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苺という甘味は神の味である

(それにしても、さっきはびっくりしたなぁ~。)


ガサッビリッ


ポリポリポリポリポリポリポリポリポリ


分かっていたこと(・・・・・・・・)とはいえ、いきなり教室に白蛇がうじゃうじゃ発生する光景は、さすがの彰子も吃驚していた。


ゴソッガサガサッ


ガリガリガリガリガリガリガリガリガリ


 朝の”大パニック☆白蛇捕獲騒動”(霧たん命名)は、実のところゲームでは、『陽神霧爍』との好感度アップのために発生するイベントだ。

 ゲームの展開では、フライングした白蛇妖怪の『水戸瑞薙』がヒロインへ襲いかかり、『陽神霧爍』が庇ってくれるのだが、そこは齢数百年の妖怪、『陽神霧爍』の術を撥ね退け、教室の中で大暴れする。

 その際に、クラスメイトたちに死傷者がでてしまい、ヒロインが自分の身を差し出そうとする。(ここで『陽神霧爍』の好感度が上がる)


最後には『陽神晶午』先生が『水戸瑞薙』を抑えて騒動は終わるのだ。


 別段、彰子としては、ヒロインが霧たんに好意を持たれようが、水戸瑞薙がイケメン先生に半殺しにされようが、クラスメイトの中に死傷者がでようが、ぶっちゃけた話どうでもいい。


(クラスメイトは、ちょいと可哀想だと思うけど、恨むならこのクラスに入っちゃった己が不運を恨むがいいって感じだし~。)


ビリビリッ


モショモショモショモショモショモショモショモショ


鹿毛彰子の焦点は、やはり『月神凪』だ。


 『水戸瑞薙』が暴れた際に、『月神凪』は『陽神霧爍』の前で術を使って自衛をしてしまい、結果陰陽師で『月神』であることがばれてしまうのだ。

 更に、ヒロインが『神無月の巫女』であることが、全校生徒に知れてしまい、『月神凪』にヒロインの護衛をするように頼まれる、という流れになってしまう。


(それだと、ナギナギが事件に巻き込まれる確率上がっちゃうからねぇ~。)


ブスッ


ゴキュッゴキュッゴキュッゴキュッゴキュッゴキュッゴキュッ



 それが、通信教育で『蛇遣い講座』を受けたり、ゲーム制作会社にヒロインをモデルにしたゲーム制作を依頼したりと色々した甲斐あって、『月神凪』であることもばれずに、永月栞撫が『神無月の巫女』であることもばれずに、円満解決した。


(霧たんが話し合わせてくれたから、っていうのもあるよねぇ。この特選イチゴシリーズ『あかしゃのみはる』ポッキーを進呈してあげよう。)


「いてっ!・・・なにこれ、『あかしゃのみはる』ポッキーって、え、イチゴの品種??全然知らないんだけど。てか鹿毛ちゃん、そのお菓子の量、太るよー?」


 机の上に大量に置いた、イチゴ味オンリーの各種取り揃えたお菓子の山を、親の敵と言わんばかりに消費していく。余計なお世話だ。私はこのカロリーに匹敵するような脳の活動をしているところなのだ。

 そのカロリーを休み時間という限られた時間で摂取しなければいけないのだ。霧たん、邪魔をするでない。


ふう、と、徳島限定マン○ローザ(『芳玉』苺味)に喰らいつく。


 学園長や水戸瑞薙がヤバいゲームのゲーマーだとかの誤解を生んだり、クラスメイトの犠牲がゼロだったりしたが、大筋、ゲーム通りの展開にはなったようだ。


おそらく”ゲーム補正”はあらすじにしか効かないようだ。


 ぺろり、と口周りをなめながら、鹿毛彰子は自己採点をする。イベント発生の妨害は、今のところ順調だ。

 巫女とナギナギは、知り合いレベルで、若干ナギナギが巫女に対して、引いている程だ。万が一にも仲良く行動するような事態には陥っていない。


だから。


(この後の、『百足イベント』も、私の手にかかれば、赤子の手をひねるようなものよ!)


 そう、今日一日でイベント二つというお腹一杯の展開だが、次の生物の時間では、百足妖怪との戦闘イベントが発生する。


 くじ引きでグループを組んで学園内の植生を知る、という授業内容で、その際に百足妖怪の結界に入り込んで戦闘に巻き込まれてしまう。

 メンバーは、幼馴染、巫女、『月神凪』、+モブたちの五人班で、幼馴染、巫女、『月神凪』の三人が結界に閉じ込められて、巫女を助けるために幼馴染が正体を現して戦って、幼馴染が妖怪であることが巫女にばれてしまう、という筋書きだ。


 このイベントは、幼馴染が敵を頑張って倒す回なので、特にナギナギの命の危険があるわけではないが、やっぱり危ないし、ヒロインの『月神凪』への好感度UPを妨害するためには、ぜひ阻止したいイベントだ。


 そこで、未来を先読みするこの鹿毛彰子としては、くじ引きに細工をして、ヒロインたちの班に、霧たんと私が入るように工作済みだ。

 結界に引き込まれるときに、ナギナギではなく霧たんを、蹴り飛ばしてでも生贄にすればいいのだ。


ふふふふ、万全、まさに万全の態勢だ。我が人生に死角なし。


食べ終えた菓子のゴミを片付けていると、カバンを持って教室を出ようとしている霧たんが目の端に映る。ん?


「霧たんや、いずこへ行かれるのかね??」

「おわ、びっくりしたー。ちょっと家の事情でね、早退するんだー。」



おっと、なんということだろう。万全の態勢が、早くも瓦解しそうだ。




※ある学園長、鴻基と霧爍の会話。


鴻基「霧爍、学園内で不穏な噂を耳にした。」

霧爍「・・・なんですかねー。」

鴻基「私が、マイナーゲームのゲーマーで、かつそのゲームのヒロインに執着するロリコンだという、私としては根も葉もない噂なんだが。」

霧爍「わー、お父様がそんな不名誉な噂をたてられるなんてー。なんてことだー。」

鴻基「そのゲーム、出しなさい。」

霧爍「はい。」

鴻基「・・・ふむ。なかなか面白そうだね。」

霧爍「え」

鴻基「いいだろう。噂に違わぬよう、このゲーム、完全制覇して見せよう。」

霧爍「(この人の血を引いてる俺、大丈夫かな。)」


という、心温まる親子の会話がありましたとさ。

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