには私たち四人しかいない。
そうだ、考え方を変えよう。
つまるところ、要するに、霧たんはいないが、結界に引き摺られる原因に、この学園を守護する守護石に、ナギナギを近寄らせなければいいのだ。
そう、私が、気を付ければよかったのだ。それだけだったのに。
あ、っという間だった。
守護石へ、ナギナギはヒロイン諸共吸い込まれていった。
何も思う間もなく、何を言う間もなく、ナギナギは私の目の前で、吸い込まれていった。
目の前の凡庸な石灯籠を見やる。
三人も吸い込んだと思えない、どこをどう見ても、普通の石灯籠だ。
さっきまでいたナギナギたちの気配が綺麗さっぱりないことに、呆然と立ち尽くす。
ヒロインである彼女が足を滑らせなければ、ナギナギを掴まなければ、ナギナギは私の隣にいたはずなのに。
激情のまま、石灯籠に拳を叩きこむ。
誰もいないこの場所で、力の限り、持て余す激情のままに。
(大丈夫。・・・大怪我をするような展開にならないはず・・・。それどころか、幼馴染君以外、怪我したりしないはず。)
そう、言い聞かせて、心に焦燥を抱えて、鹿毛彰子は助けを呼ぶために走った。
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生物室に担当教師を見つけられなかった彰子は、まっすぐ職員室ヘ向かった。
からり、と職員室を開けると、目当ての教師、晶午先生を見つけた。
「はぁっ、せんせ・・。森嶋さん・・・たち・・・、消えちゃって・・。」
息を切らした私の切れ切れの言葉に、晶午先生は落ち着いた目を乱さず、冷静に現状を把握する。
「わかった。消えた場所へ案内しろ。」
彼女たちが消えた場所へ案内しながら、四人で生物の授業の植物採取をしていたこと、三人が転んで石灯籠に触ったら消えてしまったことを話しているうちに、校門前の守護石前に到着した。
石灯籠に若干の血痕が付着しているのを見つけられ、イケメン先生にじろりと睨まれる。
大丈夫だと分っているが、それでも抑えられなかった痕だ。もうばれているが、さり気なく右手を背後に隠す。
守護石を色々と分析している先生の後ろで、後悔の念に胸が重くなる。ナギナギの命に別状はなくとも、それでも守りたかったのに。
後悔と焦燥に唇を噛みしめていると、ほわりと頭に温かい感触が乗る。
「・・・そんな思いつめた顔しなくても大丈夫だ。」
わしゃわしゃと、頭を撫ぜられる。
「守護の結界に便乗して張られた罠にかかって、三人とも異空間へ閉じ込められてはいるが、罠の要として封じられた妖怪を倒せば出られる。・・・そこを俺が無理に罠を解こうすれば、閉じ込められた三人にも影響が出る。今は耐えろ。」
「・・・・・・・・」
「要の妖怪はそれ程強い妖怪ではないし、狼神も一緒だったんだろ?」
「・・・・・はい。」
なら問題ない、と、にこりともしない真顔で言い切る先生は、彰子を安心させるように頭を撫でる手を強くする。
そう断言されて、張りつめていた緊張が少し解ける。と同時に噛みしめていた唇も解放する。強く噛みすぎていたようで、血が出てしまっていた。
それにしても、と、わしゃわしゃからぐりぐりにレベルアップしてかき回す先生に、声を掛ける。これは断じて照れ隠しではない、ではないが。
「三半規管が役立たず肉塊と化すので、頭撫でるのやめてもらえません?」
ぐるぐるとまわる頭と感情に、堪らず停止嘆願を吐いた。




